【ネタバレ有り】片想い探偵 追掛日菜子 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:辻堂ゆめ 2018年6月に幻冬舎文庫から出版
片想い探偵 追掛日菜子の主要登場人物
追掛日菜子(おいかけひなこ)
主人公。女子高生。推しに対するおっかけ行為に夢中になっている。
追掛翔平(おいかけしょうへい)
日菜子の兄。大学生。妹の行き過ぎたストーキング行為に気を揉んでいる。
須田優也(すだゆうや)
若手の舞台俳優。舞台上演中に起きた殺害事件の犯人と疑われてしまう。
力欧泉(りきおうせん)
笑顔が魅力の外国人力士。不倫のスキャンダル騒動に巻き込まれる。
高杉浩二郎(たかすぎこうじろう)
内閣総理大臣。脅迫疑惑を掛けられる。
片想い探偵 追掛日菜子 の簡単なあらすじ
女子高生の追掛日菜子は、好きになった対象を調べ上げ、追いかけまわさずにはいられません。
そんな彼女が好きになった推し達は、何故かよく事件に巻き込まれてしまい、そんな彼らを助けるために、日菜子は自身のストーキング能力を発揮していくのでした。
片想い探偵 追掛日菜子 の起承転結
【起】片想い探偵 追掛日菜子 のあらすじ①
一見すると清楚な女子高生である追掛日菜子は、好きな対象・推しをところんまで調べ上げては追い掛けまわす、ちょっと危ない趣向の持ち主でした。
度々好きな対象が変わる日菜子の最近の推しは、若手舞台俳優である須田優也。
須田のSNSを日々チェックしていた日菜子は、SNS内での会話内容から、須田が舞台公演後に俳優仲間と飲み会を行うことを突き止めます。
ストーキング行為を繰り返す日菜子に兄である翔平は呆れていましたが、そんな兄に構わず日菜子はストーキングを続行。
飲み会が行われる居酒屋に潜入した日菜子は、レコーダーで一行の会話を全て録音します。
翌日、須田主演の舞台の千秋楽を見に行った日菜子ですが、舞台公演中に人気俳優である草野京太郎が須田の手により舞台上で殺害されます。
本来ダミーナイフが使われる場面で、すり替えられた本物のナイフが使われたことが原因でした。
そのナイフは須田がアウトドア趣味で購入したものであったため、彼は犯人として警察に捕まってしまいます。
日菜子は居酒屋での録音内容から犯人を推測。
友人を装ってSNSで犯人に接触し、証拠となる証言を引き出します。
そして、兄を代理人として立てた上で須田に接触し、共演者である赤羽創が犯人だと伝えます。
凶器のナイフがアウトドア用であることは赤羽が知り得ない事実でしたが、SNSでの会話では彼はそれを把握していました。
更に、録音内容から草野の采配で赤羽が主役から脇役へ下されたことを推理し、赤羽の動機までも解き明かしてみせます。
証拠により事件は無事解決しましたが、翔平がうっかり日菜子のことを須田に紹介したため、日菜子の熱はすっかり冷めていました。
推しは追い掛けるもので、対面する存在ではないと騙る日菜子。
その思考を理解できない翔平は、お節介を焼いたことを後悔するのでした。
【承】片想い探偵 追掛日菜子 のあらすじ②
須田優也から早くも次の推しに乗り換えた日菜子。
その相手は外国人力士の力欧泉です。
きっかけはカタコトな日本語と独自の顔文字が女子高生に人気な彼のブログで、日菜子は彼が人前で見せる無邪気な笑顔の虜になっていました。
力欧泉の所属する相撲部屋の朝稽古見学に通いつめる日菜子ですが、そこで同じように頻繁に見学に訪れている力欧泉ファンの女性・瀬川と知り合います。
すっかり彼女と意気投合しますが、そんな折に既婚者である女優の瀬川萌恵と力欧泉の不倫現場がスキャンダルされます。
相撲部屋で会った瀬川が瀬川萌恵であれば、それは不倫の裏付けに他ならず、その事実に日菜子は愕然とします。
しかし、萌恵が出演しているドラマの撮影場所・スケジュールとスキャンダルされた日付・不倫現場の場所を照らし合わせた結果、萌恵が当日その時間に不倫現場に居合わせることが不可能であることを突き止め、日菜子はスキャンダル写真に写っているのが萌恵によく似た彼女の親族ではないかと推理します。
相撲部屋で再び顔を合わせた瀬川は萌恵の姉・彩恵と名乗り、一般人である自分が注目を集めるのを防ぐため、萌恵が敢えて不倫を不定していないのだと語ります。
その話に納得する日菜子ですが、直後に萌恵が不倫の事実を認め、それにより夫が離婚を申し出たことが報道されます。
話が違うことに困惑しますが、そこでようやく日菜子は瀬川姉妹の真意に気付きます。
萌恵は夫と別れたいがために、彩恵と力欧泉と協力して偽のスキャンダルをでっち上げたのだと。
目論みを達成した瀬川姉妹。
それに対し、一見割を喰っただけに見える力欧泉は、世間を騒がせたことに対する素直な謝罪が評価を上げ、更に女子高人気が高まっていました。
力欧泉の無邪気な笑顔が営業スマイルに過ぎなかったことに気付く日菜子。
彼女の恋はまたも冷めていくのでした。
【転】片想い探偵 追掛日菜子 のあらすじ③
次に日菜子の推しとなったのは、ネット上で漫画を連載する漫画家・ましころいどでした。
漫画のタイトルは「ましころいど家族」で、夫のましころいどと奥さん、二人の息子の計4人家族による家庭内のエピソードを描いた実話の四コマ漫画でした。
姿の見えない漫画家に理想像を描く相も変わらずな日菜子の姿に、翔平は落胆します。
そんな中、ましころいどは奥さんが家出したことを発表し、漫画の終了を宣言します。
連載を諦めきれない日菜子は、「ましころいど家族」内に登場する地理・地形などのありとあらゆる情報をリストアップし、ましころいどが住む地域を推測します。
更に、その地域の不動産に掛け合い、漫画内で描かれている間取りの情報から住まいを特定。
ついにましころいど宅に辿り着きます。
しかし、そこに住んでいたのはましころいどの奥さんを自称する益子七海とその両親のみ。
奥さんが家出したという話とは食い違っていました。
日菜子はすぐに益子七海こそがましころいどであると気付きます。
「ましころいど家族」は架空のエピソードだったのです。
益子七海はマンガの人気が上がっていくにつれ、読者を騙している事実に気を病んでしまい、奥さんの家出という理由を作り出して連載を終わらせたかったのです。
しかし、嘘でもその漫画の面白さは本物であると情熱的に訴える日菜子の姿を見て、益子七海は漫画家として復帰することを決意するのでした。
連載を復活させるという当初の目的こそ達成したものの、恋の相手が女性であったという事実を前に、またしても日菜子の熱は冷めていったのでした。
【結】片想い探偵 追掛日菜子 のあらすじ④
日菜子の次の推しは、なんと内閣総理大臣の高杉浩二郎でした。
選挙前ということで、テレビでの露出が多いことで日菜子の目に留まり、児童養護施設を訪問し、子供の幸せを願うその姿に日菜子は魅力を感じていたのでした。
高杉の応援演説に足を運んだ日菜子は、そこで高杉が落としたメモを思わず拾ってしまいます。
それは娘から父へとあてた手紙のような内容でしたが、高杉夫妻の間には子供がおらず、もしや隠し子ではないかと日菜子は気が気ではありません。
そんな中、更迭された元法務大臣の狩野義明が、高杉から脅迫を受けていると世間に発表します。
娘を人質に取られ、金銭を要求されていると。
翔平は、メモが人質にされている狩野の娘から狩野へあてたものではないかと考えますが、高杉を信じる日菜子はそれを否定します。
そして、日菜子は翔平を伴ってメモに書かれた住所へ向かい、そこに軟禁されていた少女を救出。
その少女がやはり高杉の隠し子であったことを突き止めます。
三人で高杉が演説を行う会場へ乱入し、脅迫を受けているのは高杉の方であることを群衆に告げる日菜子。
娘のミキエは、高杉が自身の潔白を証明する為に隠し子がいる事実を公表しなかったのは、自身が養子であり、更には実の父親がテロリストであったためだと語ります。
高杉はひとえに娘のミキエを守るために、事実を隠し通していたのでした。
感極まり抱擁し合う高杉親子。
そんな姿を見て、何故か日菜子は駆け足でその場を後にします。
事情に問う翔平に対し、親子といえど抱きしめ合う姿を見せられて耐えられなくなったと、またしても謎の理論を騙る日菜子。
日菜子自身、そんな自分に辟易とした気持ちを抱いていましたが、帰りの駅のホームで目に入った広告に移るイケメン男子に目を奪われ、またもやってきた恋の予感に胸を締め付けられるのでした。
片想い探偵 追掛日菜子 を読んだ読書感想
この作品の魅力は、なんといっても主人公である追掛日菜子のキャラクター性にあります。
自分が好きな対象、いわゆる推しに対してちょっと異常なまでの愛着を見せる彼女は、しかしてその類まれなるストーキング能力を駆使して、推し達が巻き込まれる事件を無事解決に導いていきます。
ストーカーでありながらも、物語においては探偵役として話を進めているわけですね。
一見して別物に思える探偵とストーカーを、紙一重なものとして描き出している点が実に面白いです。
また、兄の翔平との心の和む掛け合いや、推しを事件に引き込む体質であること、惜しいところまでいくものの恋が成就しないことなど、それらの要素によって、ちょっと危ない娘である日菜子の姿をコミカルに演出し、読みやすい物語としている点も注目すべきポイントであります。
果たして、日菜子の恋が叶うときはくるのでしょうか……。
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