【ネタバレ有り】希望が死んだ夜に のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:天祢涼 2017年9月に文藝春秋から出版
希望が死んだ夜に の主要登場人物
真壁 巧(まかべ たくみ)
神奈川県警刑事部捜査一課の警部補。ネガが引き起こした殺人事件を捜査する。
仲田 蛍(なかた ほたる)
生活安全課少年係の巡査部長で、少年事件のエキスパート。真壁とタッグを組む。
冬野 ネガ(とうの ねが)
同級生の春日井のぞみ殺害容疑で逮捕される。犯行は認めるが動機は一切語らない。
春日井 のぞみ(かすがい のぞみ)
ネガの同級生。フルートが得意な優等生。冬野によって殺害される。
希望が死んだ夜に の見どころ!
・一見相容れないように見える真壁と仲田のチームワーク。
・ネガとのぞみの隠された友情
・少女たちを絶望に追い込んだ貧困と大人たちの冷たさ
希望が死んだ夜に の簡単なあらすじ
14歳の女子中学生・冬野ネガが同級生の春日井のぞみの殺害容疑で逮捕されます。
刑事の真壁と仲田がタッグを組んで捜査を始めますが、冬野は殺害を認めるものの、動機は語らない半落ち状態です。
限られた時間の中、捜査を進めるうちに判明したのは、冬野も春日井も貧困に苦しんでいたという事実でした。
希望が死んだ夜に の起承転結
【起】希望が死んだ夜に のあらすじ①
ある日、14歳の少女が同級生を殺害するという痛ましい事件が発生します。
殺害現場は空き家で、被害者は首を吊った状態で発見されました。
捜査を担当することになったのは、警部補の真壁と仲田です。
仲田は生活安全課の所属ですが、数々の少年事件を解決したエキスパートということもあり、真壁とタッグを組むことになりました。
仲田は、事件を捜査するときに、「想像」という、警察官にとって似つかわしくない方法で事件を解決してきました。
そんな仲田のことを快く思わない刑事もいますが、真壁は仲田の実績を見て、容疑者の冬野ネガの扱いは仲田に任せようと思います。
仲田はネガのことを「ネガちゃん」と呼び、優しく聞き取りを始めますが、ネガは殺人自体は認めるものの、動機を一切話してくれませんでした。
また、ネガの母親とは連絡がつかず、捜査は難航を極めます。
ネガの担任に話を聞くと、ネガの家は経済的に不安定であったようだが、豪華な弁当を持ってきていることからあまり心配はされていなかったそうです。
また、被害者である春日井のぞみの家は裕福で、日々フルートのレッスンに励んでいました。
そんなのぞみとネガが親しくしているところは見たことがなく、かといって仲が悪いということもないと担任は言います。
真壁たちはますます動機がわからなくなりました。
【承】希望が死んだ夜に のあらすじ②
時はネガの幼少期にさかのぼります。
ネガの両親は幼いころに離婚し、ネガは母親に育てられました。
しかし、母親は精神的にひどく不安定で、スナックと弁当屋で働いてはいるものの、体調によっては休みが続くこともありました。
そのせいで、ネガの家は常にお金がなく、毎日お風呂に入ることも、おなか一杯食べることもできませんでした。
ネガの母親は生活保護の申請を何度か行いましたが、毎回その申請は断られていました。
その理由は、ネガの祖父がまだ存命で、援助をしてもらえるからです。
しかし、ネガの母と祖父の仲は険悪で、援助は期待できません。
また、当時は芸能人による生活保護の不正受給が問題になっており、生活保護を受けるためのハードルが高くなっていたのです。
ネガの唯一の目標は、高校生になることでした。
以前、近所に住んでいた「凛子姉ちゃん」から、将来の可能性が広がるから高校だけは卒業すると約束したのです。
しかし、中学生になったネガの家はますます貧困を極め、どうしても進学を諦めたくないネガは、年齢を偽って居酒屋で働き始めます。
ネガの母親はそれを喜び、ますます仕事に行かなくなりました。
ネガは日中は学校、夜は居酒屋という生活に疲れ果て次第に学校も遅刻しがちになります。
【転】希望が死んだ夜に のあらすじ③
ある日、ネガはバイト中に客から「未成年に見えない」と絡まれます。
上手くかわすことができずにいると、同じシフトに入っていた同僚が「自分と同じ大学に通う大学生だ」とかばってくれました。
見ると、それは同じ中学に通う春日井のぞみでした。
のぞみは化粧をしていたので、今までネガは同僚がのぞみであると気付いていませんでした。
ネガはどうして裕福なのぞみが自分と同じように年齢を偽って深夜のバイトをしているのか訝ります。
その日から、ネガとのぞみは親しくなり、バイトから一緒に帰るようになりました。
ネガは、のぞみも貧困に苦しんでいることを聞かされます。
確かに、のぞみの家は昔は裕福でした。
しかし、母親が病死し、父親もうつ病を発症したために満足に働けていません。
このままでは希望する音楽科付属の高校に進学できなくなると心配したのぞみは父親には内緒でバイトを始めたのです。
ネガは、のぞみの思いの強さに心を打たれます。
のぞみもネガと同じように過酷な生活を送っているのに、毎日遅刻もせずに学校に来て、勉強面も良い成績を収めているのです。
しかし、のぞみは思うようにフルートの練習時間が取れずに悩んでいました。
そんな時、バイトからの帰り道、ネガとのぞみは空き家を見つけます。
そこは、もともとは音楽教室だったようで、防音室がありました。
その日から、バイト帰りはその空き家でネガは勉強を、のぞみはフルートの練習を始めます。
二人とも、心ゆくまで好きなことができる場所を手に入れて、大満足でした。
【結】希望が死んだ夜に のあらすじ④
しかし、二人が手に入れた空き家での楽しみは長くは続きませんでした。
ネガは、高校進学という目標を与えてくれた「凛子姉ちゃん」が今は風俗嬢として働いていることを知り、絶望します。
「凛子姉ちゃん」は人が変わったようになり、目に輝きはありませんでした。
ネガは、このまま自分も貧困から抜け出せないのかと絶望します。
また、のぞみは父親にバイトをしていることを知られてしまいました。
父親は、娘を働かせていたことを深く恥じ、生活保護を受給することを決心します。
しかし、のぞみは絶対に生活保護を受けたくありませんでした。
生活保護を受ければ、のぞみのフルートは資産とみなされて、奪われてしまうのです。
そうなると、音楽科のある高校へも進学することができません。
絶望した二人は生きる意味を失い、心中することに決めました。
方法は練炭です。
しかし、ネガが買い出しをしている間に、のぞみは一人で自殺しました。
のぞみはネガには生きていてほしかったのです。
自分の死体を見れば、ネガには死の恐怖が生まれて自殺を踏みとどまってくれるだろうとのぞみは思ったのです。
ネガはのぞみの死を深く悲しみ、のぞみを一人で死なせてしまった償いとして、自分が殺したことにしようと決意します。
これが事件の真相でした。
鑑識からは、他殺の可能性は低いという証明もなされ、ネガは釈放されます。
真壁と仲田はネガたちの貧困の苦しみを知って、どうしてあげることもできない自分たちにやりきれない思いを感じつつも、釈放されていくネガを見送るのでした。
希望が死んだ夜に を読んだ読書感想
大がかりなトリックもないので、ミステリーというよりは、社会派の小説でした。
重苦しいテーマで、考えさせられる部分も多いです。
貧困や生活保護といった、リアルな問題を扱っているので、他人事ではないストーリーだと感じました。
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