【ネタバレ有り】影裏 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:沼田真佑 2019年9月に文春文庫から出版
影裏 の主要登場人物
今野 秋一(こんの しゅういち)
同性愛者の主人公。釣りが趣味。本社から岩手に出向してきた。
日浅 典博(ひあさ のりひろ)
今野の友人。転職して互助会営業マンになる。
副嶋 和哉(そえじま かずや)
今野の元恋人。今野と別れた後、性別適合手術を受けた。
影裏 の見どころ!
・今野と日浅のぶっきらぼうな友情
・今野の不器用な優しさ
・明かされる日浅の正体
影裏 の簡単なあらすじ
今野は三年前に本社から岩手に出向してきたサラリーマンです。
出向先で唯一できた友人の日浅と、定期的に釣りを楽しんでしました。
しかし、日浅は今野が知らない間に転職し、音信普通になってしまいます。
自由人の日浅なので、今野は心配していませんでしたが、東日本大震災で日浅が死んだかもしれないと知らされます。
日浅を探し始めた今野は、訪れた日浅の実家で、日浅の正体を知らされるのです。
影裏 の起承転結
【起】影裏 のあらすじ①
今野は出向先の岩手で、定期的に友人の日浅と釣りを楽しんでいました。
日浅は個性的な人間でしたが、今野は不必要なことは一切聞いてこない日浅に好感を持っていました。
今野は同性愛者で、出向前に別れた元恋人の副嶋のことがまだ少し気になっていましたが、日浅と釣りを楽しむようになって少しずつ出向先の暮らしを楽しむようになります。
しかしある日、日浅は唐突に退職してしまいます。
日浅は携帯を持たないので、職場での内線連絡で連絡を取り合っていたので、日浅が退職してしまえば一切連絡が取れなくなります。
今野は日浅がいなくなって初めて、自分が日浅のことがとても好きで、社内には日浅のように親しくなれる友人がいないことに気付きます。
【承】影裏 のあらすじ②
日浅と連絡が取れなくなって寂しかった今野ですが、ある日二人は再会します。
日浅は互助会の営業マンとして再就職していました。
日浅は話が上手いので、入社早々ノルマを達成して、会社にもうまく馴染んでいるようでした。
今野と日浅は定期的に連絡を取り合うようになり、また釣りを再開しました。
しかし、次第に日浅は余裕をなくしていき、せっかく釣りに行ってもピリピリした空気が流れるようになります。
日浅の仕事があまりうまくいっていないようなのです。
日浅は今野に、互助会の結婚式のプランを一口契約してくれないかと持ち掛けます。
可哀想に思った今野は契約します。
しかし、その後も日浅は落ち着きをなくし、今野に対して心のない発言をしてしまいます。
それがきっかけで、今野は日浅に激怒し、二人の関係は断絶してしまいました。
【転】影裏 のあらすじ③
今野と日浅の関係が悪化したころ、今野のもとに元恋人の副嶋から連絡がきます。
副嶋は性別適合手術を受けていて、付き合っていたころとは声が変わっていました。
久しぶりの会話を楽しむ二人ですが、今野はもう昔の二人のようには戻れないことを悟ります。
そのことにたいして寂しさを感じますが、今の今野にはその寂しさを埋めてくれる人がいないことに気付いて愕然とします。
そんな時、東日本大震災が発生します。
今野の住むところはあまり地震の影響はなく、その後も変わりのないサラリーマン生活を送っていました。
そんなとき、今野は同僚から日浅が死んだかもしれないという知らせを受けます。
同僚は、日浅に頼まれて互助会のプランを何口か契約していました。
それどころか、金までも日浅に貸していたのです。
地震がきっかけで金が必要になった同僚は日浅に連絡を取ろうとしましたが、その後連絡が取れないと言います。
日浅が勤めていた会社に連絡すると、地震があった日は日浅は休みだったが、自主的に契約を取りに行こうとしていたこと、その行先が被災地だったと思われることを知らされました。
今野はささいな喧嘩で日浅のことを遠ざけていたことを反省し、日浅の行方を探そうと決意します。
【結】影裏 のあらすじ④
日浅の勤めていた会社は「地震が起きた日は日浅は業務予定上は休みなので労災は下りないと思う」というばかりで、まともに日浅のことを探しているとは思えませんでした。
今野は、日浅と行った飲食店などを訪ねて日浅の行方を探しますが、誰に聞いても日浅の行方を知るものはいませんでした。
今野は日浅との思い出の少なさを嘆きます。
日浅と今野は釣りという共通の趣味はありましたが、釣り以外ではあまり日浅と接してこなかったことを悔やみます。
日浅の実家が捜索届を出していないことを知った今野は、日浅の実家を訪ねます。
日浅の母は亡くなっており、日浅の父親が日浅と一緒に暮らしていました。
父親は、今野のことをもてなしてくれましたが、日浅とは絶縁したと話します。
日浅は父親とうまくいっていませんでした。
父親が日浅と絶縁したきっかえは、大学に進学するといって東京で暮らしていた日浅が、実際は大学を卒業せず、卒業証書を偽造して就職をしたからです。
卒業証書を偽造した業者は悪人で、大学卒業を偽って就職したことを告発されたくなければ金を持ってこいと父親を脅しました。
父親は業者に金を渡して日浅とは戸籍上も絶縁したのです。
父親は、日浅に騙されて半年に一度、八十万円ほどの授業料を渡していたことを悔やんでいました。
父親は震災で死んだかもしれない日浅には無関心でしたが、せっかく今野が訪ねてきてくれたのだからと、友情に免じて捜索願だけは出すと約束してくれます。
父親によると、日浅は昔から不気味な面があると言います。
何を考えているのかわからなかったり、人を騙すことに躊躇がない面があったのです。
それを聞いて今野や互助会の契約をした同僚は騙されていたのかもしれないと考えます。
しかし、それも日浅の生き方らしいと感じるのです。
日浅の生き方を見ると、震災があってもしぶとく生き残っているような気がしました。
影裏 を読んだ読書感想
震災がテーマにはなっていますが、あらゆる要素が詰め込まれた一冊でした。
友情や生き方について考えさせられます。
今野と日浅のゆったりとした友情がとても素敵だと思いました。
いろんなものを抱えて生きている現代人の悩みなど、共感できる部分もありました。
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