【ネタバレ有り】HELLO WORLD(ハローワールド) のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:野崎まど 2019年6月に集英社文庫から出版
HELLO WORLD(ハローワールド)の主要登場人物
堅書 直実(かたがき なおみ)
主人公。本好きで内気な男子高校生。図書委員を務める。
カタガキ ナオミ(かたがき なおみ)
10年後の直実。過去を変えるために未来からやってくる。
一行 瑠璃(いちぎょう るり)
直実のクラスメイトで図書委員のメンバーであり、直実の恋人。
勘解由小路 三鈴(かでのこうじ みすず)
直実のクラスメイトで、図書委員。明るくてムードメーカー的存在。
HELLO WORLD(ハローワールド) の見どころ!
・内気な主人公、直実の心の成長
・過去を変えてまでも瑠璃を思い続ける直実の一途な思い
・京都の街並みや文化が織りなすSF的世界観
HELLO WORLD(ハローワールド) の簡単なあらすじ
京都に住む本好きの主人公・直実は高校生になったばかり。
早くクラスに馴染もうという焦りはありますが、内気な性格ゆえに、なかなか友達を作ることができません。
ある日、直実は図書館で借りた本を奇妙なカラスに奪われます。
カラスを追いかけた先は、伏見稲荷の山の中でした。
そこで直実は不気味な男と出会います。
その男は、直実のことを知っていました。
恐怖に襲われた直実はその場から逃げ出しますが、その帰り道に再びその男が直実の目の前に現れます。
恐怖に陥る直実に、その男は、「自分は10年後の直実だ」と告げます。
未来の直実は、悲しい事故で亡くなってしまった恋人を救うために、過去にタイムスリップしてきたのです。
その事故は、今から三か月後に起きるといいます。
自分に彼女ができるということすら信じられない直実ですが、未来の自分のために、今はまだ彼女ではない彼女のために、悲しい未来を変えようと奮闘するのです。
HELLO WORLD(ハローワールド) の起承転結
【起】HELLO WORLD(ハローワールド) のあらすじ①
主人公・直実は自分の内気さに悩んでいました。
直実は高校生になったばかり。
クラスメイトたちは少しずつ親睦を深めていましたが、直実にはまだ友達はいません。
クラスメイトと仲良くなりたいという気持ちはあるのですが、どうしても話しかける勇気が出ずに、直実はいつも自分の席で本を読むばかりでした。
そんな自分を変えようと、自己啓発本を購入する直実ですが、実際に思いを行動に移すのは難しいのです。
そんなある日、直実のクラスでは所属する委員会決めが行われました。
直実はその場の雰囲気に流されるように図書委員になりました。
図書委員になることに不満はありませんでしたが、自分の意思で委員会を決められなかったことに自己嫌悪に陥るのでした。
そんなある日、直実が図書館から家に帰っていると、突然妙なカラスがやってきて、直実が借りた本を奪っていったのです。
直実は大慌てでカラスの後を追いかけます。
追いかけた先は、伏見稲荷の山の中でした。
そこには、マントを被った不気味な男がいました。
直実は男に気付かれないように逃げ帰ろうとしますが、男は直実を見つけ、そして直実の名を呼びます。
直実は自分の名前を知られていることに恐怖を感じ、その場から大慌てで逃げ出します。
しかし、その帰り道。
待ち伏せをしていたかのように、直実の前にその男が再び現れたのです。
そして、さらに驚くべきことに、周囲の人間にはその男は見えないようでした。
男は実体を持たないのか、通行人は男の体をすり抜けていきます。
直実は混乱しつつも、その男を自分の家に連れて帰ります。
そこで男は、直実に自分は10年後の直実だと告げます。
即座には信じられない直実ですが、男と会話を続けるうちに、未来の自分でなければ知り得ないことも知っている男を、自分の将来の姿だと信じざるを得ないのでした。
【承】HELLO WORLD(ハローワールド) のあらすじ②
10年後の直実は、花火大会での落雷事故を防ぐために未来からやってきました。
その花火大会は、現在の直実にとっては三か月後に開催されるもので、直実はその花火大会に行く予定はありません。
しかし、未来の直実によると、直実は今から三か月後に彼女ができて、その彼女と花火大会に行くというのです。
その花火大会の場で、突然落雷が発生し、直実の彼女は亡くなったのだそうです。
その彼女の名前は、一行瑠璃。
直実のクラスメイトで、直実と同じく図書委員を務めています。
一行はクールな性格で、いつも一人でいるような女の子でした。
直実はそんな一行と付き合う未来を知らされ、困惑します。
しかし、未来の自分の言うことには逆らえません。
直実は、三か月後の事故を防ぐための特訓を始めることになりました。
未来の直実によると、過去の出来事を変えるのは簡単なことではなく、花火大会に行かないという選択をしたところで、強制的に連れ出されてしまうのだそうです。
そこで、未来の直実は、直実にグッドデザイン(神の手)を渡します。
これは、手袋ような形をしていて、装着した者が願ったものを生み出してくれるというアイテムでした。
花火大会で落雷が起きる時、直実はこのグッドデザインで屋根や避雷針といったアイテムを出して、一行に雷が落ちないようにする、というのが未来の直実の計画でした。
直実は未来の直実を「先生」と呼ぶようになり、グッドデザインを使いこなせるように、訓練を始めます。
【転】HELLO WORLD(ハローワールド) のあらすじ③
一行を守るための訓練に勤しむ直実ですが、一行と親密になって付き合うという重要事項も残されています。
先生(未来の直実)は「最強マニュアル」という一冊のノートを直実に手渡します。
そこには、先生が一行と付き合うに至るまでの過程が綿密に書き込まれていました。
このノートと同じように行動をすれば、無駄なく一行と付き合うことができるそうです。
先生は直実以外の人の目には見えないので、直実と一緒に学校にもついてきました。
そこで先生は、図書委員の仕事をする一行を見て、涙を流します。
それを見て、直実は過去を変えるというこの壮大な計画を、絶対に成功させなければならないと固く決意します。
そうは言っても、直実と一行の距離はそう簡単には縮まりませんでした。
図書委員の仕事を一緒にこなしてはいますが、お互いに無口なために、会話があまり盛り上がらないのです。
そんな時、図書委員で毎年恒例の古本市を行うことになりました。
図書委員が各自古本を集めてきて、校庭で販売するというものです。
直実と一行はクラスや廊下に古本の回収箱を設置しますが、回収率はあまり良くありませんでした。
そして、委員会のメンバーもそれほどやる気を出していないようで、なんとなく停滞した雰囲気が流れます。
しかし、直実にとっては、図書委員の活動は一行と付き合えるかどうかがかかっている一大イベントなので、少しでも多くの本を集めて古本市を成功させようと奮闘します。
すると、一行も、自分の家にある祖父の本も提供すると申し出ます。
その本は大量なので、一行と直実はリアカーで本を運ぶことにします。
学校と一行の家を往復する間、一行と直実は好きな本の話題で盛り上がり、直実は少し、一行との距離が縮まったことを実感します。
直実と一行の頑張りもあり、たくさんの本が集まりました。
委員会のメンバーたちもそれを喜び、ムードメーカーの三鈴を中心に、委員会が団結し始めます。
しかし、古本市の準備のために、校庭に出していた古本は、夜の間に燃えてしまいます。
夜間のライトを、風で古本市用の幟が覆ってしまい、そこに火がついてしまうという、不幸な事故でした。
本はほとんどが焼けてしまい、古本市は中止に追い込まれます。
しかし、直実は諦められませんでした。
夜中の学校に忍び込み、グッドデザインを使って、古本を復元します。
本という、情報量の多いものはグッドデザインで復元するにはかなりの集中力を強いられるために、すべてを復元することはできませんでしたが、なんとか古本市には出展できそうです。
委員会のメンバーには、偶然校庭に出していない古本の箱を見つけたと説明し、無事に古本市は開催されました。
そして、この出来事がきっかけで、直実と一行は急速に距離を縮めます。
花火大会の日までに、なんとか直実は一行との交際に漕ぎつけることができたのです。
【結】HELLO WORLD(ハローワールド) のあらすじ④
いよいよ、花火大会の日がやってきました。
過去は簡単には変えれないと先生に散々言われていた直実ですが、万一の可能性を信じて、一行を花火大会には誘いませんでした。
しかし、花火が始まる時間が近づくと、直実と一行も落雷の事故現場に引っ張り出されます。
直実は一行を連れて逃げ出そうとしますが、一行の足には地面が絡みついていました。
そして、花火が打ちあがり、突然空に雨雲が生まれました。
そして運命の時。
直実はグッドデザインで、ブラックホールを生み出しました。
ブラックホールは、一行を狙って降り注ぐ雷を受け止め、過去の悲しい事故を防ぐことに成功しました。
直実は喜びますが、先生の様子がおかしいことに気付きます。
先生は、事故を免れた一行の意識を10年後に持ち出そうとしていたのです。
落雷によって、一行は死んだわけではありませんでした。
彼女は、脳死状態に陥っていたのです。
先生は、事故に遭わなかった一行の意識を、10年後の一行に入れることが目的でした。
そうすると、意識を奪われた現在の一行は消えてしまうのです。
その事実を知った直実はショックを受けますが、奪われた一行の意識を取り返そうと、今度は直実が10年後に向かいます。
このころには、直実は一行のことを愛していました。
だからこそ、一行の意識を持ち出したい先生の気持ちも理解できました。
10年後の世界で、一行は目を覚まします。
そこでは、先生が一行の目覚めを待っていました。
感動的な再会を果たす二人ですが、一行は会話の端々に、これは本当の「直実」ではない、という気持ちが芽生えます。
その時、過去から直実がやってきます。
先生と直実によって行き来された時空は、その歪みによって障害が起こっていました。
大混乱が起こるなか、後からやってきた直実こそが、本当の「直実」だ、と一行は直感するのでした。
HELLO WORLD(ハローワールド) を読んだ読書感想
SF的ストーリーに加え、京都の街並み、純愛、主人公の成長、と、多くの要素が楽しめる物語です。
キャラクターも一人一人に華があって憎めません。
主人公の直実は、とても内気でクラスメイトに話しかけることすらできないような青年ですが、最終的には一人の女性の命を救うのですから、その成長っぷりに脱帽です。
また、舞台が京都なので、端々に地名や京都特有の文化が楽しめます。
和風なSFはあまりなじみがありませんが、意外と相性が良いことを知りました。
最後のバトルシーンなどは、映像で見てみたいです。
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