【ネタバレ有り】首無館の殺人 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:月原渉 2018年10月に新潮文庫から出版
首無館の殺人の主要登場人物
宇江神 華煉(うえがみ かれん)
本作の主人公。目覚めるまでの記憶が無い。
栗花落静/シズカ(つゆり しずか)
新しく屋敷に来た使用人。主人公の世話をしている。
宇江神 和一郎(うえがみ かずいちろう)
宇江神 家当主。60代で妻を迎える。現在は死亡している。
宇江神 玲ヰ華(うえがみ れいか)
和一郎の妻。和一郎が亡くなり宇江神家の実質権力者。主家夫人と呼ばれている。
九条孝作(くじょう こうさく)
宇江神家の執事。不愛想だが丁寧な物腰で、とても気が利く。
首無館の殺人 の簡単なあらすじ
横濱の祠乃沢にある豪商宇江神家。創始から明治まで栄えたが、息子の和意の代で衰え始め、跡継ぎになる息子にも恵まれなかった。前当主の和一郎は、息子の不甲斐なさを嘆き、60歳を超えて後妻を迎えることにした。しかし老人は跡継ぎを成すことなく病没、若い妻だけが残った。前当主亡き後、彼女は主家夫人と呼ばれるようになった。
首無館の殺人 の起承転結
【起】首無館の殺人 のあらすじ①
南棟の1階にある食堂で一同が集まり食事を摂るのが習慣であり、今日も夕食を摂る為に家人が席に着始めました。
その中に主家夫人の姿だけが見えません。
夕食の席では全員が揃うまで待つのが決まりであり、主家夫人はいつも最後に着席します。
時間にルーズな彼女はいつも遅れる為、誰もが不在を気にしておらず、私も、いつものことだと気にかけませんでした。
しかし、今日は夫人が中々姿を見せず、父が目に見えて苛立ちながら執事に尋ねました。
執事曰く、扉を叩いても反応がなく鍵も掛かっていて確認が出来ないと返ってきました。
お酒を飲む彼女は、折々酩酊することがあり今回もそうではないかと思われましたが、「何かあっては大変だ」と、全員で彼女の部屋へ向かうことにしました。
鍵の掛かった部屋、予備の鍵はなく扉を開けることが出来ません。
一同があぐねいていると、使用人のシズカが「壊せばいい」と発言します。
薪割り用の斧を持ち来したシズカは、無言で斧を扉に幾度も打ちつけました。
錠前はひしゃげ、木片が散らばり大穴が開きます。
室内に踏み入ると異臭が満ちており、床の上は衣服が散乱していました。
奥の寝台には主家夫人、と思われる死体がありました。
寝台を赤に染め上げ、横たわる首のない死体が。
【承】首無館の殺人 のあらすじ②
休みたい。
色々なことがあり、疲労を感じた体はそう訴えていたが、眠れそうにありません。
シズカは言います。
あの首無死体は主家夫人なのだろうか。
首がないのだから別人の可能性もある、と。
そして主家夫人であるなら、犯人は首を提出せざるおえない、とも。
シズカの推理を聞きながら、館に居る人物達について思案していました。
すると、どこからともなく絶叫が響き渡り、不意にぶつりと途切れたのです。
シヅカは廊下に出ました。
何事か確認しに行くのでしょう。
私は立ち上がり「私も行く」と彼女に続きました。
足の速いシズカは、機敏に各部屋を確認して回りました。
途中、背中が遠ざかりやがて見えなくなってしまいました。
この館は広大で、声がした場所を特定するのが困難でしたが、息を切らせフラフラになりながらも、私はようやく正面玄関の小広間へ到着しました。
声が出なかった。
父と九条、五郎の三人が駆けつけますが、私と同じく絶句しました。
血の海に鎮座していたのです。
首と死体が。
使用人の服を着た首のない死体の両手は、抱くように首に添えられていました。
膝に置かれた主家夫人の首に。
【転】首無館の殺人 のあらすじ③
父が死んだ。
意識が薄れていき、唯々頭が痛かったのです。
「お嬢様」と、シズカの声で我に返りました。
父の遺体を前に茫然自失だったようです。
シズカは首を切ると言いました。
そこで事切れている父の首を。
私を守る為だと。
犯人の目論みを崩すため、動揺させるために餌にするというのです。
ただその前にするべきことがある、とシズカは死者へと歩み寄り懐を探りました。
その際、父の胸元に牡丹の刺青が見えたのです。
主家夫人、使用人の守原の胸にも刻まれていた刺青。
同じものが父にも刻まれていました。
「あなたの胸にもありますか?」そう五郎に問うシズカは、五郎の胸倉を掴み、露になった胸元の牡丹の刺青を確認しました。
破砕音が響きます。
部屋にあるランプの破片が散らばり、流れ出た燃料により炎が上がりました。
「お嬢様、お逃げ下さいませ」と押し出されるように廊下へ出された私。
部屋の中を見ると、炎の中、五郎と九条が対峙し争い始めました。
「幽閉塔に向かへ」シズカが言うのです。
私は走り出しました。
突然の五郎と九条の争いも、シズカの意図も理解し難いですが、彼女の言う幽閉塔へと向かいました。
背後で音がしました。
シズカが追付いたのだろうと、安堵し振り返った私の眼前に九条がいました。
「これで終わりにしましょう」
【結】首無館の殺人 のあらすじ④
私こそが主家夫人、宇江神玲ヰ華であったです。
私の父、和意だと成りすましていた男が主犯であり、家族だと思っていた人達も全員偽物でした。
前当主の莫大な遺産が信託金として預けられており、受取が宇江神家の誰が相続するか分からなかった為、本物の宇江神家の人物を生かし、成りすますことにしたようです。
本物の和意さんの手紙によれば、金が手に入れば私達親子は消されてしまう。
そうならない為に、食事を運んでくる九条に話かけ探りを入れていたようでした。
彼の家は強盗に襲われた過去がある為、悪を心底憎んでいるが、貧しい妹を助ける為に、この悪事に手を貸していました。
そんな彼に和意はひとつ提案をしました。
宇江神家の財産と引き換えに、偽物を始末してほしい、と。
殺人の依頼は重罪であるが、娘の華煉と玲ヰ華を守る為です。
もし始末してくれるならば、罪を背負い自ら命を絶つと約束しました。
九条は完遂するでしょう。
そして、わたしは亡き妻のもとへ行きます。
首無館の殺人 を読んだ読書感想
首がない死体、とあるので入れ替わりを疑いましたが、結果本人の首である。
というのが不思議でしたが、後に分かる首を切る意味が知り、面白いと思いました。
シズカの「他の誰かではないとしたら?」という言葉が何度も出てきますが、終盤でようやく意味が分かりました。
犯人は何となくあの人だろうと思っていましたが、全員が偽物だとは思いもしませんでした。
玲ヰ華は和意と一緒になってほしかったですが、叶わず。
せめて玲ヰ華と華煉には幸せになってほしいです。
使用人のシズカさんは良いキャラでなので好きです。
冷静に推理していくのが格好いいと思いました。
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