【ネタバレ有り】絶対泣かない のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:山本文緒 1995年5月に大和書房から出版
絶対泣かないの主要登場人物
私(わたし)
十四歳の頃からファンだった脚本家・朝比奈光一郎と仕事を通じて出会いセフレ関係に。朝比奈からプロポーズされ、仕事も結婚を約束していた恋人も親も捨て妻になる。
朝比奈光一郎(あさひな こういちろう)
そこそこ人気のある脚本家。注目されるのが好きで、脚本家から映画監督を目指すようになる。女癖が悪く、毎日酒を飲み歩く生活を送っている。
絶対泣かない の簡単なあらすじ
十四歳の頃に好きで観ていたテレビドラマにいつも同じ名前がクレジットされていることに気が付いた私は、いつしかその脚本家のファンになっていました。その人の名前は朝比奈光一郎。テレビドラマのシナリオを書き有名になり、映画の脚本を書いたり、短編小説やエッセイも手掛ける朝比奈を私は追いかけるようになります。仕事を通じて朝比奈本人と知り合った私は、妻の座を射止めることができました。しかし、朝比奈は結婚しても女癖が悪く、連日酒を飲み歩き家に寄り付きません。それでも私は幸せでした。
絶対泣かない の起承転結
【起】絶対泣かない のあらすじ①
十四歳の頃に好きで観ていたテレビドラマにいつも同じ名前がクレジットされていることに気が付いた私は、いつしかその脚本家のファンになっていました。
その人の名前は朝比奈光一郎。
テレビドラマのシナリオを書き有名になり、映画の脚本を書いたり、短編小説やエッセイも手掛ける朝比奈を私は追いかけるようになります。
長年ファンをしている身としては、朝比奈が有名になっていくことは嬉しさ半分、寂しさ半分という気持ちでした。
そんな憧れの人と私は仕事を通じて知り合うことができました。
大学生の頃からアルバイトしていた会社で正社員として働くことになった私は、担当していた雑誌で朝比奈がコラムを書くことになり、編集長に直談判して担当にしてもらいます。
編集長は女癖の悪い朝比奈の担当にするのを渋っていましたが、ファンと言っても二十歳も年上の朝比奈を男性として見ていなかった私は、下品なことを言う編集長の言葉に反発心を抱きます。
当時二十三歳だった私には四十三歳の朝比奈はおじさんだと思っていたからです。
【承】絶対泣かない のあらすじ②
しかし、いざ朝比奈本人を目の前にして、私は簡単に恋に落ちてしまいます。
はじめて会った日からベッドに誘われた私は、朝比奈が相当遊んでいるらしいことや、結婚している噂を知っていましたが、なにしろ十四歳の頃から片思いしていた相手です。
その日から朝比奈の愛人になりました。
私には結婚の約束をしている恋人もいて、朝比奈とは遊びの恋だと自分に言い聞かせます。
朝比奈にも私の他にも恋人がいて、毎日遊びまわり忙しくしていました。
私は気まぐれで誘われ、その度にこれが最後かもしれないと逢瀬を重ねます。
愛人三号くらいがちょうどいいと割り切って付き合っていた私ですが、不意打ちで朝比奈からプロポーズされます。
予想だにしない事態に状況を飲み込めない私でしたが、冷静になり朝比奈との結婚生活を想像します。
朝比奈の妻になるということは、家の外に私以外の恋人を作ることを容認する立場になるということです。
それも踏まえた上で、私は朝比奈と結婚することを決心します。
【転】絶対泣かない のあらすじ③
朝比奈との生活は結婚前に想像した通り、普通の生活とは違っていました。
週に半分は家に帰って来ず、あらかた外で女の子と遊んでいるのだと予想できました。
朝比奈の住む大きくて古い家には年老いた母親と飼い犬がおり、結婚してから私の毎日は義母の世話に犬の世話、家の掃除に明け暮れました。
抜いても抜いても雑草は生え、電球は切れ、一軒家の維持だけでも大変で、そこに義母の三食の食事作りや犬の散歩です。
朝比奈の収入がいくらあるのかさえ私は知りませんでした。
会社を辞め、結婚を約束していた恋人を捨て、一人っ子なのに親さえ捨てた私は頼る人もなく、傍から見たら、朝比奈にいいようにこき使われているように見えるかもしれませんが、それでも私は幸せでした。
義母が亡くなった時は、実の息子の朝比奈以上に泣きました。
悲しかったからではなく、これで自分は用済みだと思ったからです。
出ていけと言われるかと思いまいたが、意外なことに朝比奈は家を改装し新しい家を建ててくれます。
【結】絶対泣かない のあらすじ④
朝比奈に追い出されることなく、私は新築した家に妻として住み続けています。
今日は雑誌社から新築した家の取材が入り、久しぶりに家が賑やかです。
笑っている朝比奈の姿を見るのは久しぶりで私は嬉しくなります。
雑誌社のスタッフと熱心に話し込む朝比奈の傍らには女性スタッフが寄り添うように座っています。
私は彼らに飲み物を用意し、つまみを用意し、小腹が空いたようにおにぎりまで握ります。
小間使いのように動く私は、すっかり実年齢より老けてしまいました。
雑誌社の面々が帰った後、朝比奈は先ほどの饒舌さはすっかり消え失せ、少し眠るといって部屋に引っ込んでしまいます。
私は、疲れた朝比奈の為にお風呂に新しいお湯をはります。
夜になり仮眠ととった朝比奈がのっそり起きました。
私はお風呂をすすめます。
思い出したように朝比奈はぼそっと「今日は、ありがとう」と声を掛けます。
それだけで私は満足するのです。
お湯に浮かぶゆずを見て、朝比奈が今日が冬至だと気づく姿を想像すると、私の胸の中に愛しさがこみあげてきます。
絶対泣かない を読んだ読書感想
『絶対泣かない』は職業にまつわる短編が15編収録されています。
今回はその中で専業主婦にまつわる『愛の奇跡』をご紹介しました。
傍からみれば、親の介護要員として結婚させられたように見える主人公ですが、当の本人はそれで満足している、というか幸せの絶頂にいるんですよね。
彼女が仏のような広い心の持ち主だからというわけではなく、それは単純に旦那を妄信的に愛しているから。
彼と結婚できたことが奇跡だから、外に恋人を作ろうが、毎日飲み歩いて家に帰って来まいが関係なく受け入れる。
専業主婦というのは、家事をこなすだけでなく、旦那を心から愛することも仕事のうちなのでしょうか……?
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