【ネタバレ有り】チップス先生、さようなら のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:ジェイムズ・ヒルトン 2016年1月に新潮社から出版
チップス先生、さようならの主要登場人物
チップス(ちっぷす)
主人公。 イギリスのパブリック・スクール「ブルックフィールド中学校」の教師。
キャサリン・ブリッジズ(きゃさりん・ぶりっじず)
チップスの妻。家庭教師。
ウィケット(うぃけっと)
下宿屋の女将。
メリヴェイル(めりう゛ぇいる)
チップスの主治医。
リンフォード(りんふぉーど)
ブルックフィールドの生徒。現在は麻疹で休学中。
チップス先生、さようなら の簡単なあらすじ
チップスは22歳の時にイギリスの名門校、ブルックフィールド中学校で新米の先生として働き始めます。個性豊かな生徒たちとの無数の出会いと別れ、短くも幸せだった妻との結婚生活、第一次世界大戦下の激動の中でも変わることのない教室での授業。多くの人から愛されたチップス先生にも、 遂には教壇を去る日がやって来るのでした。
チップス先生、さようなら の起承転結
【起】チップス先生、さようなら のあらすじ①
チップスは1848年にイギリスで生まれて、1870年にブルックフィールド中学校へ教師として赴任してきました。
ここは16世紀のエリザベス朝時代にまで遡るほどの歴史がある学校で、国会議員から実業家まで数多くの名士を輩出しています。
500人を越える生徒たちは血気盛んなわんぱく者ばかりで、彼らにとって新任教師を困らせたり遣り込めたりすることはスポーツみたいなものです。
着任早々に自習時間の監督を任されたチップスは、 さっそくいたずらっ子から手荒い歓迎を受けることになりました。
当時はまだその顔にあどけなさを残した青年でしたが、チップスは厳格な態度を崩すこともなく動揺を見せることもありません。
受け持ちの授業中には知識を詰め込むだけではなく、ユーモアを交えた語り口で生徒の心を掴んでいきます。
教職者としても人間としても成長していくチップスのプライベートに転機が訪れることになったのは、趣味にしていた山登りの時です。
【承】チップス先生、さようなら のあらすじ②
1896年の春、48歳になったチップスは寄宿舎の監督や古典研究学級で忙しい中でも休暇をとって湖水地方まで旅行に行きました。
地元でも有名な観光スポットのウォズディル部落を散策した後、 グレイト・ゲイブル山に登った時にキャサリン・ブリッジズと出会います。
生き生きとした青い目と艶々とした淡く黄色い髪の毛の持ち主で、職業は家庭教師で年齢は25歳です。
仕事一筋だったチップスにとっては初めての恋であり、ふたりはその秋の学期が始まる1週間前にロンドンで結婚式を挙げました。
キャサリンは夫が受け持つクラスの生徒たちばかりではなく、同僚の教師や彼らの妻ともすぐに打ち解けていき人気者になります。
ブルックフィールドで長らく独り暮らしをしてきたチップスにとっても、後にも先にもあんなに楽しく幸福だった時期はありません。
キャサリンが生まれたばかりの赤ちゃんと日を同じくしてこの世を去っていったのは、あの登山から2年経った1898年の4月1日のことです。
【転】チップス先生、さようなら のあらすじ③
学寮内の既婚者向けアパートを退去したチップスは、独身者用の部屋に戻りました。
妻子との死別によってしばらくは茫然自失としていましたが、授業への情熱は失っていません。
1913年、65歳になったチップスは金一封と記念の掛け時計を受け取って職を退きます。
しかし彼が再びブルックフィールド校に呼び戻されたのは、3年後の1916年のことです。
時代は第一次世界大戦の真っ只中にあり、若者たちは次から次へと徴兵されて出兵していくために教師の頭数が足りません。
時代の流れは愛国教育へと向かっていきますが、チップスは教壇に立って自由と博愛を訴え続けていました。
空襲警報が鳴り響き榴散弾が降り注ぐ中でも、何事もなかったかのようにラテン語を教えています。
1918年11月11日の戦争終結によって臨時休校となりお祭り騒ぎになる中でも、 チップスはひとり静かで浮かない表情です。
ブルックフィールドの卒業生の中にも、 戦死者を出してしまったことを悔やんでいるのでしょう。
【結】チップス先生、さようなら のあらすじ④
終戦と同時に辞表を提出したチップスは、今度こそ本当に40年以上に渡った教師生活に幕を下ろしました。
送別会もなく贈り物もなく、後任者と握手だけして静かに学校を去ります。
チップスが隠居先に選んだのは、ブルックフィールドの敷地から道ひとつ隔てた場所にあるウィケット夫人の下宿です。
海外旅行に出掛けたり夜遅くまで探偵小説を読み耽ったりと、 悠々自適の日々を送っていました。
週末になると、 恩師を慕って訪ねてくるかつての教え子たちが跡を絶ちません。
掛かり付けのメリヴェイル医師の見立てでは健康そのものだったチップスも、1933年に85歳でその生涯を終えます。
そんな彼が最期に言葉を交わしたのは、 麻疹で長らく入院していてこの度ブルックフィールドへの復学が決まった病弱な少年・リンフォードです。
チップスのアドバイスによって新しい学校生活の不安が解消したリンフォードは、別れ際に「チップス先生、さようなら」と感謝を込めて声をかけるのでした。
チップス先生、さようなら を読んだ読書感想
時には厳しく時には優しさを持って、生徒たちひとりひとりと向き合っていく主人公・チップス先生の授業風景には心温まるものがありました。
豊かな自然に囲まれている山道で、キャサリンと巡り合うシーンも美しさ溢れています。
ふたりのつかの間の新婚生活とともに、突如として訪れることになる別れが痛切です。
第一次世界大戦下での息苦しさにも屈することなく、教師としての自分の信念を貫き通す生きざまには胸を打たれました。
今現在教職に就いている方たちや、将来教育学部への進学を考えている皆さんは是非ともこの本を読んでみて下さい。
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