【ネタバレ有り】かくしごと のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:住野よる 2017年3月に新潮社から出版
かくしごとの主要登場人物
大塚京(おおつかきょう)
男子生徒。渾名は特になし。
高崎博文(たかさきひろふみ)
男子生徒。京の親友。渾名は「ヅカ」。
宮里(みやざと)
女子生徒。2ヵ月ほど学校に来ていない。渾名は「エル」。
三木(みき)
女子生徒。 高崎とは中学時代に同じ陸上部に所属。渾名は「ミッキー」。
黒田(くろだ)
女子生徒。 三木の友人。渾名は「パラ」。
かくしごと の簡単なあらすじ
地味で目立たない大塚京、 スポーツ万能で人気者の高崎博文、引っ込み思案で現在不登校中の宮里、ヒーローに憧れる三木、天然で明るい黒田。彼らはタイプがまるっきり異なる高校生でしたが、不思議と気が合い打ち解けていきます。5人の男女それぞれに秘められた特別な力と、小さな隠し事が高校生活の中で交錯していくのでした。
かくしごと の起承転結
【起】かくしごと のあらすじ①
大塚京はクラスメートの頭上に浮かぶ「?」「!」「、」「。」
を見ることが出来ました。
2年生になってから京は宮里と1ヶ月間隣りの席でしたが、ゴールデンウイーク以降彼女は登校していません。
きっかけは宮里が使っていたシャンプーの銘柄「ビリアン」を、京が何気なく指摘したからです。
すっかり気まずくなってしまったふたりの仲を、三木は取り持ってくれます。
2ヶ月ぶりに教室に入ってきた宮里は「!」を浮かべつつ、ビリアンの香りを漂わせて京の隣に座りました。
三木には相手の心臓に傾く「プラス」と「マイナス」のバーが見えます。
服飾を学ぶ大学への進学を考えている宮里、演劇でAO入試を目指す黒田、外国語学部を卒業して将来は海外で働きたいという高崎博文。
いつの間にか皆から置いてけぼりを喰らっていた三木でしたが、文化祭の舞台でヒーローショーを演じることで吹っ切れます。
三木が選んだ進路は就職が難しいという文学部でしたが、彼女の心のバーは揺らぐことはありません。
【承】かくしごと のあらすじ②
黒田は離れたところから他人の心拍数をカウントすることが出来て、彼女が現在気になっている高崎の心臓の鼓動は空港内ロビーでも平常通りのリズムを刻んでいました。
この高校には修学旅行中にふたりっきりになって鈴を渡したパートナーとは、いつまでも一緒にいられるという恋のおまじないがあります。
高崎の鞄の中からは微かに鈴の音が響いていましたが、誰に渡すのかまでは分かりません。
せっかく辿り着いた先の南の島でも、鈴の行方が気になってばかりです。
連日の寝不足が祟って、3日目の入浴中に黒田は熱失神の症状を起こして倒れてしまいました。
翌日は離島まで船で渡る予定でしたが、黒田はホテルで先生とお留守番です。
旅行最終日にすっかり回復した黒田は、鈴のことは忘れて三木と自由行動を楽しむことにします。
美味しいものを食べてお土産物を買い漁っている時に、三木がそっと差し出したのは小さな貝殻の付いた鈴です。
三木はこの数ヶ月で友達となった京・宮里・高崎にも同じものを渡していて、ふたりっきりではなく5人全員が一緒にいられることを願っていました。
【転】かくしごと のあらすじ③
スペードは「喜」 、 ダイヤは「怒」、 クラブは「哀」 、 ハートは「楽」 。高崎博文は周りの人たちの喜怒哀楽が、カードを手に取るように分かりました。いつもの5人でお花見会を開くことになり、高崎は手作りの焼きそばを籠に積んで自転車を走らせます。
場所は町の西側にある公園で、天気の良い休日ということもあり行き交う人の頭上は「喜」や「楽」のマークばかりです。
唐揚げからハンバーグに、デザートのビエネッタまで。
それぞれが持ち寄った料理を桜の下で食べ始めますが、宮里だけは「哀」を浮かべ一向に手を付けません。
中学生の頃から付き合いのある三木と高崎の会話を聞いていた宮里のマークは、「哀」から「怒」へ変わっていました。
いつの間にかひとり公園の出口に佇んでいた宮里に、高崎は声をかけます。
せっかく仲良くなった皆から見放されてしまうのが怖いという宮里の告白を聞いて、 高崎はマークだけでは分からない彼女の気持ちが少しだけ分かるような気がしました。
【結】かくしごと のあらすじ④
小さな頃から宮里には、他人の恋心の向かう先が矢印となって見えていました。
夏休みになっても5人は午前中から図書館に集まって、受験勉強に取り組んでいます。
三木から伸びる「→」は京に向いていて、京の身体からも三木への「←」が出ていましたがお互いに気がつくことはありません。
宮里が心配しているのは、ふたりの仲が進展することによって居心地の良かった5人全員の関係が変わってしまうことです。
学校で「10年後の自分への手紙」という宿題が出ていたを思い出した宮里は、10年後の三木と京に宛てた手紙を書きました。
手紙はタイムカプセルの中に埋められてしまうために、宮里からふたりへの隠し事が明かさせるのは10年後のことになるでしょう。
宮里は性格も考え方も違う5人が、各仕事(かくしごと)を与えられて支え合っていることに気が付きます。
最後に未来の自分へ手紙を書いた宮里は、10年後に誰といても何をしていたとしても自分自身に「→」を向けることを誓うのでした。
かくしごと を読んだ読書感想
期末テストから文化祭に修学旅行と、高校生活を彩るイベントの数々が情緒豊かに描かれています。
クラスの人気者ばかりではなく、目立たないながらも人間的な魅力を秘めた生徒にもスポットライトが当てられていて感情移入できました。
3人の女子高校と2人の男子生徒との、恋愛関係とも友情とも異なる微妙な距離感が心地よかったです。
ラストに登場する、「大人達は、タイムカプセルを埋めた場所を忘れたふりをしているだけなのかもしれない」というセリフがグッときます。
青春時代の記憶と秘密を胸に秘めて生き続けていくことの素晴らしさが伝わってきました。
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