【ネタバレ有り】エミリー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:嶽本野ばら 2002年4月に集英社から出版
エミリーの主要登場人物
エミリー(えみりー)
本作の主人公。Emily temple Cuteというロリータブランドで全身を固めている中学生の女の子。極度の男性恐怖症。孤独でどこにも居場所がないと感じている。
男の子(おとこのこ)
本作の準主人公。ロックティストなSUPER LOVERSというブランドに身を包んだ男の子。ラフォーレ原宿前で毎日座り込んでいる主人公を気にかけ話しかける。
マキトお兄さん
子供向け番組の歌って踊れる司会進行のお兄さん。主人公が男性恐怖症となった原因にあたる人物。
陸上部の先輩
男の子がSUPER LOVERSを好きになるきっかけとなった学年が一つ上の男の先輩。
エミリー の簡単なあらすじ
主人公はどこにも居場所がない孤独な中学生の女の子。あらゆる人間に恐怖を感じているため、クラスではいじめられている。過去に子供向け番組の司会のお兄さんに性的悪戯をされてから男性恐怖症になってしまった。そんな主人公の唯一の居場所がラフォーレ原宿の前の広場。そこに大好きなEmily temple cuteを着て毎日のようにしゃがみこんで座っている。いつものように座っているとある男の子が話しかけてきた。
エミリー の起承転結
【起】エミリー のあらすじ①
毎日が孤独な中学生の主人公の唯一の居場所はラフォーレ原宿前の広場です。
ラフォーレ原宿には大好きなお洋服のブランドのEmily temple cuteがあるからです。
学校ではいじめの標的ですが学校での主人公は仮初の姿。
Emily temple cuteというお洋服が主人公を本当の自分に変身させてくれます。
いつものようにラフォーレ原宿前にしゃがみこんで座っていると男の子が話しかけてきました。
聞くと主人公が毎日ラフォーレ原宿前に座っていることを知っていて、話しかけてみたとのこと。
その男の子は主人公がEmily temple cuteの服を全身着こなしていることに気づき、自身もSUPER LOVERSというブランドが好きでよくラフォーレ原宿に来るというのです。
しかも同じ中学の先輩であることが判明し、且つ主人公と同じように学校では苛められはしないものの無視され続ける存在であるということを明かしてくれました。
主人公は男の子にシンパシーを感じまた見かけられたら話しかけられてもいいことを承諾します。
しかし学校ではお互いに浮いた存在なので、ありもしない男女の噂が立つのを避けるため、学校では無視をし合う約束を二人はします。
【承】エミリー のあらすじ②
一冊の雑誌がきっかけで主人公はよりつらいいじめをクラス中から受けます。
ラフォーレ原宿前でフォトグラファーに雑誌に載せるファッションスナップを撮らせて欲しいとしつこく粘られ、しぶしぶ承諾しました。
後日、目ざといクラスメイトがその雑誌に載っている主人公を見つけ、普段は陰気なクセに私服では派手なロリータ服を身にまとっているギャップを揶揄し、調子に乗っていると目の敵にされました。
そしてクラスメイトから「エミリー」と嘲笑の意味を込め呼ばれるようになりました。
男の子と初めて出会ってから一週間後、主人公は期待を抱きながら男の子が再びラフォーレ原宿前に来るのを待っていました。
ようやく男の子が現れ主人公は安堵します。
話をするうちに男の子は自身がデザイン工芸部に所属していると言います。
通称デザ工はオタクの巣窟ともいえるクラブで印象がよくありません。
本当は男の子は美術部に入りたかったがしぶしぶデザ工に所属し、本格的な絵画を独り描くことを追求しているといいます。
そしてお気に入りのスケッチを一枚取り出しそのスケッチに描かれている本人である既に卒業した陸上部の先輩の話をし始めました。
その先輩はSUPER LOVERSを練習着に着ていて、体育会系の人がおしゃれをしているということに男の子は驚き、その先輩に興味を覚え、スケッチをさせてもらうように頼み込んだのです。
その先輩と男の子はだんだん仲良くなり、良い先輩後輩関係を築いていきました。
しかしその関係性は崩れます。
先輩が女の子に告白の手紙をもらった時に男の子は自分も先輩が好きでゲイであることを自覚しました。
先輩にはっきりと好意を男の子は伝えましたが拒絶され、クラス中からゲイであることを理由にいじめられるようになりました。
男の子からの重いセクシュアリティに関する告白を主人公は嫌悪することなく受け入れ、やがて二人はより交流を深めていきます。
【転】エミリー のあらすじ③
焼却炉の裏側でひっそりと一緒に昼食を過ごす二人。
男の子は昼食の後スケッチブックを開け、スケッチし、熱く美術論を語ります。
。
それをうれしそうに聞く主人公。
主人公はEmily temple cuteの服と貴方がいるから、それが支えになって生きていけると告白します。
男の子も感銘を受け、陸上部の先輩のことをふっきろうとします。
淡々と日々が過ぎていくと思ったが事件が突然起きます。
。
焼却炉での裏側で男の子を待っている主人公の前にクラスのいじめのリーダーと取り巻きが現れ、主人公を拘束し、焼却炉に閉じ込めました。
主人公は必死で助けを呼び、男の子が助けてくれました。
このことに怒りを忘れた男の子はいじめのリーダーに報復として暴行を加え、学校に来なくなります。
。
学校にもラフォーレ原宿前にも現れなかった男の子がようやくラフォーレ原宿前に姿を現しました。
男の子を見かけるなり謝る主人公。
それに対し男の子は主人公のためではなく自分のためにやったことだと告げます。
男の子は以前主人公に存在が支えになっていると言われたように、男の子もまた主人公は男の子にとって一部になっており、何よりも尊重すべき存在なんだと語りました。
そして学校を休んでいる間にある事件があったことを主人公に告げます。
突然男の子宛に先輩から電話がかかってきたというのです。
先輩は男の子の告白を良くない形で拒絶したことを直に謝りたいと言いました。
そして先輩の家に行ってみると、先輩が男の子を唆し、自慰をしてみろと命令しました。
男の子は逆らわずに自慰をしましたがそれは謀で、先輩の仲間がいきなり乱入し、男の子を辱めました。
先輩は友だちに自分を慕うゲイの後輩がいることを面白おかしく語り、そのゲイの存在をからかうために電話をしてきたのです。
一気に事件のことを語り震える男の子の手を握り締める主人公。
二人はその場でしばらく手を握りあったまま寄り添いあいます。
【結】エミリー のあらすじ④
家には帰らないという男の子に付いて行く主人公。
あてもなく夜の街を彷徨います。
そして渋谷駅に辿り着きます。
ホテル街にある地域に二人は入っていきます。
疲れているし、肌寒くなってきたのでこのままラブホテルに行こうと恥ずかしがりながら提案する主人公。
狭いホテルの部屋をの中に入り主人公は男の子から抱きしめられます。
男の子は主人公から恋愛感情として好きだと言ってくれたことを嬉しく思っていること、主人公のことを自分も恋愛感情に近い感情で愛しく大切に思っていることを告げましたが、身体的には反応はゲイであるため難しく、そのことが歯がゆいと感じているのです。
男の子は主人公にセックスではなく番うことを提案します。
肉体的な交わりではなく精神的な交わりをしようというのです。
そして主人公は裸になり、男の子も裸になります。
お互いの身体の違いを確かめるように触れ合います。
そして深く抱擁しあいます。
お互いの体温を肌で感じ取りながら二人は眠りにつきます。
これから二人は夢の中で番い、真の永遠を体験します。
これが最初で最後。
一度だけの必然。
居場所がなかった二人は本当の意味でこの夜分かり会えました。
もう居場所を探す必要は二人にはありません。
エミリー を読んだ読書感想
普通であることを過剰に強いる学校という体制の中で居場所を見つけられない二人が出会い、お互いのセクシュアリティを超えて相手を大切に思い合う物語です。
男女の肉欲を超えた精神的な繋がりという一つの愛の形を掲示してくれています。
二人が自分らしくあればあろうとするほど周囲の人間は徹底的に排除しようといじめや嫌がらせに走ります。
このいじめの描写がきつく、容赦がないので読者は精神的にダメージを与えられますが当の主人公と男の子は意外にもしぶといし打たれ強いです。
元々自分らしくあれる軸を持っている(好みの洋服等から伺える)ので、そういった人たちが惹かれあうと尚更外野は度外視です。
外野がいじめや嫌がらせに走るほど二人の絆が強くなってゆき、お互いをかけがえなく思い合うので、いじめや嫌がらせはエッセンスに過ぎなくなります。
当の本人たちも多少はダメージを追っていますが・・・魂というレベルで相手を尊重し、想い合えることは奇跡に近いです。
テーマは重いですがハッピーエンドではあります。
今後の人生の支えになる体験を二人は一夜にしてやり遂げたのですから。
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