「サクラ咲く」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|辻村深月

サクラ咲く

【ネタバレ有り】サクラ咲く のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:辻村深月 2012年3月に光文社から出版

サクラ咲くの主要登場人物

塚原マチ(つかはらまち)
ヒロイン。1年5組の書記を引き受けて科学部に入部。

光田琴穂(こうだことほ)
マチと同じ小学校の出身。副委員長でバスケ部員。

守口みなみ(もりぐちみなみ)
マチのクラスメイト。委員長で陸上部員。

海野奏人(うみのかなと)
マチのクラスメイト。科学部員。

高坂紙音(こうさかしおん)
マチのクラスメイト。入学以来不登校。

サクラ咲く の簡単なあらすじ

中学1年生の塚原マチはちょっぴり臆病な性格で、何かを他人から押し付けられると断ることが出来ません。そんな彼女にとっての何よりもの楽しみは、学校の図書室で好きな本を見つけて読むことです。読書中に見つけた「サクラチル」と書かれた1枚の紙がきっかけになって、マチは自分を変える忘れ難い体験をすることになるのでした。

サクラ咲く の起承転結

【起】サクラ咲く のあらすじ①

内気な女子中学生の見えない友達

幼い頃から引っ込み思案だった塚原マチは、中学生になってからも人から頼まれると断ることができません。

入学式から2週間後の学級委員の役員決めの時にも、小学校時代の知り合い・光田琴穂に書記を押し付けられてしまいました。

委員長に自ら立候補した守口みなみはマチとは正反対の活発なタイプでしたが、学級委員の行事を通して仲良くなっていきます。

ある日の放課後にみなみに誘われて向かった先は、入学してから学校を休みがちな高坂紙音の自宅です。

授業のノートやプリントを彼女の母親に手渡しましたが、本人には会うことができません。

読書を趣味にしているマチは、授業が始まる前に図書室を訪れることにしていました。

外国文学の棚を眺めていたマチは、お気に入りのリザ・テツナー作「黒い兄弟」を見つけて手に取ります。

ページをめくると中から出てきたのは、1枚の紙に書かれている「サクラチル」という文字です。

この日からマチは顔も知らない相手と、本と手紙を介して心通わせていくのでした。

【承】サクラ咲く のあらすじ②

気になる文通相手の正体に思いを巡らす

夏休みが終わって新学期になってからも、マチは図書室で秘密の文通を続けていました。

本の後ろには貸出記録カードが付いていますが、日付とマチと同じ1年5組というクラスだけで名前は書かれていません。

図書室では読書が大好きだというみなみと一緒になって、今までに読んできた小説の話をすることが多いです。

いつもたくさんの友達に囲まれて楽しそうにしているみなみが、自分だけの文通相手であればとマチは密かに願っています。

もうひとり思い当たるのが、マチと同じ科学部に入っている海野奏人です。

科学者の父親を持つ奏人もなかなかの読書家で、貸出カードに書かれている彼の名前をしばしば目にします。

更には夏休みの自由研究をみなみたちとグループを組んで取り組んでいた時に見たのは、あのメモとそっくりな几帳面に整った奏人の文字です。

日直当番が回ってきたマチは学級日誌と図書室の手紙とを照らし合わせてみましたが、全く同じ筆跡は見つかりません。

【転】サクラ咲く のあらすじ③

変わっていくマチと明かされる手紙の送り主

見えない「誰か」からのアドバイスを受けているうちに、マチは自然と積極的な性格に変わっていきました。

1年5組が文化祭で歌う曲目が「遠い日の歌」に決まり琴穂がソプラノパートのリーダーに選ばれましたが、彼女はなかなかやる気を出しません。

そんな琴穂にはっきりと注意をして、練習を纏めるきっかけを作ったのがマチです。

バレンタインデーの日には奏人にチョコレートを渡して、勇気を振り絞って告白します。

マチは以前のように周りの人たちから嫌われることや、自分自身が傷つくことを恐れたりはしません。

これまではひた隠しにしてきた文通についても、かけがえのない友達となったみなみや奏人たちだけには打ち明けることが出来ました。

皆に相談に乗ってもらって何がしたいのか初めて分かったマチは、自分の名前を相手に伝えることを決意します。

「あなたは誰ですか」とのマチの手紙に帰ってきたメッセージは、「私は高坂紙音です。」

と書かれた1文です。

【結】サクラ咲く のあらすじ④

響き渡る紙音の美声と膨らむ桜の蕾

マチが1番最初に見つけた図書室の手紙に書いてあった「サクラチル」とは、音楽に熱心な私立中学校の実技試験に落ちたことでした。

歌が上手く声楽教室に通っていた紙音でしたが、その時の失敗が原因で教室に入ることができません。

図書室には来ることができる紙音に、マチたちは「サクラサク」と書いた手紙を本に挟んで棚に戻します。

教室の空気がいつもと違う3月の朝、マチが見たのは昨日までは空席だった窓際の席に座る紙の長い女子生徒です。

マチとの文通がすごく楽しかったこと、みんなからの手紙を読んでもう1度教室に行ってみようと思ったこと。

マチと紙音が会話を交わしながら笑い合うごとに、クラスメイトたちの気遣うような視線も緩んでいきます。

紙音の存在が教室の中に溶け込んでいったのは、3年生を送る会で歌う「遠い日の歌」の合唱練習をした時です。

透明感のある紙音の歌声が自分たちのソプラノに重なるのを感じながら、マチは校庭に咲き始めた桜に目をやるのでした。

サクラ咲く を読んだ読書感想

何事にも主体性がなく流されるように生きている、ヒロインの塚原マチが何ともじれったいです。

偶然にも図書室の本の中に隠されている謎めいたメッセージから、自分自身を変えていく様子には心温まるものがありました。

思春期特有の少女の揺れ動く心や、クラスメイトとの関係性に思い悩んでいる姿もリアリティー溢れています。

クラスの中でも中心人物ばかりではなく、脇役や不登校の生徒にもスポットライトが当てられていて好感が持てました。

1年前には儚く散ってしまった紙音の夢が、時を越えて花開いていくようなクライマックスが感動的でした。

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