「私の頭が正常であったなら」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|山白朝子

「私の頭が正常であったなら」

【ネタバレ有り】私の頭が正常であったなら のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:山白朝子 2018年2月にKADOKAWAから出版

私の頭が正常であったならの主要登場人物

私(わたし)
本作の主人公。交通事故で娘の?子を亡くしてしまう。それからは精神を病んでしまう。

?子(ゆうこ)
私の娘。五歳。交通事故で亡くなってしまう。

夫(おっと)
私の夫。離婚をして元夫となる。娘の?子とともに交通事故で亡くなってしまう。

妹(いもうと)
私の妹。二十五歳。精神を病んでしまった姉に付き添う。

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私の頭が正常であったなら の簡単なあらすじ

私は元夫と娘である?子を交通事故で亡くしてしまう。その結果、三年間自殺未遂と入退院を繰り返すことになる。実家で療養し、散歩しているとどこからともなく少女の声が聞こえてくる。この声がなんなのか私は知りたくなり、一人で行動を開始していく。

私の頭が正常であったなら の起承転結

【起】私の頭が正常であったなら のあらすじ①

悲劇

結婚して私たちは娘をもうけました。

?子。

それが私たちの娘です。

しかし娘が生まれる少し前から、私は夫に対して、不信感のようなものを抱くようになっていました。

離婚を決意したのは、?子が五歳の誕生日をむかえる目前の時期でした。

私たちの結婚生活は六年程度で終了したのです。

元夫の顔を見ない生活がはじまりました。

財産分与も問題なく済み、養育費の支払いは月に一度、手渡しでうけることになりました。

手渡しの理由は、同時に子どもへの面会をおこなうためでした。

初夏に三度目の面会が行われました。

面会場所のカフェテラス席に元夫は座っていました。

ひとしきり雑談を終えると、「また三人でやりなおせないかな」と元夫が聞きます。

私が首を横にふると、元夫は立ち上がり、座っている私の前にやってきて頬をおもいきりたたきました。

元夫は?子をひきずるようにしてどこかへ連れて行きます。

道路へ侵入すると元夫はトラックに轢かれて即死してしまいます。

?子も無事では済まされませんでした。

 

【承】私の頭が正常であったなら のあらすじ②

少女の声

三年間、自殺未遂と入退院を繰り返しながら、元夫の行動や心理状態についてかんがえさせられました。

その声を聞いたのは、退院して実家で療養している時期のことでした。

実家から十五分ほど野川沿いをあるいたところで、子どもの声が聞こえてきたのです。

妹も、母も、その声は聞こえないといいます。

散歩中に聞こえた声の正体は、たんなる幻聴なのか、それとも、そうではないのか。

そうではない場合、はたしてあの声は何だったのか。

私はそれが気になりました。

声は?子の声ではなく、他の子の声に聞こえます。

散歩のたびに、同じ場所で声を聞きました。

はっきり聞こえる日もありましたが、やはり付き添いの妹には聞こえていないようです。

妹だけではありません。

偶然に通りかかった犬の散歩をしている人や、ウォーキングをしている人にも、聞こえている様子は見られません。

私はこの幻聴かどうかよくわからない声をきちんと調べてみたくなり、付き添いをつけずに一人で行動することにします。

 

【転】私の頭が正常であったなら のあらすじ③

声の主は?

声のする方に向かって住宅地を歩きました。

やがて?子の声が途切れて私は途方にくれました。

神社に座り込んでいると、妹が駆けつけて上着をかけてくれました。

私を見かけた近所の人が家に連絡したのだといいます。

また一人きりで歩いていると、すすり泣くような声が聞こえてきます。

少女の声に耳をすませながら移動します。

聞こえなくなれば道を引き返し、声がするところまでもどります。

そうして住宅地をぐるぐるさまよっていると、?子の声が聞こえた日のことを思い出します。

少女の声が聞こえる範囲を特定し、その中心にある土地へたどりつきました。

野川沿いにならんでいる、どこにでもあるような一戸建ての住宅でした。

築二十年といった感じです。

家の中から声がします。

私は意を決すると、その家の玄関チャイムを人差し指で押してみます。

しかし故障しているのか、家の奥で音が鳴っているような気配はありません。

今日は家を突き止められただけで上出来だと思い、続きは夜中にすることにします。

 

【結】私の頭が正常であったなら のあらすじ④

決死の救済

夜がふけて自室にこもり、すこしだけ眠りました。

?子の夢を見ました。

アラームの音で目が覚めると、深夜二時でした。

私は出発することにします。

身支度を整えて、外に出ました。

少女の声の聞こえる辺りまでやってきました。

裸足で住宅地を移動し、例の家の前にたどりつきます。

少女の声はつづいていました。

そのとき、横から光が当てられました。

それは懐中電灯をもった妹と警官でした。

しかし家の中から声が聞こえます。

私は家の方にむかって駆け出しました。

リビングの窓とおもわれる縦長のガラスを発見し、持っていた植木鉢をたたきつけました。

ガラスは音をたてて砕けます。

廊下に出て闇の奥へと入っていきます。

警官が私の腕をつかみます。

私が声を上げると、警官の手が外れました。

浴室の折りたたみ戸へ向かって体当たりすると浴室が開きました。

そこには浴槽内で衰弱してうずくまっている少女がいました。

少女は緊急搬送されて一命をとりとめました。

私は妹に付き添われ、少女の入院している病室を頻繁にたずねるようになります。

私たちは寄り添っておたがいを癒すことが必要だったのです。

 

私の頭が正常であったなら を読んだ読書感想

山白朝子さんといえばホラー色が強い小説が多かったのですが、「私の頭が正常であったなら」は山白朝子さんらしくない小説でした。

どちらかといえば別名義である乙一っぽい小説です。

しかし作風が違ったとしてもおもしろいことに変わりはありません。

悲しい物語ですが、最後には希望が芽生えるという、悲しくも温かい物語となっています。

「私の頭が正常であったなら」このタイトルの裏には自分を信じようというテーマが隠されているような気がします。

なぜなら私の頭が正常だと信じなかったら、衰弱した少女を助けることなどできなかったのですから。

 

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