【ネタバレ有り】花のさかりは地下道で のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:色川武大 1985年10月に文藝春秋から出版
花のさかりは地下道での主要登場人物
私(わたし)
物語の語り手。終戦直後はギャンブラー。その後小説家に転身。
アッケラ(あっけら)
終戦直後は街娼。飲食業に携わりながら自分の店を持つ。
まり子(まりこ)
アッケラの娘。
清(きよし)
アッケラの恋人。富山の薬屋。
大野(大野)
アッケラの恋人。公認会計士。
花のさかりは地下道で の簡単なあらすじ
敗戦後間もない混沌とした上野界隈で、「私」はギャンブルに興じながらその日暮らしを続けています。駅構内の地下道には行き場のない人たちが住み着いていましたが、数多くの男性の間を渡り歩いていたアッケラもそのひとりです。ある夜に1着のズボンを貸したことがきっかけになり、その後も私とアッケラとの奇妙な関係が続いていくのでした。
花のさかりは地下道で の起承転結
【起】花のさかりは地下道で のあらすじ①
第二次世界大戦が終結してから5〜6年くらいの間、私は荒んだ生活を送っていました。ちょうど16歳から22歳に当たり世間一般の男の子が異性への関心が芽生え始めていく時期でしたが、博打に明け暮れていたために女性にはとんとご縁がありません。
人相は悪くその風体はホームレスのために、誰も近寄ってこないのは当然でしょう。私には実家がありましたが帰ることはなく、上野駅の地下道のコンクリートの上を塒にしています。そこで出会ったのが、アッケラという通称を持つ女性です。
出身地は群馬県、年齢は私よりも10歳ほど年上、上州女らしくさばさばした勝ち気な性格。彼女は上野の山の暗がりで、不特定多数の男性を相手に客を引いていました。ある夜に熱を出して地下道で寝ていたアッケラは、自分の服を汚してしまいます。
博物館前の噴水まで連れていき身体を洗い終わるまで見張り役を務めた私が差し出したのが、ぼろぼろのズボンです。
この時に私とアッケラは「臭い仲」になりました。
【承】花のさかりは地下道で のあらすじ②
その後私は実家に戻ったり他の盛り場を稼ぎにしていたために、上野に行く機会がありません。
ある日通りがかりに上野に寄ってみると、地下道の住人たちもだいぶ少なくなっていてました。顔見知りを見つけてアッケラの消息を尋ねたところ、彼女は父親の分からない子供を出産して何処かへ行ってしまった後です。
アッケラとの再会を果たしたのは、それから3年ほど後のことになります。松戸競輪場でかなりの額を儲けた私は、市川のお店で祝杯を上げました。
向かいのボックス席で接客をしていたのがアッケラで、近々日本橋の小料理屋に移るとのことです。
日本橋のお店では彼女は仲居として働いていて、花の盛りを地下道で一緒に過ごしてズボンを貸し借りした臭い仲としてご馳走してくれました。子供は女の子でまだ小さいために、昼間は近所の知人に面倒を見てもらわなければなりません。
アッケラ自身は浄瑠璃の師匠に気に入られて、やがて下町の酒亭の代理店長にまで取り立てられます。
【転】花のさかりは地下道で のあらすじ③
私が初めてアッケラの娘と会った場所は、臨時の小部屋が3つあるお店の2階でした。一重瞼のきつい眼差しは母親譲りになり、まり子という名前のその女の子は滅多なことでは笑顔を浮かべることはありません。
アッケラのもとには何人かの男たちが出入りしていて、富山県から東京に商売でやって来る薬売りの清もそのひとりに当たります。清は1年の半分以上は行商で地方に出掛けているために、その合間を縫ってアッケラの部屋に泊まっていくのは「大野の旦那」と呼ばれている公認会計士です。
男たちは皆アッケラを便利な足場のように利用していましたが、彼女は誰かひとりでも定着させてまり子の父親代わりにするつもりでした。
やがて下町のお店や浄瑠璃の師匠とは税金問題で揉めるようになり、アッケラは退職して神田駅のすぐ側に店を構えます。
今までよりかは商売の規模は小さいながらも、彼女が生まれて初めて手に入れた自分のお店です。
まり子が学校に行く年頃になると、アッケラは中年期へと差し掛かっていました。
【結】花のさかりは地下道で のあらすじ④
アッケラが年齢を重ねながら何とか生き凌いでいる間、私自身も生き方を変えていました。
博打からも酒からも離れて、小説の新人賞を貰って新聞に名前と写真が載るほどです。
アッケラは新聞記事を切り抜いて店の壁に貼り付けていて、自分のことのように喜んでいます。
大野の旦那は病でこの世を去って、薬屋の清は事業に失敗して故郷へ逼塞。
アッケラの周りの男たちが次々とつまずいていく中でも、彼女は文字通りのあっけらかんとした生き様を貫いていました。
街に戦争の焼け跡が無くなって地下道から人々の姿が消え失せた頃、私の住まいにアッケラから電話がかかってきます。
私が店の2階で見たのは、テーブルに並べられている豪華な料理とお酒です。
学校を卒業したまり子が誰しもが知る大手の商事会社に就職が決まったために、ふたりだけで乾杯をします。
私は白いものが混じり出した彼女の頭や首筋を眺めながら、地下道の知り合いが果たして何人生き残っているのか感慨に耽ってしまうのでした。
花のさかりは地下道で を読んだ読書感想
闇市や屋台が立ち並んで得体の知れない人々が無数に徘徊する、戦後間もない上野の風景が味わい深かったです。
うら若い女性が汚れた身体を噴水広場で洗い流して、駅構内の地下道で寝泊まりする様子には胸が痛みました。
悪臭とわい雑さに包まれながらも、誰しもが生きることに必死になっていた当時の時代背景が伝わってきます。
一夜の縁から主人公とつかず離れずの関係性を貫いていく、アッケラの生きざまが印象深かったです。
多くの男たちに振り回されて生きながらも自分らしさを見失うことなく、たったひとりの娘に愛情を注ぐ姿が感動的でした。
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