【ネタバレ有り】ヘヴンリー・ブルー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:村山由佳 2009年1月に集英社から出版
ヘヴンリー・ブルーの主要登場人物
斎藤夏姫(さいとうなつき)
高校卒業後に教職に就く。
斎藤春妃(さいとうはるひ)
夏姫の姉。精神科医。
一本槍歩太(いっぽんやりあゆた)
夏姫の彼氏。美大を卒業後に塗装店に就職。
古幡慎一(ふるはたしんいち)
夏姫が担任する男子高校生。
ヘヴンリー・ブルー の簡単なあらすじ
斎藤夏姫は高校のクラスメイト・一本槍歩太と付き合い始めましたが、大学生になるとお互いにすれ違いが多くなっていきふたりの仲は上手くいきません。歩太が夏姫の姉・春妃に心惹かれていくことによって、ふたりの破局は決定的になります。幸せなカップルとなったはずの歩太と春妃にも、やがては悲劇が訪れることになるのでした。
ヘヴンリー・ブルー の起承転結
【起】ヘヴンリー・ブルー のあらすじ①
一本槍歩太という変わった名前の男子生徒と、斎藤夏姫は高校の3年間を同じクラスで過ごしました。
自然とお互いに会話を交わすことが多くなっていき、2年生のバレンタインデーにチョコレートを渡したことがきっかけになってお付き合いが始まります。
ファーストキスはその年の夏休みの終わりで、それ以降もふたりの仲は順風満帆です。ただひとつ気がかりだったのは、歩太のお父さんが長期間に渡って心を病んで入院していることでした。歩太の父親が入院しているのは、夏姫の8歳年上の姉・春妃が精神科医として働いているクリニックです。
仕事一筋の父と厳格な母に挟まれて育てられた夏姫にとっては、学校の成績も優秀でルックスにも恵まれている姉は憧れの存在でした。
大学に進学してから家を出て独り暮らしを始めた姉のマンションに、夏姫が転がり込んでくることもしばしばです。
春妃が歩太の父の主治医になることが決まった途端に、姉妹の関係も動き始めていきます。
【承】ヘヴンリー・ブルー のあらすじ②
夏姫は無事に志望大学に合格しましたが、歩太は1年浪人して美大を受験するためにふたりは徐々に疎遠になっていきます。
せっかくのゴールデンウィークも何処へも出掛けず仕舞いになり、夏姫は憂鬱なキャンパスライフを送っています。
思い余って春妃に相談してみましたが、彼女自身も駆け落ち同然で結婚した後に夫と死別したためかアドバイスを貰えません。
夏休みに久しぶりの歩太からの呼び出しに大喜びな夏姫でしたが、喫茶店で切り出されたのは別れ話です。
「他に好きな人がいる」という歩太の告白を聞いて、夏姫の胸の内にひとつの疑惑が涌いていきます。ある朝抜き打ちで姉のマンションに寄ってみた夏姫が目撃したのは、上半身裸で歯を磨く歩太の姿です。姉に対して憎しみの言葉をぶつけて帰宅すると、病院から春妃の緊急搬送を知らせる電話が鳴り響きます。
慌てて駆け付けましたが既に春妃は切迫流産により重体に陥っていて、手術の甲斐もなく亡くなってしまうのでした。
【転】ヘヴンリー・ブルー のあらすじ③
春妃の直接の死因は流産ではなく、担当の医師がアレルギーテストを怠ったことによる薬物ショックが原因でした。
父は裁判に持ち込んで白日の下に晒すと息巻いている一方で、母は残された娘の恋人のことを心配しています。
言われるままに夏姫が歩太の様子を見に行くと、何日もの間お風呂に入っていないようで食事も水も碌にとっていません。
夏姫が馬乗りになって頬をひっぱたき、厳しい言葉を投げかけるとようやく正気を取り戻したようです。形見分けによって歩太は、春妃が編みかけていた小さな青い毛糸の靴下を受け取ります。歩太が春妃の妊娠を初めて知ったのは、誰も帰ってこない彼女のマンションでこの靴下を見つけた時でした。
靴下のブルーは以後夏姫と歩太の脳裏に深く刻みこまれて、長きに渡ってふたりを苦しめることになります。
何とか芸大に合格を果たした歩太は、春妃をモデルにした裸婦像を描くことにとり憑かれていきイタリアの絵画展で芸術賞を獲得するのでした。
【結】ヘヴンリー・ブルー のあらすじ④
夏姫は大学を卒業した後に高校教師になり、1年生のクラスを受け持つことになりました。クラス名簿には生徒の名前と共に保護者の連絡先も記載されているために、古幡慎一が祖父母と一緒に暮らしていることはすぐに分かります。慎一と恋人同士となったのは彼が大学生になってからで、ふたりの年齢差は奇しくもかつての春妃と歩太と同じく8つです。
春妃がこの世を去ってから10年の間に、歩太は塗装会社で働きつつ人物画ばかりではなくおびただしい数の風景を描きためていました。夏姫が知り合いのギャラリーに持ち込んだことによって、展示即売会を開催してもらえるようになります。今日はギャラリーのオーナーが常連客を招いての、細やかなパーティーです。慎一を連れて会場を訪れた夏姫は、すっかり恋人を失った哀しみから解放された歩太を見て安心します。
夏姫は春妃に感謝の気持ちを捧げつつ、この夏には姉の享年をまたひとつ追い越していくことに思いを巡らしてしまうのでした。
ヘヴンリー・ブルー を読んだ読書感想
初々しさ溢れる高校生のカップルの誕生から社会人となってそれぞれの道のりを歩んでいくまでの、10年間もの時間の流れが濃縮して伝わってきました。
青春時代のトキメキばかりではなく、無意識のうちに他の誰かを傷つけてしまう残酷な一面も描かれていて共感できます。
何処までも純真無垢な妹の夏姫と、美しくも儚げな姉の春妃とのコントラストも印象深かったです。
一本槍歩太という仰々しい名前とは裏腹に、何かにつけて優柔不断なキャラクターも憎むことが出来ません。
ふたりの魅力的な女性の間で揺れ動いていた青年の、ラストの旅立ちが感動的です。
コメント