「神の島のこどもたち」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|中脇初枝

神の島のこどもたち(中脇初枝)

【ネタバレ有り】神の島のこどもたち のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:中脇初枝 2019年1月に講談社から出版

神の島のこどもたちの主要登場人物

東カミ(あずまかみ)
沖永良部高校2年生。

ユキ(ゆき)
カミの同級生。

大勝(おおがち)
沖永良部高校の生徒会長。

ナーク(なーく)
カミの弟。

マチジョー(まちじょー)
カミの幼馴染み。7年前に神戸に渡り現在は音信不通。

神の島のこどもたち の簡単なあらすじ

沖永良部島は第二次世界大戦が終結してから7年の歳月が流れても、アメリカ政府の統治下に置かれています。女子高校生の東カミは同い年のユキや1年先輩の大勝と本土復帰運動に夢中でしたが、自身の進路についてはなかなか決めることが出来ません。そんな彼女の人生を変えるきっかけになったのは、神戸に行った幼馴染みとの再会のでした。

神の島のこどもたち の起承転結

【起】神の島のこどもたち のあらすじ①

女子高生が抱く本土復帰への想い

1952年の鹿児島県沖永良部島はアメリカ軍によって支配されていて、本土復帰への見通しは未だにたっていません。

沖永良部高校は夏休みが終わって2学期が始まったばかりでしたが、教職員と全校生徒が一致団結して島内1周デモ行進を敢行することが決まりました。

2年生の東カミは書道の心得があったために、デモ行進で使用するためのプラカードの文字を書くことを生徒会長の大勝さんから頼まれます。

奄美大島では政治運動の弾圧が厳しく逮捕者まで出ているらしく、カミはちょっぴり不安です。

しかし密かに思いを寄せているユキが熱心なために、カミも自然と復帰運動に加担していくことになります。

ユキの家はカミの自宅から僅か3軒先になり、ふたりは10歳の頃から同じ村落で育った幼馴染みです。

この島では高校に通うことが出来る子供は僅かでしたが、その中でもユキはずば抜けて成績優秀でした。

沖永良部島が本土に復帰した暁には、ユキは大学への進学まで考えているようです。

【承】神の島のこどもたち のあらすじ②

復帰運動の高まりと友に降りかかる悲劇

デモ行進は学校ばかりではなく青年団や婦人会へと広がっていき、島民を挙げての日本復帰町民大会が開かれるようになりました。

冬休みに入ると奄美群島の高校生も復帰陳情と自分たちの島の現状を伝えるために東京へ旅立つことが決まって、沖永良部高校から選ばれたのはもちろん大勝さんです。全校生徒からの1人20円当たりの寄付金はこの当時としては高額でしたが、あっという間に集まります。

年末年始になると本土や沖縄へ出稼ぎに渡った人たちが帰ってくるために、カミたちの住んでいる地域も俄に騒がしくなります。

そんな慌ただしい季節に発生したのが、沖縄と沖永良部島を往来する新生丸の沈没事件です。犠牲者の中にはカミの中学生時代の同級生でもあり、卒業後には高校に進学することなく沖縄の蘇鉄でんぷん工場に就職したヤンバルの名前もあります。

カミは自分たちの島が本土に復帰して豊かになっていればヤンバルは死ぬことがなかったと、強い憤りを覚えるのでした。

【転】神の島のこどもたち のあらすじ③

シェイクスピアと三味線

デモ活動と共に盛んに行われていたのは、小学生からお年寄りが校庭に集まって夕方から翌朝まで続けられる断食祈願です。

断食用の旗を書くように頼まれたカミが筆を家に取りに帰ると、誰もいないはずの家の中で弟のナークが天井に吊ってある芋をつまみ食いしていました。

食べ盛りの小学生にまで断食を強いることに、カミは罪悪感を抱いてしまいます。

復帰運動の資金集めをするために、カミの高校ではトラックに乗って演劇の巡業をすることになりました。出し物はシェイクスピアの「ハムレット」、配役はカミがオフィーリア、大勝さんがハムレット、ユキがレアティーズ。

地元の人たちはイギリスの戯曲に馴染みがないためか、幕が上がった途端に客席からはブーイングの嵐です。カミはその場を鎮めるために、オフィーリアの衣装のままで島の伝統的な踊り・鳩間節を披露します。騒がしかった観客も静まり返り、お客さんはカミの動きに合わせて三味線を演奏し手拍子を送るのでした。

【結】神の島のこどもたち のあらすじ④

本土復帰と未来への船出

3年生に進級しても依然として復帰運動を続けていたカミたちのもとに、アメリカのダレス国務長官が奄美群島返還声明を出したというニュースが届きました。ユキや今では小学校の教員となった大勝さんと喜びを分かち合っていたカミの前に姿を現したのは、7年前に神戸に密航したきり帰って来なかったマチジョーです。高校卒業が迫る中でも進路を決めることが出来なかったカミでしたが、マチジョーとの再会を通して先生になることを考え始めます。

沖永良部島の本土復帰の日は、1953年の12月25日に正式決定しました。

当日は沖永良部高校では授業を取り止めにして、復帰祝賀行列に繰り出します。周りの仲間たちが次々と旅立っていく中で、カミが選んだ道のりは大学で勉強してこの島で1番の先生になることです。復帰して初めて本土へ大学受験に行く高校生たちを、集落の人たちは総出で見送ってくれます。

カミは必ずこの島へ帰ってくることを誓いつつ、大きく手を振るのでした。

神の島のこどもたち を読んだ読書感想

ストーリーの舞台に設定されている、鹿児島県奄美諸島の豊かな自然に包まれた風景が魅力的でした。

穏やかに流れていく時間と、地域コミュニティの結び付きや人々の暮らしぶりには心温まるものがあります。

その一方では島の中央に聳え立つ、アメリカ軍基地が何とも不吉です。

島の中での復帰運動の高まりと本土との温度差には、今の時代にまで残されている基地移転問題にも繋がるものがありました。

ヒロインの東カミが本土の大学へ進学することを決意する、クライマックス近くのシーンが印象深かったです。

外の世界へ憧れを抱きながらも、生まれ育った島のために教師を目指す決意が感動的でした。

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