【ネタバレ有り】エムブリヲ奇譚 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:山白朝子 2012年3月にKADOKAWAから出版
エムブリヲ奇譚の主要登場人物
私(わたし)
本作の主人公。和泉蝋庵とともに旅をしている。人間の胎児を育てることになる。
和泉蝋庵(いずみろうあん)
もう一人の主人公。旅本作家。極度の方向音痴で道によく迷う。
エムブリヲ(えむぶりを)
人間の胎児。
エムブリヲ奇譚 の簡単なあらすじ
時代は江戸時代。旅本作家である和泉蝋庵とともに旅をする私はエムブリヲという人間の胎児をひろった。和泉蝋庵と別れ、エムブリヲをつれていった私は徐々にエムブリヲに愛着がわいてくる。やがて見世物小屋で商売を始めた私であったが、エムブリヲを手放すことになってしまう。
エムブリヲ奇譚 の起承転結
【起】エムブリヲ奇譚 のあらすじ①
時代は江戸時代。
すべての国が統一されて以降、街道の整備が盛んになっていた。
次第に人の行き来が盛んになってくる。
街道をつかうのは公用文書をたずさえた役人だけではなかった。
何ヵ月もかけて徒歩で各地をまわり、人づてにしか聞いたことのなかった大海や社寺、めずらしい食べ物をたのしむようになった。
そこで売れるようになったのが旅本であった。
和泉蝋庵という男は旅本を書いて小金をかせいでいた。
仕事にこまっていた私は報酬がでるということで和泉蝋庵の付き人をひきうける。
しかし、和泉蝋庵との旅は楽しいものではなかった。
旅の目的地が本当にあるのかどうかよくわからない場所を旅することや、和泉蝋庵の迷い癖が理由だった。
私は毎回、奇妙な場所へと連れていかれていた。
双子しか生まれない村や、一頭の馬ばかりをうやまっている村にも行った。
三度目の旅で私はついに嫌気がさした。
そんな気分の中、町へもどる途中、私は人間の胎児を拾う。
【承】エムブリヲ奇譚 のあらすじ②
宿に泊まり、夜おそくなっても眠れなかった私は散歩すればちょっとは眠くなるだろうかと思い、深夜に布団をでる。
外はひんやりとした風が吹いていた。
あるきながら、今後のことを考える私。
そのとき、くちゃくちゃという湿った音が聞こえてくる。
あたりは暗かったが、目を凝らしていると、月が霧の中まで照らしてくれた。
そこに点々と、白くて小さなものが落ちている。
どうやら生き物のようであるが、小指くらいの大きさだった。
私は手のひらにのせて宿に持ち帰る。
明け方、それはエンブリヲだと和泉蝋庵に教えられる。
エムブリヲは人間の胎児だった。
埋めたほうがいいと和泉蝋庵に言われるが、私は懐にいれて宿を出発する。
自然に死ぬかと思われていたエムブリヲであったが、死ななかった。
やがて和泉蝋庵と別れたわたしは長屋にもどり、エムブリヲと過ごすことになる。
二週間も世話をする日々が続くと私の胸の中にこれまでしらなかった温もりがわいてきていた。
【転】エムブリヲ奇譚 のあらすじ③
エムブリヲはまるめた私の古着の中で一日をすごした。
ある日、知り合いの男友達とあそんだときも、エムブリヲを着物の中に入れていた。
案内されたのは町はずれにある廃屋の二階。
五人くらいの男たちが、ろうそくをともした部屋で、サイコロをふって遊んでいた。
私は博打の中でもサイコロが特に好きであった。
参加してあつくなっていると、エムブリヲが着物の隙間からころがり出てきて、場に伏せられた茶碗のそばに横たわった。
突然の登場におどろく男たち。
帰りみち、博打で負けてしまった私はなにか仕事をしなくてはと考えていた。
私は見世物小屋を思いつく。
私の見世物小屋は次第に評判になり、客がつめかけてくるようになる。
だが、街で評判になるとエムブリヲを狙うやつらがでてくる。
私は寝ないでエムブリヲを守ことにした。
なかなか胎児から成長しないことを心配した私は道ばたで久しぶりに会った蝋庵に相談する。
ある日、博打の元締めが借金をとりに私のもとにくる。
借金を取り消しにしてもいいが、相応のものはもらっていくと告げ、博打の元締めは去っていく。
【結】エムブリヲ奇譚 のあらすじ④
外は博打の元締めの手下が見張っていた。
私はエムブリヲを懐に入れて窓の外に草履を置くとその上に着地する。
足音をたてないようにあるいて、夢うつつの男の前を通りすぎ、一目散に走って逃げた。
長屋のあつまっているところをぬけて、川のそばにたどりついた時、息が切れてうごけなくなった。
逃げてきた方角から複数の足音が近づいてくる。
草の茂みに入って頭を低くしていると、私の部屋を見張っていた男たちが、走って通り過ぎていく。
はやく町をでなければと考えたその時、和泉蝋庵の顔が浮かぶ。
蝋庵の家に行き、話を全て聞いた蝋庵は旅に出ることを反対する。
子どもを欲しがっている夫婦がいるから彼らに預けてたほうがいいと。
それに同意する私。
蝋庵の紹介してくれた夫婦はやさしそうな顔立ちと言葉遣いで善人であることが一目で分かるような人たちだった。
私は夫婦がエムブリヲ抱えて去っていくのを見送る。
それから何年かが過ぎ、ある少女が私に話しかける。
おじちゃんといっしょに過ごしたことがあると。
それは成長したかつてのエムブリヲだった。
エムブリヲ奇譚 を読んだ読書感想
山白朝子作の小説。
エムブリヲ奇譚という題名の不思議な小説だ。
エムブリヲという人間の胎児を育てるという話。
普通は女性のお腹の中で育つはずの胎児を外でしかも男が育てていくというユニークさが魅力になっている。
特に最後のカタルシスはすごいとしかいいようがない。
今までの話が全て最後につながっているのだ。
読んだあとはほんわりとした温かな気持ちになれる。
アイデア、伏線、カタルシス、全てが秀逸の作品である。
他にもおもしろい短編が集まっているので、ぜひ読んでいただきたい。
どれもユニークなストーリーで楽しませてくれる。
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