著者:加藤シゲアキ 2017年12月に扶桑社から出版
チュベローズで待ってる AGE22の主要登場人物
金平光太(かねひらこうた)
物語の語り手である〈僕〉。就活に失敗した大学四年生。ホストとしての源氏名は光也。
雫(しずく)
光太をホストにスカウトした青年。チュベローズのナンバーワンホスト。
ミサキ(みさき)
雫の恋人。
亜夢(あむ)
光太と同時期にチュベローズで働きはじめた青年。亜夢は源氏名。光太より二歳年下。
斉藤美津子(さいとうみつこ)
四十歳。株式会社DDLの経理部部長補佐。光太を最終面接で落とした面接官。
チュベローズで待ってる AGE22 の簡単なあらすじ
大学四年生の金平光太は、秋になっても就職が決まりませんでした。
やけ酒に酔っていると、雫という青年からホストに誘われます。
家庭の経済状況が悪いため、光太は大学を留年する一方で、ホストとして働きはじめました。
そんなある日、彼の勤めているホストクラブへ、斉藤美津子が客としてやってきて、光太を指名します。
彼女は,光太を面接で落とした面接官でした……。
チュベローズで待ってる AGE22 の起承転結
【起】チュベローズで待ってる AGE22 のあらすじ①
大学四年生の金平光太は、秋になっても就職先が決まりませんでした。
光太の家は、父が早くに亡くなり、母と八歳の妹の三人暮らしです。
銀行員だった母は、認知症になった祖母を介護するために退職し、内職していました。
その祖母が亡くなったことで、いまは体調を崩して入院しています。
光太が留年して大学に残るには、彼がお金を稼がなければなりません。
最後の就活に失敗した晩に、やけ酒を飲んで酔っていた光太は、雫という男から、ホストにスカウトされました。
光太は迷いましたが、母の退院時に、就職内定した恋人の恵といさかいがあり、ホスト体験に行くことにしました。
スーツ姿で、指定されたチュベローズという店に行くと、雫から、十万円を渡され、店に似合う服を買ってくるように言われます。
買ってきた服は、なんとか合格し、体験も合格だったようで、雫から十万円のバイト代をもらいます。
ところが、服を買うための十万円は単に貸しただけ、として、すぐに取り返されてしまうのでした。
光太は、光也という源氏名で正式に入店します。
同期入店の亜夢は、すぐに指名が入りますが、光太には入りません。
そんなある晩、雫の恋人のミサキが、光太を初指名しました。
ミサキは、光太を三か月以内に五位以内にしてやるのと引き換えに、雫の動向をさぐるスパイをやるように、と言われます。
光太は、本当に五位以内になれるのなら、と、それを引き受けるのでした。
【承】チュベローズで待ってる AGE22 のあらすじ②
チュベローズの休日に、光太は雫のことをさぐる目的もあり、亜夢と飲みに行きました。
別れぎわ、かかってきた電話に出た亜夢は、「これから人に会う」と言います。
その二時間後、亜夢はチュベローズに侵入し、大金を盗んで逃走したのでした。
翌日、店は大騒ぎ。
オーナーの水谷は雫をどやしつけます。
雫は店を開かず、スタッフ全員に亜夢を探すように命じます。
亜夢と最後に会ったということで、光太は、水谷と雫に話を聞かれます。
あの日亜夢に電話がかかってきた、という話から、「共犯者がいる」と水谷はにらみます。
水谷は雫に、借金返済のために、これまで以上に働くようにと言いつけます。
また水谷は、「亜夢は死体でみつかり、金はとりもどした」ということで幕引きすることにしました。
彼は光太に、口止め料として百万円をくれました。
光太はミサキには事情を話しました。
ミサキは雫の子を妊娠中で、将来を考え、雫を独立させようとしていました。
しかし、今度の事件のため、その計画が狂ってしまいました。
翌日、ミサキは、斉藤美津子を店につれていきます。
美津子は光太を指名したのに、さっぱり打ち解けません。
翌日も来た美津子は、光太に謝ります。
美津子の勤めるDDLは、光太が唯一最終面接まで行った会社ですが、面接官であった美津子が光太を落としたのです。
「他の会社でも合格しているだろうし、いっしょに働くイメージがわかなかったから」というのが不合格の理由でした。
光太は、「わびるつもりがあるなら常連客になれ」と命じます。
美津子が常連客になると、不思議に、ほかにも指名が入るようになりました。
クリスマスに、店でパーティーが開かれました。
盛況だったものの、光太は初めてむなしさを覚えたのでした。
【転】チュベローズで待ってる AGE22 のあらすじ③
光太は美津子に呼ばれてホテルに行きました。
彼女は、来年もDDLを受けるように言い、自分が合格させる、と言います。
光太はどうしてよいかわからず、美津子と身体の関係を持つのでした。
年が明け、美津子はこれまでと変わらずに店に来ました。
ミサキから問い合わせがきました。
光太は、「あれ以来、雫は荒れて、欠勤も増え、ナンバー6に落ちた」と教えます。
光太は雫のマンションへ行ってみましたが、部屋に入れてもらえませんでした。
一方、美津子は、もうすぐ始まるインターンについて、光太を指導します。
美津子から借りたマキャベリの「君主論」の本には、彼女の書き込みと、男の書き込みがありました。
光太は、美津子のかつての交際相手であったと思われるその男に嫉妬します。
インターンは順調に進み、明日が最終日という晩のこと。
ミサキから、「助けて」と電話がきます。
雫のマンションへ行くと、ミサキが倒れていて、すぐに救急車を呼びました。
光太は、雫を探しに外へ行きます。
雫は外国人と喧嘩していました。
喧嘩に巻きこまれた光太は、二日間警察に留め置かれました。
当然、インターンは欠席となってしまいました。
光太は、母にも、恵にも、これまでホストをしていたことを告白します。
チュベローズへ行くと、光太はヒーロー扱いでした。
美津子が、また客として店に来ます。
仕事を終えた光太は美津子の家へ行き、身体を重ねるのでした。
【結】チュベローズで待ってる AGE22 のあらすじ④
春になり、久しぶりに大学に行った光太は、亜夢に会いました。
ここに来れば光太がいるかもしれないと考えて、亜夢は来ていたのでした。
光太が盗難事件のことを問い詰めると、渋りながらも亜夢は答えました。
亜夢は、水谷の愛人のひとりが、妊娠して勝手に産んだ子供だったのです。
母が亡くなったあと、亜夢は水谷の店で働かせてもらいました。
するとあるとき、雫に疑いがかかるようにしてお金を盗むように、水谷から命令されました。
水谷は、愛人の子である亜夢などどうでもよく、雫を手放したくなかったので、そんな事件をでっちあげたのでした。
亜夢は海外へ行こうと思っているようです。
一方、就活で、光太はいくつかの内定を取りました。
もうひとつ、リベンジとなるAIDAの最終面接が残っています。
そこは、DDLの親会社です。
最終面接は圧迫面接でした。
応募者各人のプライベートの秘密をあばき、こきおろす、という試験でした。
光太のホストの件も、調査されてバレており、こきおろされました。
光太は開き直り、その場を切り抜けます。
その後、偶然に雫と会いました。
光太は雫に盗難事件の真相を教え、ホストへの復帰をうながします。
また、光太は就職がきまったのでホストをやめることを水谷に話しますが、水谷は認めません。
そればかりか、雫がホストに復帰することも認めません。
しかし、従業員たちが懇願したことで、水谷は折れて、雫の復帰を認めたのでした。
やがて、AIDAから合格の連絡がきました。
光太が美津子に報せると、彼女は喜んでくれました。
が、それっきり、彼女と連絡がつきません。
美津子の家に行ってみると、そこには甥だという青年がいました。
美津子はホストにいれあげて、会社のお金を横領したあげく、自殺したということでした。
チュベローズで待ってる AGE22 を読んだ読書感想
正直に言って、こんなにおもしろい作品とはおもっていませんでした。
著者がアイドルグループに属する芸能人だということで、「どうせたいしたものではないんだろう」という、偏見の目があったのです。
ところが、実際に読んでみると、自分の偏見を恥じるばかりでした。
本当におもしろいのです。
主人公の青年が、ホストになり、さまざまな経験をしていく。
そのストーリーの運び方が実にうまい。
一度読み始めると、ページをめくる手を止めることができなくなってしまいました。
そうして、読み終わったあと、ほろ苦い余韻が残るところも、実にいいです。
すばらしい青春エンタメ小説を読めて、幸せでした。
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