著者:高山羽根子 2020年7月に新潮社から出版
首里の馬の主要登場人物
未名子(みなこ)
沖縄に住む二十代の主人公です。中学の頃から不登校で10年ほど資料館の手伝いをしています。
順さん(よりさん)
未名子の手伝う資料館の主
ヴァンダ
未名子の仕事の通信相手
ポーラ
未名子の仕事の通信相手
ギバノ
未名子の仕事の通信相手
首里の馬 の簡単なあらすじ
沖縄に住む未名子は中学の頃から不登校でした。
その頃から空いた時間は順さんの資料館で資料の整理をしていました。
仕事はパソコンで通信相手の外国人にクイズを出すという内容です。
ある日、台風が去ったあとの庭に馬が迷い込んでいました。
悩みながら馬の扱い方を通信相手に教わり乗りこなせるまでになります。
そんな時、高齢の順さんが亡くなってしまいます。
未名子はある事を心に決めて行動します。
首里の馬 の起承転結
【起】首里の馬 のあらすじ①
順さんは若い頃から色々な土地の風習などを研究していた民俗学者です。
今は沖縄に資料館を作って集めた資料を管理しています。
よそ者の順さんの資料館は近所の人には胡散臭く思われていて、腫れ物に触るように扱われています。
けれど未名子にとって順さんは恩人です。
資料館は大切な場所でした。
生まれてすぐに母が亡くなり、父と二人暮らしだった 未名子は人付き合いが苦手です。
人と話すのも苦手で中学の頃に不登校になりました。
行くところがなかった未名子に、順さんは資料館というシェルターをくれたように思いました。
資料について沢山のことを教わります。
一つ一つの情報を知るのが楽しくて、何かの役にたてばいいと希望を持てました。
それ以来、10年たった今では自分のスマートホンに資料のアーカイブを残しています。
その間、父は亡くなり、残してくれた家に一人で暮らしています。
仕事は少し変わった電話のオペレーターをしています。
それは海外の辺鄙な場所にいる外国人に、クイズを読み上げるというものでした。
【承】首里の馬 のあらすじ②
仕事場はいかがわしく見えるビルの3階にあります。
事務所は未名子が一人きりでパソコンを使って、通信相手に何問かのクイズを出すと言う内容です。
会話が限られているので落ち着いて作業ができました。
パソコンの不具合は頼める業者が決まっています。
大きなトラブルもなく対応することが出来ました。
何人かいる通信相手は皆日本語を話せます。
その中でヴァンダはコーカソイド系の男性です。
知識が豊富で流暢な日本語を話します。
ポーラは東欧系の美しい女性です。
でもあまり身なりは気にせずぼんやりした雰囲気を感じました。
ギバノは中央アジア系の男性で身だしなみはいつも整っていてスーツを着ていました。
日本語はまだなんとか覚えたと言った話し方です。
全員が共通して孤独な環境にいました。
未名子はクイズの内容や彼らとの雑談から少しずつ知識を得て、心が豊かになるのを実感しました。
仕事以外は時間のを持て余します。
家にいる時は、SDカードに資料のアーカイブを保存する作業をしました。
そんな中、沖縄特有の連続して台風が来る双子台風が近づいていました。
【転】首里の馬 のあらすじ③
台風は予定通りやってきました。
そんな時は資料館には順さんも未名子も休みです。
一つ目の台風が去った次の朝、未名子は庭に大きな生き物がうずくまっているのを見つけました。
届く範囲に水だけ置いて、仕事に出かけました。
ヴァンダは未名子を守護する存在ではないかと言います。
ギバノは羨ましがりつつ、自分の経験を教えてくれました。
生き物は仕事から帰っても庭から立ち去るようすがありません。
再び台風が近づいているので、生き物を家に入れます。
調べると宮古馬とわかりました。
過去のトラウマで警察に行くのは気が引けます。
けど飼い主が探しているかもしれず、仕方なく警察まで連れて行きました。
警察に馬を預けて四日後、順さんが入院する事になったと娘の途さんから連絡がありました。
順さんは高齢で体調が良くないことは感じていました。
未名子は静かになった資料館のあらゆる場所を撮影して行きます。
その作業の中、警察からの電話で馬は近くの自然公園に引き取られたと聞いて安心します。
短い時間に状況が変化して未名子はある決意を胸に動き出します。
【結】首里の馬 のあらすじ④
未名子の突然の訪問はパソコンの修理業者にとって迷惑です。
そのうえ未名子の仕事が気味悪かったと告げます。
データ転送の方法を聞いた後、過去に経験した体験を思い出します。
資料館や仕事の事務所は、周りから見ると得体が知れないのです。
理不尽を感じ、未名子はこれまでの知識の蓄えがかけがえのないものだと気づきました。
なぜなら、沖縄は戦争で全てが亡くなってしまった経験があり、それ以前は琉球王国が存在していたのです。
資料館の収集物もいつまでも存在し続けるとは限らないのです。
時代と共に消えてしまった資料もあります。
未名子は今こそ資料を守る決心をします。
そして、資料の存在を誰にも邪魔されない場所で保管し続ける方法を思いつきます。
SDカードに納めた資料は宇宙空間にいるヴァンダ、南極の深海にいるポーラ、戦争のど真ん中の危険地帯のシェルターにいるギバノに転送しました。
その後、未名子は迷い馬を取り戻し、ヒコーキと名付けます。
宮古馬のヒコーキの存在も資料の一つです。
そのヒコーキに乗って気になった場所を撮影します。
それも資料として残し、いつか誰かの役に立つ事を願います。
首里の馬 を読んだ読書感想
とても慎ましい印象を受ける主人公の未名子です。
中学で不登校になっても、資料館や仕事を通して知識を身につけて成長しているところは、芯が強いように感じます。
ひ弱なところがあったのかもしれませんが、実は無理なトラブルを避けて、肩の力を抜いた生き方をしているように見えます。
そんな未名子が情報の大切さに気づいて行動を起こして行くのは爽快です。
パソコン業者のところから、必要とする物を持ち帰るなど大胆な行動も許せてしまいます。
情報を残すということは、他人の秘密にも触れる時もあって、いつも喜ばれるとは限らないことを教えられます。
それでも情報を得て行く順さんのように、未名子の未來もそんなふうに重なりました。
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