著者:内館牧子 2018年に講談社から出版
すぐ死ぬんだからの主要登場人物
忍ハナ(おしはな)
本作の主人公。78歳。若々しい格好を好む元気なおばあさん。
忍岩造(おしいわぞう)
ハナの旦那。折り紙が趣味。
森薫(もりかおる)
岩造の妾
森岩太郎(もりいわたろう)
岩造と薫の息子
忍雪男(おしゆきお)
岩造とハナの息子。酒屋をついでいる。
忍由美(おしゆみ)
雪男の嫁。自称・絵描き
すぐ死ぬんだから の簡単なあらすじ
主人公の忍ハナは、78歳でありながらも、心も格好も若々しい老人でした。
そのため、街を歩くと雑誌の取材を受けることもあるほどでした。
旦那の岩造とも仲の良い夫婦でしたが、彼が亡くなったことで人生は急展開を迎えていきます。
すぐ死ぬんだから の起承転結
【起】すぐ死ぬんだから のあらすじ①
忍ハナは、78歳なのに若々しい格好に身を包み、颯爽と街を歩くような女性でした。
営んでいた酒屋を息子夫婦に譲り、夫婦水入らずで優雅に暮らしていたのです。
夫の岩造は、若々しいハナを誇りに思い、お見合い結婚ではありましたが、岩造はハナのことを愛してくれました。
また、ハナ自身も真面目で折り紙だけが趣味の岩造を愛していたのです。
しかし、ハナは自分が頑張って若々しい格好をしているからこそ、嫁の由美には苛立っていました。
何しろ彼女はいつもボロボロの服を着て、絵を描くのに必死なのです。
酒屋の仕事は息子の雪男に任せきりで、自分は2階にこもってひたすら絵を書いているのでした。
そんな嫁に嫌気が差し、もう少し綺麗な身なりをしたらどうかとアドバイスをしても、由美はなかなか受け入れてくれません。
それどころか、ハナに老化の話をしたりと反撃してくるのです。
ハナは由美に対しては苛立ちを隠せませんでしたが、優しい夫がいるからこそ、幸せな暮らしを堪能していました。
【承】すぐ死ぬんだから のあらすじ②
そんなある日、事件が起こります。
いつものようにベランダで岩造と晩酌をしていたのですが、ちょっと目を離したスキに岩造が意識を失っていたのです。
結局、病院で手術を受けましたが、あっという間に岩造は亡くなってしまいました。
最愛の夫のあっけない死に、ハナは心の整理が出来ないでいました。
いつものように、オシャレをする気持ちすら無くなっていたのです。
しかし、人前ではそんな姿を見せるわかにもいかず、ハナは気丈に振舞っていました。
そんな矢先、岩造の遺品整理をしていると、1枚の写真が出てきます。
それは、ハンサムな男の人の写真でした。
しかも、その男性はお香典返しのリストに載っていた人物と一緒だったのです。
その男性の名前は、森薫と香典リストには載っていました。
誰も知らない名前と顔にハナたちは困惑します。
すると、ゆかりのない土地の整形外科クリニックの診察券も出てきました。
そこで、森薫とは折り紙関係の人ではないだろうし、クリニックの先生ではないかとみんなは思うようになりました。
【転】すぐ死ぬんだから のあらすじ③
ハナは1人で、診察券のある整形外科クリニックに向かいましたが、先生は森薫ではありませんでした。
そこで追及することを辞めたハナでしたが、家に帰ると息子の雪男が遺言書を持ってきます。
なんと、岩造は遺言書を残していたのでした。
そして、そこには岩造が大切にしてきた掛け軸を息子の森岩太郎に譲ると書かれていたのです。
その中で分かったことは、森薫は男ではなく、岩造の妾だということでした。
そして、岩造と薫の間に生まれた息子が、写真のハンサムな男性・岩太郎だったのです。
ハナはショックを隠しきれませんでしたが、掛け軸を妾の薫のもとに送ります。
しかし、息子の岩太郎がその掛け軸を貰えないと、わざわざ自宅まで返しにきたのです。
困ってしまったハナは、息子の雪男と共に、後日、薫が経営するクリニックに掛け軸を持っていくことにしました。
薫は若作りはしていないものの、ハナよりは若く、清潔な印象のおしとやかな女性でした。
そして、岩造との馴れ初めを聞き、そのまま掛け軸を押し付けて家に帰ったのでした。
【結】すぐ死ぬんだから のあらすじ④
妾との掛け軸問題もなんとか終わり、ハナは疲れきっていました。
何しろ40年以上、岩造に騙されて夫婦生活を続けてきてしまったのです。
ハナは岩造と同じ墓に入ることなんて考えられず、死後離婚のことを真剣に考えるようにもなっていました。
そんな時に、岩太郎から2人で会えないかと相談されます。
実は岩太郎は、一級建築士でありながらも、自分の将来に迷っていて、ハナに背中を押したもらいたがっていたのでした。
ハナは今まで薫に対しても岩太郎に対しても、ムカつく気持ちしか起こっていませんでしたが、2人の親子の絆を次第に認められるようになっていました。
その後は、薫までもハナに会いにきて、2人で話をしたりもしていました。
そして、ハナは残りの人生の生き方について模索するようになります。
何を生きがいにしようか考えていた時に思いついたのが、酒屋での角打ちでした。
お酒を出しながら、お客さんとお話をしたりするのです。
そこには画廊を作ることにもなり、嫁の由美もいつになく歓迎してくれました。
そうして、ハナはこれからの人生を生きがいを見つけたのでした。
すぐ死ぬんだから を読んだ読書感想
とにかく内館牧子さんの文体が面白く、読んでいて勇気がもらえるような作品でした。
何歳からでも人生は楽しめると、高齢者に元気をもたらしてくれる本だと思います。
また、長年、愛し合ってきた夫婦でも、分からないことはあるんだなと気づかせてくれた作品でもあります。
それでもハナは、最終的に妾や妾の息子の存在を受け入れて、認めてあげられるようになったのは凄いと思います。
いつも皮肉めいた言葉を発しているけど、とても優しく思いやりのある女性なのではないかとも思わせてくれました。
登場人物たちの心情も、みんなそれぞれで面白かったので、幅広い年代の人たちに読んでもらいたいです。
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