著者:高校事変Ⅷ 2020年8月にKADOKAWAから出版
高校事変Ⅷの主要登場人物
優莉結衣(ゆうりゆい)
17歳、高校3年生。テロ事件を起こして死刑となった半グレ集団のボス優莉匡太の次女。幼いころからテロ集団に育てられ、武器の知識と戦闘能力を持つ。
優莉凜香(ゆうりりんか)
中学3年生。優莉匡太の四女。結衣ほどではないが、かなりの先頭能力を持つ。
優莉詠美(ゆうりえみ)
優莉匡太の三女。やさしい性質の女の子で、暴行虐待により死亡したと思われている。享年7歳。結衣のふたつ年下だった。
澤岻篤志(たくしあつし)
21歳。優莉匡太の次男。非常に太ってはいるが、抜群の戦闘能力を持つ。
田代勇次(たしろゆうじ)
17歳。一家そろってベトナムから帰化。バドミントン選手として有名になった。旧名、グエン・ヴァン・チェット。
高校事変Ⅷ の簡単なあらすじ
結衣をなんとしても殺そうとする田代槇人は、彼女の首に巨額の懸賞金をかけました。
たちまち結衣を殺そうと群がってくる半グレたち。
しかし、その裏で、結衣を確実に抹殺するために、とんでもない計画が進行していたのです。
それは、結衣と、彼女を狙う半グレたちともども、核爆弾で吹き飛ばそうとするものでした。
結衣は一計を案じます……。
高校事変Ⅷ の起承転結
【起】高校事変Ⅷ のあらすじ①
結衣は泉が丘高校に復学し、三年生になりました。
もう少しで18歳です。
そんなとき、次男の篤志から、田代ファミリーが、結衣の首に懸賞金をかけたことを知らされます。
そのまま殺せば約6億円、凌辱して殺せば約12億円だといいます。
今夜午前0時がスタートです。
結衣が児童養護施設に帰って夕食を食べようとすると、毒が盛られていました。
まだ6時過ぎですが、検死時間の誤差を利用して、早くも刺客が動き出したのです。
犯人の食事係を殺した結衣は、迷惑をかけないために、外へ飛び出しました。
そのとき、同じ高校の生徒の米谷智幸が行方不明というグループラインが入り、結衣は、甲子園事件でいっしょだった山海鈴花を訪ねます。
そこへ、元担任の普久山もやって来ました。
さまざまのデータから、新任の化学教師の伊賀原が核爆弾を製造し、それを化学の得意な生徒、米谷のいたずらに見せかけたのだとわかりました。
核爆弾は結衣を確実に殺すためのものです。
行方不明の米谷は、伊賀原が拉致したと思われました。
結衣は、米谷を探すため、普久山とともに、伊賀原のマンションへ行きます。
結衣たちが入室すると、トラップが働いて、有毒ガスが噴き出し、爆発が起こりました。
からくも難を逃れた結衣は、普久山に麻酔薬を注射して眠らせました。
単身捜査を続ける結衣に、妹の凜香と、清墨学園事件で恋人を結衣に殺されたパク・ヨンジュが加わります。
三人は、懸賞金目当てに結衣を殺そうとする半グレたちを集合させ、先に核爆弾を探させようと計画するのでした。
【承】高校事変Ⅷ のあらすじ②
結衣、凜香、ヨンジュの三人は、結衣を殺そうとする半グレ全員を呼び寄せ、説明しました。
伊賀原が核爆弾を用意したこと、田代ファミリーは財政難のため、人員削減の目的もあって、結衣ともども半グレ達を始末しようとしていること、などです。
結衣は皆に、一致協力して、核爆弾と、行方不明の米谷を探すように指示します。
その代わり、午前0時には、結衣がタイマンを張る、としました。
その後、ベトナム人ファミリーの紹介で、料理店に身を寄せた三人のもとに、田代美代子がやってきます。
美代子は、死んだと思われていた結衣の妹の詠美が、まだ生きていて、田代ファミリーの収容所に囚われていると教えます。
やがて、石掛工業高校に不審な物が搬入されたという情報が入ってきました。
結衣たちが高校へ行くと、すでに半グレたちが校内に忍び込んで、核爆弾を探し回っていました。
結衣が入っていくと、田代美代子にそそのかされた半グレの一部が、結衣を殺そうと向かってきます。
午前0時までは結衣を殺させまいとするグループと、二手に分かれて、戦いが始まりました。
戦いから逃れた結衣が、地下へ行くと、拉致された米谷と核爆弾が見つかりました。
テレビがついて、伊賀原が現れます。
田代槇人も姿を現します。
証拠として、結衣はテレビ画面をスマホに録画しました。
伊賀原は、0時15分までに結衣を殺せば、核を爆発させないと、半グレたちをけしかけます。
しかし、もはや彼らは伊賀原も田代も信用しません。
結衣はスタンガンを使って、爆弾の起爆装置を破壊し、核爆発を防いだのでした。
【転】高校事変Ⅷ のあらすじ③
結衣たちが別の場所に移り、身支度を整えているとき、結衣らしき少女が保護された、というテレビニュースが入りました。
それは、結衣の双子の姉の智沙子でした。
未明、仲間と別れた結衣が、理恵・奈々美(第2巻で結衣が助けた姉妹)のアパートに転がり込むと、彼女たちに警察からメールが入りました。
今日の午後、警察が、検察審査会へ、公開で代理申し立てをするというのです。
結衣にそっくりの智沙子が保護されて、彼女を使ったこれまでの結衣のアリバイが崩れたと思い、警察が強気になったのです。
午後になって、結衣は、東京高等地方簡易裁判所合同庁舎へ出向きました。
マスコミも大勢来ています。
人権派団体の宮園弁護士がやってきました。
警視庁生活安全課少年事件係の課長と係長が書類を提出し、結衣を恫喝して、プレッシャーをかけます。
とりあえず保護という名の拘留は避けられました。
庁舎を出て、地下鉄へ向かう途中、武蔵小杉高校事変(第1巻)とチュオニアン(第2巻)で一緒だった啻山里緒子が待っていました。
今日の午後、田代勇次のファンミーティングが開かれ、真向定華と吉崎紗紀が参加しようとしているので、助けてほしい、と言うのです。
定華のスマホの位置情報をもとに、結衣は代々木公園へ向かいました。
ファンの女たちと三台のバスが停まっています。
バスの仮眠室にもぐりこむと、着いたのは横浜埠頭でした。
フェリーが停まっています。
単にファンミーティングだけではなく、田代ファミリーを乗せて、日本を脱出する腹積もりのようです。
結衣は女たちにまぎれて、フェリーに乗りこみました。
船内の大広間で、集まったファンを前に、勇次が挨拶します。
しかし、武蔵小杉高校にいた女性教師の敷島和美がまぎれ込んでいて、勇次の正体をバラしました。
わめく女たちふたりを勇次は撃ち殺します。
そして部下に、残りの女を皆殺しにするように言いつけて、広間を後にしました。
【結】高校事変Ⅷ のあらすじ④
結衣は勇次と遭遇し、戦いますが、劣勢となり、吹き抜けロビーに落ちてしまいました。
そこへ麻薬中毒のパンクたちが襲ってきて、つかまります。
が、そのとき、貨物船がフェリーに衝突してきて、篤志と凜香、ヨンジュ、宇都宮で別れた半グレたちが、乗りこんできました。
田代側と、反田代側とで、激しい銃撃戦が繰り広げられます。
詠美を探していた結衣は、大広間に入りました。
ファンの女たちのなかに田代美代子が入り、定華を人質に取ります。
しかし、皆の協力があって、美代子を殺し、定華を助けることができました。
結衣は、死ぬ間際の勇次の配下から、詠美の手がかりを得ます。
次に乗り込んだ先は、田代槇人の部屋でした。
詠美の居所を知りたければ服を脱げ、と命じられた結衣は、その通りにします。
そして、欲情して油断した槇人を殺したのでした。
結衣は、船内を必死に探し、ついにひとりの少女を見つけました。
それは詠美ではなく、同じく死んだと思われていた五女の弘子だったのです。
結衣は弘子を連れてフェリーを脱出し、貨物船に乗り移りました。
その直後、仕掛けた爆薬によってフェリーは炎上し、沈没していきました。
陸地に帰ると、結衣は弘子を実母のもとへ送っていきました。
やがて、検察審査会の審査結果が言い渡される日が来ました。
結果は不起訴相当となりました。
実は、宮園弁護士が、結衣のアリバイが確実な別の事件のものと、書類をすり替えていたのです。
後日、登校する結衣のもとへ、刑事がやってきますが、結衣は軽くいなします。
そして、道端の花を摘んでやさしく微笑んでいた幼い詠美のことを思い出すのでした。
高校事変Ⅷ を読んだ読書感想
今回の話は前半と後半のふたつに分けられます。
前半では、懸賞金のかかった結衣が狙われ、核爆弾まで用意されます。
後半では、日本を脱出しようとする田代ファミリーを追う展開です。
そして、前半と後半のそれぞれで、読者の興味を引くためのしかけがいくつも用意されています。
前半では、「結衣は賞金稼ぎたちの手から逃れられるのか?」「核爆発を阻止できるのか?」「行方不明の高校生を助けられるのか?」といったところです。
後半では「拉致された田代勇次ファンの女たちを救えるのか?」「死んだと思った詠美は生きているのか? また生きているとすれば、救出できるのか?」「田代ファミリーを抹殺できるのか?」「検察審査会で結衣は起訴されるのか?」といったところです。
このように、さまざまの引きつける要因が用意されていることで、次から次へとページをめくらざるをえない造りになっているのです。
抜群のエンターティンメント小説です。
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