イングランド・イングランド(ジュリアン・バーンズ)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

イングランド・イングランド

【ネタバレ有り】イングランド・イングランド のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:ジュリアン・バーンズ 2006年12月に東京創元社から出版

イングランド・イングランドの主要登場人物

マーサ・コクラン(まーさ・こくらん)
ジグソーパズルが大好き。ワイト島開発のコンサルタントに抜擢される。

ジェシカ・ジェームズ(じぇしか・じぇーむず)
マーサの幼少期のお友達。友情よりも恋を選ぶ。

サー・ジャック・ピットマン(さー・じゃっく・ぴっとまん)
世界的な大富豪。

ポール・ハリソン(ぽーる・はりそん)
サー・ジャックの忠実な部下。「アイデア・キャッチャー」の異名を持つ。

イングランド・イングランド の簡単なあらすじ

幼い頃からジグソーパズルに熱中してきたマーサ・コクランは、前代未聞のプロジェクト「イングランド・イングランド」に参加することになりました。ワイト島をイングランドのレプリカへと作り変えていくうちに、人々は本土のことを忘れていくのでした。

イングランド・イングランド の起承転結

【起】イングランド・イングランド のあらすじ①

未完成のパズル

マーサ・コクランは子供の頃からジグソーパズルに熱中する、ちょっぴり内向的の女の子でした。

結婚した後でも異性関係の派手なマーサの父親と、神経過敏症の母親との仲は当然ながら上手くいっていません。

マーサは数少ない友人のジェシカ・ジェームズに想いを寄せていた男の子を横取りされてからは、ますますパズルにのめり込むようになっていきます。

中でも1番のお気に入りの作品は、イングランド全体の地図をモデルにしたジグソーパズルです。

父がノッティンガム州のピースを持ったまま家を出て行ったしまったために、何時までも完成することはありません。

時が流れて25歳を過ぎた今でも、マーサは父と再会して最後のピースを嵌め込むことを望んでいるのでした。

【承】イングランド・イングランド のあらすじ②

巨大なプロジェクトの始動

サー・ジャック・ピットマンは1代にして巨万の富と権力を手中に収めた大富豪でしたが、ワンマン経営者で誇大妄想気味な性格が玉に瑕です。

近頃ではこれまでの人生を「神」になぞらえていて、自分だけの世界を創り上げることに憑りつかれています。

そんなサー・ジャックが発案したのは、ハンプシャー州の南方に位置するイギリス海峡にぽっかりと浮かんでいる小さな島・ワイト島全域をイングランドのレプリカ型テーマパークへと改造してしまう途方もないプロジェクトでした。

完成までには莫大な人件費と資材費が見込まれますが、サー・ジャックは金に糸目を付けません。

コンサルタントとして雇われたマーサは、図らずも巨大な陰謀へと巻き込まれていくのでした。

【転】イングランド・イングランド のあらすじ③

忘れられた大英帝国

ロンドン塔やウエストミンスター寺院に代表されるような、歴史的価値のある建造物のワイト島への移設工事が完了しました。

ビッグベンやハロッズを始めとする観光スポットや商業施設も忠実に再現されているために、物見高い旅行客が押し寄せていきます。

流行に流されやすいマスコミや大企業は、次から次へと本拠地を移転する始末です。

遂には聖域であるはずのバッキンガム宮殿までが、国王夫妻と共に海を渡ってワイト島へと辿り着きました。

ワイト島が「イングランド・イングランド」と名前を変えて賑わっていく一方で、かつては大英帝国として讃えられていた本土は「オールド・イングランド」とまで揶揄されるようになり以前の栄華は見る影もありません。

【結】イングランド・イングランド のあらすじ④

全てを失ったマーサが見たもの

傲慢なボスの下で働くことにうんざりしていたマーサは、サー・ジャックの年若い部下・ポール・ハリソンと結託して最高経営責任者の地位を奪い取りました。

何時しかマーサとポールはビジネスパートナー以上の関係になっていましたが、ふたりの恋愛は長続きしません。

そればかりかポールが失脚したはずのサー・ジャックに寝返り、権力闘争に破れ去ったマーサはワイト島を脱出して世界各地を放浪することになります。

数10年後にオールド・イングランドを訪れたマーサが目撃したのは、ありとあらゆるテクノロジーを放棄して各国との国交を断絶した田園風景です。

地元の人たちが開催する村祭りに参加したマーサは、本物のイングランドで生きることを誓うのでした。

イングランド・イングランド を読んだ読書感想

グレート・ブリテンの南方海域にへばりつく小島に自分だけの王国を創り上げていく、大富豪にして独裁者のような威圧感があるサー・ジャック・ピットマンの姿には鬼気迫るものがありました。

後から完成された偽物の方が本物を超えて人気を集めている様子が、皮肉たっぷりとした味わいです。

イングランドを代表するミュージシャン・スティングの大ヒット曲「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」の中に歌われている、「今の時代は虚飾のキャンドルが真実の太陽よりも光り輝く」というフレーズを思い浮かべてしまいます。

ブランド品の模造品やレプリカの絵画などの、人間の虚栄心を満たす代替行為への痛烈な批判やメッセージが込められていました。

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