著者:レイフ・GW・ペーション 2020年1月に東京創元社から出版
見習い警官殺しの主要登場人物
エーヴェルト・ベックストレーム(えーヴぇると・べっくすとれーむ)
国家犯罪捜査局殺人捜査特別班の警部。リンダ事件の指揮官。
ヤン・レヴィン(やん・れヴぃん)
国家犯罪捜査局殺人捜査特別班の警部。
リンダ・ヴァッリン(りんだ・ヴぁっりん)
殺害された警察学校の学生。
ラーシュ・マッティン・ヨハンソン(らーしゅ・まってぃん・よはんそん)
元公安警察の実行部隊責任者。
見習い警官殺し の簡単なあらすじ
ベックストレームは、国家犯罪捜査局殺人捜査特別班の警部でありながら、楽して仕事をすることばかり考えているうえ、差別意識も強いダメ人間です。
そんな彼に、警察学校の生徒が殺害された事件の捜査を指揮するようお鉢が回ってきたのです。
ベックストレームは同僚や部下を引き連れて、事件の起きたヴェクシェーへと向かいます。
こうして警察の威信をかけた捜査が始まるのですが、捜査チームを苦しめたのが、ベックストレームの浅薄愚劣(せんぱくぐれつ)の捜査指揮でした。
見習い警官殺し の起承転結
【起】見習い警官殺し のあらすじ①
スウェーデンのヴェクシェーという街で強姦殺人事件が発生しました。
被害者はマンションの一室で首を絞められて殺害されており、13の切り傷がありました。
被害者はリンダといい、警察学校の学生でした。
時期が悪いことに、世間は夏期休暇の真っ最中でヴェクシェー警察署も人員を欠いていました。
そこでヴェクシェー警察署は、国家犯罪捜査局に応援を依頼したのです。
そうして派遣されたのがベックストレーム率いる捜査チームです。
ベックストレームはビールを飲むことと、楽して仕事をすることが大好きな警部で、性格にも難ありという人物です。
本来なら、とても捜査の指揮を任せられるような男ではないのですが、国家犯罪捜査局の長官がじきじきに任命してしまったのです。
幸いにも、犯行現場には犯人のDNAが残っていました。
そこでベックストレームは、事件当日の被害者の行動を洗いつつ、関係者のDNAを集めるように命じます。
ベックストレームは仕事もそこそこにホテルに引きこもってはビールを飲み、さらに地元のラジオ局の記者カーリンと親密な関係を築こうとするなど、仕事以外のことに精を出すのでした。
【承】見習い警官殺し のあらすじ②
ベックストレームが指揮する捜査は停滞が続きました。
殺される前にリンダがいたクラブで、彼女と話をした人物を調べても、彼女と同じマンションの住人を調べても、犯人のDNAと一致する人物が見つかりません。
ベックストレームは、リンダが警察官の卵だったことから、犯人は警察関係者ではないかと疑い、ヴェクシェー警察署で過去に問題を起こした警官や、リンダのクラスメートのDNAを集めるように命じます。
DNAが次々提出されましたが、リンダのクラスメートで、リンダと同じクラブにいたレーフグリエンという若者からDNAを採取することに難航していました。
彼は夏期休暇を利用して両親とバカンスを楽しんでいるのでした。
しびれを切らしたベックストレームは、部下をレーフグリエンの元へ向かわせました。
レーフグリエンは警官が訪ねにきたことを知ると、その場から逃走しました。
しかし、後日レーフグリエンは弁護士を伴ってヴェクシェー警察署を訪れました。
そこでようやくレーフグリエンにはアリバイがあることがわかります。
彼は、ヴェクシェー警察署のアンナ・サンドベリィの不倫相手で、事件が起こったときは彼女と一緒にいたのです。
こうして、光明が見えたかと思われた捜査は振り出しに戻ったのです。
【転】見習い警官殺し のあらすじ③
その後も、過去にDVで何度も逮捕された男が捜査線上に浮上しますが、彼のDNAも不一致でした。
捜査の合間に、ベックストレームは記者のカーリンと何度も会っていました。
ベックストレームは二人の仲は十分深まったと思い、彼女をホテルの部屋に誘い、彼女の前で裸になったのです。
それを見たカーリンは激しい不快感を露わにします。
彼女は事件についての情報を得たかっただけで、まったくその気はなかったのです。
カーリンはそのまま逃げ帰り、翌日、彼女の友人がベックストレームに対する告訴状を提出しました。
一方で、国家犯罪捜査局の長官がホテルで銃をぶっ放し、精神科病院に入れられる事態が発生していました。
長官のポストに新たに座ったのが”角の向こう側を見通せる男”ヨハンソンでした。
彼はすぐさまリンダ事件の資料に目を通し、この程度の事件に何を手間取っているのかと訝ります。
さらに、ベックストレームが経費を不正に計上していることもわかったため、ヨハンソンはヴェクシェー署に電話をかけます。
そこでベックストレームに対する告発状についても知るのでした。
ヨハンソンはすぐさまベックストレームをストックホルムに戻れと命令を出し、代わりにアンナ・ホルトとリサ・マッテイという二人の優秀な捜査官を向かわせました。
ですが、彼女たちがヴェクシェーに到着したときに待っていたのは、犯人がすでに逮捕されたという知らせでした。
【結】見習い警官殺し のあらすじ④
犯人を突き止めたのはベックストレームのチームのヤン・レヴィンでした。
彼はベックストレームの捜査に納得がいかず、独自の調査を進めていたのです。
殺人のあとに、自動車の盗難事件が発生しており、見つかった盗難車の中から殺人犯のDNAが発見されました。
車の盗難には目撃者がいたのですが、その人は92歳のおばあちゃんで、ベックストレームは証言の信憑性なしを判断していたのです。
しかし、ヤン・レヴィンは彼女の証言を信じて、犯人の人相を作成します。
そして、市の文化芸術振興課に勤めるベングト・アクセル・モーンソンという男が、有力な容疑者だと突き止めたのです。
モーンソンのDNAが犯人のものと一致したことが決め手となり、彼は逮捕されたのです。
モーンソンはかなりの漁色家で、さまざまな女性に手を出していました。
リンダとは、彼女の母親を通じて知り合ったのです。
ベックストレームはストックホルムへと戻され、犯人の取り調べはアンナ・ホルトとリサ・マッテイが中心となって行いました。
裁判の結果、モーンソンは精神障害を負っていると判断され、閉鎖病棟に隔離されることが決まりました。
事件は終結しましたが、数々の問題を起こしたベックストレームは、ヨハンソンから異動を命じられるのでした。
見習い警官殺し を読んだ読書感想
警察小説なんですが、これまでに読んだことがないタイプでした。
主人公はベックストレームなのですが、同時に捜査の一番の敵もベックストレームという調子で、かなりカオスなストーリーになっています。
ヨハンソンは2018年に刊行された「許されざる者」の主人公なので、彼が登場したときにはようやく事件が解決の方向に向かうと思いました。
そのため、彼の部下が現場に向かったときに事件が解決していたことには驚きました。
ヤン・レヴィンは、他の警官よりも優秀そうな描写があったのですが、ベックストレームと面と向かって立ち向かうことはなかったので、あまり活躍しそうな気配がなかったのです。
そのヤンが密かに捜査を進めて、犯人に繋がる手がかりをつかんだのです。
そのあとベックストレームが手柄を意地でも自分のものにしようとしたところには笑いましたが。
ベックストレームの暴走を面白おかしく感じる人には、ハマる作品になるでしょう。
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