著者:原田マハ 2010年11月に宝島社から出版
ランウェイ・ビートの主要登場人物
溝呂木美糸(みぞろぎびいと)
高校1年生。愛称はビート。将来の夢はデザイナー。
犬田悟(いぬださとる)
転校して早々のビートと仲良くなる。愛称はワンダ。特技はパソコン。
立花美姫(たちばなみき)
クラスの女王様。幼少期から雑誌モデルとして活躍。
溝呂木羅糸(みぞろぎらいと)
ビートの父。アパレル大手の企画部長。
溝呂木善服(みぞろぎぜんぷく)
ビートの祖父。 甲府駅前の商店街で洋裁店を営む。
ランウェイ・ビート の簡単なあらすじ
高校生の溝呂木美糸(ビート)は転校先の学校を守るために、クラスメートと力を合わせて学園祭でファッションショーを開催しました。
ビートがデザインした衣装はプロとして認められて、オリジナルブランド「ランウェイ・ビート」が本格的に始動します。
パリコレ経験者から海外留学をすすめられたビートですが、仲間たちとの友情を選ぶのでした。
ランウェイ・ビート の起承転結
【起】ランウェイ・ビート のあらすじ①
青々山学園に転校してきた「ビート」こと溝呂木美糸は、山梨県甲府市で小さな洋裁店をやっている祖父・善服の影響でファッションにはうるさいです。
クラスでもパッとしない風貌で「ワンダ」とからかわれていた犬田悟を、あっという間におしゃれな人気者に変身させてしまいました。
モデル業が忙しくて出席日数が進級ギリギリだった立花美姫も、ビートに会いたいがために頻繁に登校してきます。
9月の全国集会で突如として校長から廃校が発表された時に、ビートは美姫とワンダに取って置きのアイデアを打ち明けました。
前々からの財政難のために校長は開発業者に土地を売却するつもりで、学校を存続させるためには目立つイベントを開催してマスコミを味方につけなければなりません。
ビートがデザイナー、パソコンが得意なワンダがデザインをもとに衣装の型紙を作るパターン・メーカー、知名度の高い美姫はモデルと広報担当。
学園祭当日に開催されたファッションショーによって、校舎の長い廊下はランウェイ(花道)となりました。
【承】ランウェイ・ビート のあらすじ②
ビートたちのショーによって開発業者への批判が高まり、さらには青々山学園に匿名で巨額の寄付が届いたために廃校中止が決定しました。
ビートがデザインした衣装は業界関係者のあいだでも一躍評判となり、メーカーが何社かコンタクトしてきます。
代官山に小さなオフィスを構えるミナミ・ミナモもそのうちのひとりで、アパレル会社・スタイルジャパンで企画部長をしているビートの父親・羅糸とも知り合いです。
ミナモとビートが羅糸の会社で立ち上げた新ブランド名は、ワンダの提案によって「ランウェイ・ビート」と名付けられました。
スタイルジャパンはつい最近になって主力のデザイナーたちが次々と退職ていて、倒産寸前にまで追い込まれています。
ライバル社のワールドモードは業界最大手で、社長の安良岡覧は大金を積んでデザイナーを引き抜くなど手段を選びません。
ワールドモードの新しいイメージキャラクターには、本人の意志に反して結ばれた契約によって立花美姫が起用されていました。
【転】ランウェイ・ビート のあらすじ③
安良岡社長と事務所によってがんじがらめになっている美姫を取り返すためには、ワールドモードが満を持して送る「東京コレクション」に対抗するしかありません。
スタイルジャパンはたたでさえ予算が不足している上に、渋谷、原宿、代官山、恵比寿周辺のイベントホールはすべて安良岡に先回りされてしまいました。
ただひとつビートたちが確保できたのは渋谷駅前にある廃ビル「サクラビル」の屋上で、日本人として初めてパリコレに参加した伝説的なデザイナー・笹倉散華がオーナーをしています。
溝呂木善服とは長年の付き合いがあり、学校が廃校の危機に立たされた時に巨額の寄付をしてくれたのも彼女です。
東京コレクション当日、ビルの屋上の中心を貫いて作られたランウェイの上を美姫が笑顔で歩いています。
まったくの無名のブランドショーに人気のモデルが出演してことも然ることながら、デザイナーが16歳の高校生だという事実は瞬く間に話題となりました。
楽屋を訪れた安良岡は潔く負けを認めて、これからは正々堂々とお互いのブランドで闘うことを約束します。
【結】ランウェイ・ビート のあらすじ④
青々山学園の卒業式は長い試験休みが終わった後の毎年3月の第3週に行われていて、ビートたち1年生も3年生を見送るために登校するのがこの学校のしきたりでした。
東京コレクション以来顔を合わせていなかった美姫やワンダは久しぶりにクラスに集まりましたが、ビートの姿だけがそこにはありません。
始業時間になって教室に入ってきた担任の先生は、生徒たちにビートの引っ越しが決まったことを報告します。
笹倉散華はいま現在ではベルギーのアントワープにあるデザイン学校の理事長を務めていて、ビートの留学を学校側に申し入れてきたからです。
JR新宿駅のホームで電車を待っているというメールを受け取った、ランウェイ・ビートの仲間たちは教室を飛び出します。
ビートが乗ったのは成田空港行きの電車ではなくて、善服が経営する「テーラーみぞろぎ」のある甲府行きの電車です。
留学の話を断ったビートは祖父のもとで裁縫の勉強をしながら、新学期からは引っ越し先の甲府から青々山学園に通学するのでした。
ランウェイ・ビート を読んだ読書感想
ありきたりな学園生活を送っていたごく普通の高校生たちの日常が、風変わりな転校生の登場によって動き始めていくドラマチックな物語です。
引っ込み思案だった「ワンダ」こと犬田悟のたくましく成長していく様子や、モデルとしてのキャリアよりも大切なものに気が付いていく立花美姫の内面が繊細なタッチから描かれています。
頑固で昔かたぎな服職人の溝呂木善服、アパレル業界の荒波に悪戦苦闘しているビジネスマンらしい羅糸、天衣無縫な性格と無限の可能性を秘めている美糸。
それぞれの目指している場所はバラバラながらも、3世代に脈々と受け継がれている確かな服作りへの愛情が伝わってきました。
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