【ネタバレ有り】ベルリンで追われる男 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:マックス・アンナス 2019年9月に東京創元社から出版
ベルリンで追われる男の主要登場人物
コージョ・アヴジ(こーじょ・あヴじ)
ガーナ出身のベルリン不法残留者。殺人を目撃する。
マリー(まりー)
カフェ《ハイビスカス》の従業員。コージョに思いを寄せる。
ジャネッテ(じゃねって)
コージョの愛人。コージョとの仲が冷めてきたと感じている。
ドゥニヤ・L(どぅにや・える)
殺された売春婦。
フランク・ミヒャエル・ホルツマッハー(ふらんく・みひゃえる・ほるつまっはー)
ホバベ社の取締役の息子。
ベルリンで追われる男 の簡単なあらすじ
不法残留者のコージョはある晩、ねぐらにしているビルから向かいのマンションの部屋で起きた殺人を目撃します。
現場の様子を見に行こうとしたコージョは犯人らしき男を目撃します。
しかし、マンションの住人がコージョの姿を見たことで、警察は彼を容疑者として探し回ります。
コージョは不法残留者であるため、警察に見つかれば国外へ強制退去させられる身で、自分が目撃した人物のことを警察に言うことはできません。
コージョは仲間の助力を得ながら、自分が目撃した男を探し回ることを決意します。
コージョはどんどん犯人に近づいていきますが、犯人もコージョの接近に気づきます。
その結果、コージョは窮地に陥ることになるのでした。
ベルリンで追われる男 の起承転結
【起】ベルリンで追われる男 のあらすじ①
コージョはガーナ出身の移民ですが、正式な滞在許可証を持たない不法残留者です。
一度警察に捕まれば国外への強制退去は免れません。
彼は普段、カフェ《ハイビスカス》で働いていて、そこの同僚であるマリーとは付き合ってはいないけれど、何度かデートをしたことがある仲です。
コージョは愛人のジャネットと暮らしていましたが、彼女が別の男を家に呼んでいたので、しばらく空きビルの一室で寝泊まりをする日々を過ごしていました。
コージョのいる部屋からは向かいのマンションに暮らす売春婦の部屋がよく見えました。
ある晩、コージョは売春婦が客に殺される瞬間を目撃します。
彼は女の様子を見るために、向かいのマンションに向かいますが、その出入口で男とぶつかります。
男は顔を背けて一目散に車に乗り込みました。
怪しいと思ったコージョは、携帯電話で男の車を撮影しました。
ナンバープレートはうまく取れませんでしたが、スポーツタイプのメルセデスで、トランクの部分にステッカーが貼られていることはわかりました。
コージョはマンションの中に入り、女の部屋を開けようとしますが、鍵がかかっていて中に入ることができませんでした。
その帰り、コージョはマンションの住人に姿を目撃されてしまいます。
【承】ベルリンで追われる男 のあらすじ②
コージョは不法残留者であるため、自分から警察に情報を提供できないことを思い悩みます。
またマンションの住人に姿を見られたことも気がかりでしたが、極力気にしないようにしていました。
ところが後日、ラジオで警察が自分を探しているという情報を耳にして衝撃を受けます。
コージョは何か行動を起こさないと事態は好転しないと思い、犯人の正体を探ろうとします。
まず、ダンサーで絵描きもしているイサに協力してもらい、自分が見た男の顔を描いてもらいました。
次に、マリーの友人でWebデザイン関係の代理店に勤めているアンナを頼って、携帯電話の写真を解析してもらい、バックミラーにテニスラケットのミニチュアがぶら下がり、ステッカーに”BB建設”と書かれていたことを突き止めます。
コージョはBB建設が入っているビルに侵入します。
そこには人がほとんどおらず、オフィスをたたんでいる最中のようでした。
そこでキャビネットから、ベルリンの開発・環境大臣から送られてきた封筒を見つけますが、警備員に発見され暴行を受けてしまいます。
ビルを追い出されたコージョは、変装して再びビルに舞い戻ります。
警備員が大量の資料をワゴン車に積んでいるところを目撃し、コージョはそのワゴン車を奪って逃走するのでした。
資料にはホバベ社という会社の請求書や明細がたくさん含まれていました。
アンナはBB建設とホバベ社の重役のリストを作成します。
コージョはそのリストとワゴン車の中にあったメモから、テラス通り80番地に住むホルツマッハーの家の偵察に行きます。
家を眺めていたコージョの前に、事件の夜に見たメルセデスがやってきます。
車はホルツマッハーの屋敷の前に止まり、男が家の中へと入っていきました。
コージョはその男が、殺人があったマンションから出てきた人間だと気づきます。
彼はついに犯人を見つけたのでした。
【転】ベルリンで追われる男 のあらすじ③
犯人はホルツマッハーだったのです。
犯人を見つけて喜ぶコージョでしたが、その帰り道、電車に乗っていたコージョは自分がある男にじっと見られていることに気づきます。
また、コージョは行く先々で謎の大男の姿を目撃するようになりました。
コージョは自分がつけられていることを悟ります。
そう、ホルツマッハーもコージョの接近に気づいていたのです。
彼は部下たちを使い、コージョを捕えようとします。
一方、コージョはジャネッテにつれない態度をとり続けた結果、彼女から提供されていたアパートから追い出されてしまいます。
コージョは荷物をまとめると、殺人を目撃したときの空きビルに身を潜めます。
追っ手をまいたと思っていたコージョですが、ホルツマッハーの手下たちはその場所を突き止めて襲撃しました。
間一髪のところで逃れたコージョですが、殺人の夜に姿を見られた住人に再び見つかってしまいました。
そこから騒ぎになり、せっかくまいたはずのホルツマッハーの手下たちに気づかれてコージョの逃走が始まります。
コージョは追っ手を振り切り、地下鉄に乗り込みますが、そこで検札係から切符の提示を求められました。
コージョは切符を持たずに電車に乗っていたため、駅に到着したタイミングで検札係を突き飛ばし、逃げ出してしまいます。
【結】ベルリンで追われる男 のあらすじ④
ホルツマッハーの部下、検札係、警察、今やコージョにはたくさんの追手ができていました。
ホルツマッハー自身もコージョを追っています。
コージョは物陰に身を隠しつつ逃げ続けます。
ハーゼンハイデ公園内に逃げ込み、身を隠そうとしますが、ホルツマッハーの部下たちは公園内にやってきて、警察が出入り口を封鎖します。
コージョは助けを求めてマリーに連絡します。
コージョは、マリーとアンナが住むアパートに逃げ込むことにしますが、まずは公園から脱出しなければなりません。
コージョは、マリーから抜け道を教えてもらい公園から脱出しますが、その姿をホルツマッハーに見られてしまいます。
一方、マリーはコージョを迎えに行きます。
あと少しのところでアパートに到着するコージョ。
逃げ切れたと思いましたが、ホルツマッハーたちに捕まってしまいました。
抵抗するコージョ、息の根を止めようとするホルツマッハー、彼らは必死の殴り合いをします。
二人はそのままもみ合うようにして車道に飛び出してしまいます。
二人の前にはバスが迫っていました。
マリーはコージョのすぐそばまで来ており、その光景を目撃します。
彼女は車道に飛び出てバスの前に手を広げて、コージョの盾になろうとします。
しかし、無情にもマリーの身体はバスの下へと消え、コージョとホルツマッハーもバスに轢かれて死亡するのでした。
ベルリンで追われる男 を読んだ読書感想
主人公と悪党がバスに轢かれて一緒に死ぬというのは驚きのラストでした。
コージョは必死に戦ったにもかかわらず、このような結末になるのは残酷ともいえるでしょう。
しかし、この小説はドイツにいるアフリカ系移民の厳しい現実を反映した作品のように思えます。
作中では、コージョを追う警察は人間の温かみがなく徹底的に無機質に書かれています。
また、コージョや彼の仲間に対して差別的な態度をとる人間も出てきます。
こうした描写には、ドイツ国内に膨らみつつある移民への嫌悪感が根底にあると思われます。
ドイツの移民は今や社会問題にもなっており《ドイツのための選択肢》という極右政党が躍進する一因にもなっています。
作者はこの作品を通じて、ドイツに巣くう病魔をあぶり出そうとしたのでしょう。
しかし、ただ社会問題を定義しただけの作品ではなく、非常にスピード感のあるサスペンスにも仕上がっており、エンターテインメントとしても楽しめます。
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