【ネタバレ有り】あしたの君へ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:柚月裕子 2019年11月に文春文庫から出版
あしたの君へ の主要登場人物
望月 大地(もちづき だいち)
家庭裁判所調査官補として九州で研修中の主人公。
瀬戸 理沙(せと りさ)
大地の学生時代の同級生。離婚調停中。
露木 千賀子(つゆき ちかこ)
大地の指導役。冷静沈着で、スパルタ指導をする。
あしたの君へ の見どころ!
・大地の家庭裁判所調査官補としての成長
・仕事に悩む大地を囲む地元の友人や同僚の優しさ
・大地が出会う様々な人間の在り方
あしたの君へ の簡単なあらすじ
大地は家庭裁判所調査官補として働く青年です。
船乗りの父に対する反発から、安定したいとの思いからこの職業に就きましたが、自分が立派な家庭裁判所調査官になれる気がせず、いつも悩んでいます。
しかし、優しい地元の友達や、職場での同僚、先輩たちに励まされ、時には慰められながら、大地は少しずつ成長していくのです。
あしたの君へ の起承転結
【起】あしたの君へ のあらすじ①
大地は家庭裁判所調査官補として勤務する青年です。
静岡出身ですが、九州の福森地裁に配属され、慣れない一人暮らしをしながら慣れない仕事に打ち込む毎日です。
仕事内容は、事件を起こしたり、問題を抱えている当事者の背景を調査し、持っている専門知識を生かして調停委員や裁判官をサポートしながら、紛争を解決へと導くことです。
今までは先輩の補佐ばかりを勤めていた大地ですが、ついに独り立ちの時期がやってきます。
初めての案件は、SNSで知り合った男性とラブホテルに行き、財布を奪って逃げたため、窃盗の疑いで捕まった少女でした。
大地は少女の面接を勧めますが、少女は口を開いてもくれません。
少女の母親にも面談を行いますが、なぜか他人事です。
行き詰まりを感じた大地は少女の家に行きますが、住民票に書かれた住所はネットカフェのものでした。
少女は家を持っていなかったのです。
【承】あしたの君へ のあらすじ②
少女の家はひどく貧乏でしたが、母親はどの仕事も続かないようでした。
父親が数年前に病死し、家を売り払ってからはずっとネットカフェで暮らしていたのです。
大地は少女の壮絶な暮らしぶりに衝撃を受けます。
また、平和に暮らしてきた自分が少女の気持ちなんてわからないと気分を落とします。
少女は働かない母親の代わりに懸命にアルバイトに勤しんでいました。
アルバイトの賃金は全て生活費に消えています。
お金が足りない日は、ネットで下着などを売ることもありました。
しかし、大地が不思議に感じたのは、少女の稼ぎだけでも月に二十万近くあるのに、どうして窃盗までしなければいけないのかということでした。
少女の面談を続けていくうちに、少女は病院に通っていることが判明します。
彼女には妹がいました。
その妹には持病がありましたが、保険証を持っていませんでした。
少女が大金を必要とする理由は、この妹の治療費のためでした。
真相が明らかになり、大地は少女は少年院に入るべきだと考えます。
少女が収容されている間に、母親には行政を頼ってもらい、しっかりした家庭の基盤を作ってもらうことが狙いです。
大地は初めての大仕事が終わって、社会の生きづらさと自分の存在意義を考えるようになりました。
【転】あしたの君へ のあらすじ③
年末年始休暇が始まりました。
大地は静岡の実家に帰ってきました。
久しぶりの実家に安心感を感じた大地は、仕事を辞めて実家に戻ることを考えていました。
大地は人付き合いが苦手でした。
同期や先輩とは親しくなれたものの、問題を抱える当事者の気持ちに寄り添えているという自信がなかったのです。
しかし、家族にも仕事を辞めたいと思っていることは言い出せませんでした。
帰省中には、同級生との飲み会がありました。
久しぶりの同級生との再会に、大地の心は踊ります。
一番嬉しいのは、学生時代に憧れていた理沙も参加するということでした。
理沙は学生時代に妊娠し、そのまま結婚しました。
その後育児などに忙しい毎日を送っていた理沙に会えるのは久しぶりでした。
飲み会で楽しい時間を過ごした大地は、家族と過ごすために一次会で帰ることにします。
家庭のある理沙も大地と一緒に帰ることになりました。
その帰り道で、大地は理沙に離婚調停中だということを知らされます。
その話の流れで、仕事に行き詰っていることを吐露した大地ですが、理沙に「私は家庭裁判所調査官のアドバイスに救われた」という言葉をかけられて自信を持ち直します。
それからは、仕事で壁にぶつかったときは、理沙の言葉を思い出すようになるのでした。
【結】あしたの君へ のあらすじ④
理沙の言葉をきっかけに、少しずつでも当事者に寄り添える調査官を目指すようになった大地ですが、新しく上司となった露木のスパルタ指導にまたもや壁を感じていました。
大地は調査書だけで当事者の問題をわかったような気になってしまう部分があり、露木はそれを危惧しているのですが、大地にはどうすればいいのかがわかりませんでした。
そんな時に新しく担当するようになった案件は、離婚調停問題でした。
離婚するにあたって、夫婦が子どもの親権を奪い合っていたのです。
母親側は、子どもの現校区内に新居を構え、子どもに負担をかけない新生活を準備すると宣言し、父親側は母親と一緒に育児をサポートすると言って譲りません。
肝心の子どもは母と父のどちらと暮らしたいかなんて選べないと落ち込んでいます。
大地は両親の気持ちよりも子どもの気持ちを大切にするべきだと考え、自分なりに子どもによりそった調査や面談を勧めます。
そんな時、母親には同居中の恋人がいることが判明し、真剣争いは父親に有利になります。
しかし、その恋人とは、息子の本当の父親だったのです。
明らかになった事実を前に、父親は「知っていた」と述べます。
父親は子どもができない体質で、妻の妊娠は自分の子どもではないと知っていましたが、すべてを受け入れた上で自分の子どもとして育てていたのです。
その思いを知った妻は態度を軟化させ、子どもが離婚を受け入れるまでは家族で暮らす決心をします。
あしたの君へ を読んだ読書感想
悩みながらもしっかりと成長する大地をほほえましい気持ちで読み進めました。
家庭裁判所調査官とは耳慣れない職業ではありますが、社会問題に寄り添う大切な仕事だと思います。
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