【ネタバレ有り】向日葵ちゃん追跡する のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:友井羊2016年9月に新潮文庫から出版
向日葵ちゃん追跡するの主要登場人物
原向日葵(はらひまわり)
主人公。「おさらぎセキュリティ」でストーカー対策を担当。元ストーカーでもある。
鵜飼考正(うかいこうせい)
向日葵の同僚。何かと向日葵を気に掛ける。
佐藤晴馬(さとうはるま)
画家。向日葵から付きまといを受けたストーカー被害者。
向日葵ちゃん追跡する の簡単なあらすじ
向日葵は「おさらぎセキュリティ」に勤め、元ストーカーでストーカー心理に詳しいことを武器に、ストーカー対策を担当していました。ある時、ストーカー相談の依頼人が殺害され、その現場付近で向日葵のストーカー相手であった佐藤晴馬を目撃します。彼への接近禁止命令が出ているものの、彼を救うために向日葵はその持ち前の調査能力を発揮。冤罪容疑を掛けられていた佐藤を無事に救うことに成功します。
向日葵ちゃん追跡する の起承転結
【起】向日葵ちゃん追跡する のあらすじ①
防犯アドバイザーの原向日葵は、自らがおとりとなってストーカー犯を誘き出し、犯人を警察に突き出します。
彼女はストーカーの心理に長けており、ストーカー犯の行動予測が可能でした。
彼女はおさらぎセキュリティに勤め、ストーカー対策にその手腕を振るっていました。
ある時、ストーカーの相談を持ち掛けてきた依頼人からの定時連絡が遅いことに気付いた向日葵は、同僚の鵜飼と共に依頼人粟田の住むマンションへ急行します。
彼女はそこで依頼人の部屋から飛び出してくる青年を目撃。
部屋を確認すると粟田は死亡していました。
犯人と思しき青年を向日葵は追いかけることが出来ません。
それは向日葵が彼へのつきまとい行為により、接近禁止命令を受けていたからです。
青年佐藤晴馬のことが気になった向日葵は、彼と初めて出会い、また彼が所属するアートギャラリーの公式ホームページを確認しますが、目玉作家である筈の彼の名前は削除されていました。
アートギャラリーを訪ねて分かったのは、彼が大手美術団体「清美会」に参加して以来、アートギャラリーとは縁が切れてしまったということ。
向日葵が佐藤と出会ったのは、彼女が高校生、佐藤が美大生のとき。
アートギャラリーの佐藤の絵に夢中になる向日葵に、佐藤が声を掛けたことから始まりました。
佐藤が事件に関わっているかもしれないと思うといてもたってもいられず、向日葵は独自に調査を始めます。
佐藤の絵が展示されている百貨店へ向かった向日葵は、そこで佐藤の姿を目撃します。
佐藤の隣には女性がおり、二人には婚約を祝う声が上がっていました。
その様子を見て意識が遠くなる向日葵。
向日葵を心配して尾行していた鵜飼の機転により、向日葵はなんとかその場を後にします。
鵜飼によると、佐藤の婚約者は日本画の大家で、清美会のトップでもある木山有士郎の孫娘ということでした。
【承】向日葵ちゃん追跡する のあらすじ②
久しぶりに見た佐藤の絵は以前の個性的な絵と比べて、特徴の無いものに成り下がっていました。
調査の結果、佐藤の絵がそうなってしまったのは、彼が通う美大の東海林教授に師事して以降のことで、佐藤は東海林教授の推薦によって賞を取り、木山の称賛を受けていました。
木山の孫娘、紅深との交際もそういった繋がりから始まったものでした。
調査の過程で佐藤と遭遇してしまう向日葵。
過去の佐藤は自身の個性を貫いた絵を描くことに拘りを持っていましたが、家族が抱えた借金の返済を東海林教授に肩代わりしてもらう代わりに、教授に師事し、万人受けする特徴の無い絵を描いたのだということが彼の口から明かされます。
拘りを捨ててしまった彼を非難する向日葵。
佐藤はもう過去の様な絵は描かないと宣言し、もう自分に近づくなと忠告して向日葵の前から去っていきます。
向日葵は鵜飼が警察から入手した情報を聞きます。
それによると、容疑者の数が絞られてきており、佐藤の名前が容疑者として上がるのも時間の問題ということでした。
徐々に猶予が無くなってきていることに、向日葵は焦りを覚えるのでした。
【転】向日葵ちゃん追跡する のあらすじ③
向日葵は佐藤と知り合ってから、彼を手助けするようになります。
作業の手伝いはもちろん、生活感の無い彼に代わって、掃除に洗濯、料理も行いました。
更には、素人ながらに佐藤の絵に対する指摘を行い、それによって磨かれた佐藤の絵はどんどん知名度を増していきます。
しかし、日増しに向日葵の指摘の厳しさも増し、過剰な行為へとエスカレートしていきます。
向日葵は佐藤の技術の向上のため、良かれと思い、苦しむ彼を見て心を痛めながらも厳しい指摘を繰り返します。
ただ、佐藤はそれに耐えきれなくなり、警察への相談の結果、向日葵はついにつきまといとして警告を受けることになります。
佐藤への想いを捨てきれないままではありましたが、自身のやってしまったことを反省し、更生を目指す向日葵。
ですが、佐藤が盗作被害にあったことを知った彼女はついに想いを抑えきれなくなり、徹底的に証拠を集め、それを関係各所へ公表することにより、佐藤を助けることに成功します。
それと引き換えにして待っていたのは、警告を破った彼女に対する佐藤への接近禁止命令。
家族にも見放される向日葵ですが、その調査の手腕を買われ、おさらぎセキュリティで働くことになったのでした。
【結】向日葵ちゃん追跡する のあらすじ④
ついに佐藤が警察から任意同行を求められます。
向日葵は鵜飼と一緒に事態解決に向けて奔走し、佐藤のアリバイを証明する証言者の登場で、佐藤の冤罪が晴らされます。
向日葵は佐藤から感謝を述べられますが、佐藤の婚約を祝って彼を送り出します。
結局のところ、粟田を殺した犯人は誰なのか。
向日葵はそれが鵜飼であることを突き止めます。
鵜飼は向日葵に執着しており、向日葵の想い人である佐藤のことを徹底的に調べていました。
その過程で、粟田が清美会の不正献金を暴くために佐藤を利用しようとしていたことを知ります。
清美会の罪が暴かれれば、必然そこに所属する佐藤の不幸は免れず、向日葵はまた佐藤に執着するでしょう。
だからこそ、粟田を殺害して清美会の罪を闇に葬ることで、佐藤を幸せにし、向日葵に佐藤を諦めさせる必要があったのです。
鵜飼は好意を向日葵に伝えますが、元ストーカーであるからこそ、向日葵は鵜飼のことを受け入れられず、鵜飼は警察を振り切って消息を絶ちます。
事件後も向日葵は変わらずに職務を全うしていきます。
やはり佐藤のことを忘れられない向日葵ですが、過去に犯した罪があるからこそ、涙を浮かべつつも彼の幸せを祈り続けるのでした。
向日葵ちゃん追跡する を読んだ読書感想
この作品は、タイトルから受ける印象とは裏腹にシリアスなストーリーとなっています。
向日葵は警察も舌を巻く調査能力を持っていますが、それは元ストーカーであるからこそ磨かれたものであり、過去に犯した過ちへの贖罪としてストーカー対策という仕事に邁進しています。
どれだけ想い人のことを想って、彼のために行動したとしても、過去の過ちがあるからこそ、彼から見返りを求めることは出来ません。
そんな切なさを胸に秘めたまま、彼の幸せを祈り続けることしか出来ないのです。
向日葵はこれからもずっと痛みを抱えて生きていくのでしょうが、願わくばそんな彼女の痛みを理解してくれる人が現れることを思わずにはいられない。
そんな読後感を抱かせてくれる作品となっています。
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