【ネタバレ有り】クジラは歌をうたう のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:持地佑季子 2018年8月に集英社文庫から出版
クジラは歌をうたうの主要登場人物
宮平 拓海(みやひら たくみ)
沖縄県出身。東京の製薬会社で営業として働く。梢との結婚を控えている。
橘 睦月(たちばな むつき)
拓海の高校時代に東京から転校してきた美少女。小児がんを患っている。
知念 正吾(ちねん しょうご)
拓海の幼馴染。沖縄に住んでいる。
奥 洋介(おく ようすけ)
拓海の幼馴染。少年野球の監督をしている。
杉浦 梢(すぎうら こずえ)
拓海の婚約者。拓海には故郷にまつわる秘密があるのではないかと訝る。
クジラは歌をうたう の見どころ!
・過去と現在をつなぐブログの謎
・転校生の睦月が死後に残したものの大切さ
・拓海が本当に大切な人を見つけるまでの過程
クジラは歌をうたう の簡単なあらすじ
結婚を控えた拓海は、12年前に死んだ転校生・睦月のブログが更新されていることに気付きます。
周囲の人々は誰かのいたずらだと言いますが、拓海は睦月からのメッセージではないかと疑います。
拓海は睦月の死後も、ずっと睦月のことを思っていたのです。
ブログの謎を解くために、拓海の婚約者や幼馴染たちを巻き込んだ、夏の冒険が始まります。
クジラは歌をうたう の起承転結
【起】クジラは歌をうたう のあらすじ①
主人公の拓海は沖縄出身の30歳です。
大学進学を機に上京し、現在は大手製薬会社の営業として働いています。
大学の同級生の梢との結婚を控えた拓海は、式に向けて忙しい毎日を送っていました。
しかし、拓海には、梢には言えない日課があります。
それは、『クジラは歌をうたう』というブログを眺めること。
このブログは、拓海が高校生の時に転校してきた睦月のものです。
更新は睦月が小児がんで亡くなった12年前に止まっていますが、拓海はそこに残された記事を読むと、過去に戻って睦月を感じられるような気がするのです。
拓海は睦月に叶わない片思いをしていました。
しかし、その日はブログの様子がいつもと違いました。
ブログの記事が更新されていたのです。
そこには、「君は今、何を見て、何を思っていますか?」とだけ書かれていました。
そのブログを見た拓海は動揺しますが、誰がこんないたずらをしたのか突き止めようと考えます。
しかし、このブログは拓海しか知らないはずでした。
仮に誰かがイタズラで更新したとすれば、睦月はその誰かにブログの存在とパスワード類を教えていたということになります。
沖縄にいたころの睦月と一番親しかったのは自分だという自負のある拓海は混乱し、高校時代を良く知る幼馴染の正吾や洋介、そして東京にいる睦月の両親が何か知っていないかと連絡を取ります。
【承】クジラは歌をうたう のあらすじ②
正吾も洋介も、睦月のブログの存在自体知らないようでした。
そのブログが更新されたという話を聞いた二人は驚きますが、結婚を控えた拓海が睦月のことに気を取られていることのほうが問題だと指摘します。
東京で少年野球の監督をしている正吾は、拓海に現実を見てほしくてきつい言葉を投げつけますが、拓海は余計に睦月のブログの問題に固執し、ついにはブログの更新は沖縄にいる睦月からのメッセージではないかとまで考えるようになります。
そんな拓海の様子を心配した洋介は、東京で高校の同窓会を開くことを提案します。
同窓会の場でそれとなく睦月の話題を出し、ブログについて持ち出せば、何か知っている人は反応するに違いないと言うのです。
あまり乗り気ではなかった拓海ですが、洋介の手回しのお陰もあり、無事にメンバーを集めて同窓会を開催することができました。
しかし、クラスメイトたちは睦月のブログの存在どころか、睦月がいたという記憶さえもおぼろげでした。
そんなクラスメイト達を見て、拓海は落胆します。
何かを知っているかもしれないと希望を持って訪れた睦月の両親も、ブログの存在は知りませんでした。
睦月の両親は、いつまでも睦月のことを大切に思う拓海には感謝しながらも、娘のことはもう忘れてほしいと拓海に告げます。
拓海は、睦月の存在を梢には知らせてしませんでした。
しかし、梢は拓海の様子から、拓海には昔から忘れられない人がいることを前から察していました。
しかし、最近もっぱら睦月のことで頭がいっぱいになっている拓海を見て、梢は同棲中の家を出て行ってしまいます。
【転】クジラは歌をうたう のあらすじ③
時は過去にさかのぼります。
拓海は幼いころに母を亡くし、父親の再婚相手と父親の三人で暮らしていました。
しかし、拓海は実の母親のことが忘れられず、簡単に再婚をした父のことが許せませんでした。
寂しさが募ると、いつも拓海は浜辺で泣きました。
しかし、ある日その姿を一人の少女に見られてしまったのです。
それは、転校生の睦月でした。
睦月はそれ以降、何かと拓海に頼み事をするようになります。
それは、「一緒にアイスクリームを食べる」「一緒にファミレスに行く」「一緒に放課後に本屋に行く」など、誰にでもできるような簡単なことでした。
睦月は「言うことを聞いてくれなかったら浜辺で泣いていたことをクラスにバラす」と言って、半ば強制的に拓海を従えます。
始めは仕方なく睦月の言うことを聞いていた拓海ですが、次第に睦月に惹かれていきます。
睦月はクジラが好きでした。
図書館で見つけたクジラの本を気に入り、書店で改めて買うほどでした。
拓海は睦月にクジラが見れる島、通称クジラ島に一緒に行こうと提案します。
喜ぶ睦月ですが、そのころには睦月は体調があまり良くありませんでした。
拓海には何も言わず、睦月は学校を休みがちになります。
クジラ島に行こうと約束をした日は、大雨でした。
睦月の気持ちも病気のことも知らない拓海は雨の中睦月を待ちますが、睦月はやってきませんでした。
雨に濡れた拓海は熱を出し、そのまま寝込んでしまいます。
体調が戻った拓海を待ち受けていたのは、小児がんを患っていた睦月が死んだということでした。
何も知らなかった拓海は絶望します。
睦月の形見にともらったクジラの本を開くと、そこにはあるURLが書かれていました。
それは、睦月のブログでした。
ブログには、拓海と過ごした日々が綴られていました。
睦月が拓海に頼んだ日常の小さな出来事は、東京で入院していたころにできなかった願いだったのです。
【結】クジラは歌をうたう のあらすじ④
梢の家出をきっかけに、改めて拓海は梢が好きだということに気付きます。
睦月のことを忘れたくなくて、今までは梢に隠れて睦月のブログを読んで過去に逃げていましたが、もうそんなことはやめて、睦月のことは思い出に変えようと決心します。
そのために、拓海は梢を連れて沖縄に行きます。
最後に睦月と果たせなかった約束、クジラ島を見に行くことにしたのです。
そして、今まで逃げてきた実家との関係も修復するつもりでした。
クジラ島には、洋介や他のクラスメイトも同行しました。
島に近づくと、クジラの群れがいて、それらは歌を歌うかのように鳴いていました。
クジラは求愛のために鳴きます。
睦月は拓海の前で、クジラの鳴きまねをしてくれたことがありました。
拓海はその意味を知り、胸が締め付けられました。
しかし、クジラを見ながら睦月のことを考えるうちに、睦月との日々は良い思い出へと昇華していきました。
陸地に戻ると、拓海はあらためて今までのことを梢に謝罪し、プロポーズしました。
そして、睦月が昔住んでいた家のポストにクジラの本を入れ、もう二度と睦月に逃げないことを誓います。
梢を父親に会わせることも叶い、拓海は安堵しました。
結局睦月のブログを更新した主はわかりませんでしたが、拓海はもう気になりませんでした。
しかし、後日会社の後輩から、ブログの予約投稿機能のことを知らされ、やはりあのメッセージは睦月だったことが明らかになります。
クジラは歌をうたう を読んだ読書感想
情景の描写が美しい一冊でした。
ストーリー自体は物悲しいのですが、ラストは軽快で、前向きになれます。
主人公はちょっとナヨナヨしたタイプですが、周囲のキャラクターがうまく引っ張ってくれるのでうまく展開しています。
ヒロインの病死という展開はありがちではありますが、クジラというモチーフが良いエッセンスになっていました。
夏に読みたい一冊です。
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