「メルヴィル — 代書人バートルビー」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|ハーマン・メルヴィル

「メルヴィル — 代書人バートルビー」

【ネタバレ有り】メルヴィル — 代書人バートルビー のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:ハーマン・メルヴィル 1988年11月に国書刊行会から出版

メルヴィル — 代書人バートルビーの主要登場人物

バートルビー(ばーとるびー)
主人公。代書人。

わたし(わたし)
物語の語り手。 法律事務所の所長。

ターキー(たーきー)
わたしの右腕。 ベテランの筆耕。

ニパーズ(にぱーず)
わたしの部下。 若手の筆耕。

ジンジャー・ボーイ(じんじゃー・ぼーい)
事務所の雑用をする見習いの少年。

メルヴィル — 代書人バートルビー の簡単なあらすじ

ニューヨークで30年余りに渡って法律事務所を切り盛りしていた 「わたし」 ですが、バートルビーほど風変わりな人物には会ったことがありません。代書人としては優秀でしたが、何を頼まれても「せずにすめばありがたいのですが」と答えるだけです。遂には事務所を追い出されたバートルビーの、意外な過去をわたしは知ることになるのでした。

メルヴィル — 代書人バートルビー の起承転結

【起】メルヴィル — 代書人バートルビー のあらすじ①

個性豊かな事務所のメンバー

ニューヨークのウォール街の一角にあるビルのワンフロアを借りて、わたしは法律事務所を構えていました。

書類の写事と清書を担当するターキーとニパーズ、ふたりの使い走りをするジンジャー・ボーイ。

ターキーは身長が低くて太ったイギリス人になり、年齢は間もなく60歳を迎えるわたしと同じくらいでしょう。

わたしがやんわりと勤務時間の短縮を提案してみても、頑固なターキーはまるで聞き入れることはありません。

性格は誠実で仕事ぶりは信頼に値するために、当分は事務所に置いておくつもりです。

ニパーズは20代の野心溢れる青年で、 字が綺麗で速筆なために役に立っています。

ジンジャー・ナットは12歳くらいの少年で、ターキーやニパーズのためにお菓子やリンゴを求めて走り回っていました。

3人は小さな衝突を繰り返しながらも、何とか上手くやっています。

もうひとり事務書類の作成をするための代書人を求人広告で募集したところ、応募してきたのがバートルビーです。

【承】メルヴィル — 代書人バートルビー のあらすじ②

冷血代書マシーン

バートルビーは長い間飢えていたかのように、非凡な量の代書をこなしていました。

ろくに休憩もとらず、日曜日にも家に帰らず、新聞も読まず、ビールもコーヒーも飲まず。

自らに割り当てられた屏風の影の席でひたすらに、血の気のない顔で機械的に書類を写し続けています。

毎日午前11時になるとバートルビーはジンジャー・ナットを呼びつけて小銭を手渡して、 生姜入りのクッキーを買いに行かせて栄養補給しているようです。

写したものの正解さを確認するためには代書人同士が2人1組になって、 1語1語原文と照らし合わせながら読み上げをしなければなりません。

バートルビーを採用して3日目にわたしがこの点検作業を彼とペアになって済まそうと声をかけると、彼は「せずにすめばありがたいのですが」と答えました。

わたしは驚きの余りにバートルビーの顔をまじまじと覗きこみますが、いつものように静かな表情と穏やかな眼差しを浮かべているだけです。

【転】メルヴィル — 代書人バートルビー のあらすじ③

バートルビーを厄介払い

次の日の朝にわたしはバートルビーに幾つか質問をして、彼の経歴や生まれ故郷について質問をしてみます。

個人情報を聞き出した後に、手切れ金を渡して厄介払いするつもりです。

結果は昨日と同じように、「お答えをせずにすめばありがたいのですが」でした。

その後もバートルビーは一向にわたしの事務所の習慣に従うことなく、屏風の向こうで代書を続けていきます。

バートルビーの分まで読み合わせをしなければならなくなった、ターキーとニパーズは不満たらたらです。

更にはわたしの事務所を訪れる商売仲間や顧客の間にも、バートルビーの奇行は広まってしまいました。

職業上の評判に宜しくないために、わたしは事務所を移転することにします。

引っ越しの日には車と積み荷係を雇っていたために、全ての書類と家具を運び終えるのに数時間とかかりません。

わたしはバートルビーに別れを告げますが、彼は屏風が取り除かれて剥き出しの部屋で窓のない壁を眺めているだけです。

【結】メルヴィル — 代書人バートルビー のあらすじ④

バートルビーの死と彼が抱えていた深い闇

新居に移ってから数日後、以前にお世話になっていたウォール街の家主から1通の手紙が舞い込んできました。

封を開いてみると、警察に通報してバートルビーを浮浪者として連行してもらったという報せが入っています。

手紙を受け取ったその日、わたしが向かった先はニューヨーク市拘置所です。

担当の係官に出来るだけ寛大な留置をお願いした後に、バートルビーと草地を囲いこんだ庭で面会しました。

わたしが最後に見たのは、中庭に聳え立つ高い壁と向き合っていたバートルビーの姿です。

「食事をしないほうがありがたい」 と言っていたバートルビーは、 飲まず食わずの末に亡くなり墓地に埋葬されました。

バートルビーの死後数ヶ月たってから、 わたしはワシントンの郵便局で働いていたという彼の過去を知ります。

「デッド・レター」と呼ばれる配達不能便を扱う部署で、誰からも受け取ってもらえない手紙を黙々と選別して焼き捨てるバートルビーの姿を思い浮かべてしまうのでした。

メルヴィル — 代書人バートルビー を読んだ読書感想

他者とのコミュニケーションの一切を拒絶する主人公のバートルビーは、今の時代の日本に移し変えると「引きこもり」や「ニート」などに当てはまるのかもしれません。

頑なに心を閉ざし続けるバートルビーに対して、何とか打ち解けようとする雇い主の努力が滑稽に思えてしまいました。

多くの謎に包まれたバートルビーの過去が、一瞬だけ垣間見えるクライマックスが圧巻です。

法律事務所に勤める前に「デッド・レター」の焼却に携わっていたというエピソードには、世の中の不条理をたった独りで背負っているような悲哀感がにじみ出ていました。

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