【ネタバレ有り】サラ、神に背いた少年 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:J.T. リロイ 2000年9月にアーティストハウスから出版
サラ、神に背いた少年の主要登場人物
ぼく(ぼく)
物語の語り手。 12歳で男娼となる。
サラ(さら)
ぼくの母。 娼婦。
グラディング・グレイトフル・ETC(ぐらでぃんぐ・ぐれいとふる・いーてぃーしー)
ぼくの雇い主。 愛称「グラッド」。
ボリー(ぼりー)
「ダヴズ・レストラン」のコック長。
ルループ(るるーぷ)
グラッドと敵対するポン引き。
サラ、神に背いた少年 の簡単なあらすじ
アメリカ南部の田舎町で生まれ育った「ぼく」は、母親の愛情に飢えている12歳の少年です。母のファッションや髪型を真似するようになり、遂には彼女の名前「サラ」を源氏名にして売春宿で働くようになります。娼婦や男娼たちから崇められている聖なる獣を一目見ようと、ぼくは禁じられた川の向こうへと旅立って行くのでした。
サラ、神に背いた少年 の起承転結
【起】サラ、神に背いた少年 のあらすじ①
西海岸から東海岸まで名の通った高級売春宿を経営するグラッドから、 12歳になったばかりのぼくはアライグマの骨でできたお守りを貰いました。
このお守りを見せると、 長距離トラック運転手たちが集まってくる「ダヴズ・レストラン」での食事の代金が無料になります。
レストランの裏手にあるトレーラーハウスでトレーニングを受けたぼくの初めてのお客さんは、 ウェストヴァージニア州のミンゴーという小さな町からやって来た運転手です。
「チェリー・ヴァニラ」という源氏名を名乗る予定でしたが、ぼくは母親の名前 「サラ」 を咄嗟に借りてしまいました。
サラの真似をして肩まで伸ばした髪の毛にリボンを結んで、女装をして男たちにアピールしていきます。
サラ自身も客を取ってはギャンブルにのめり込んだり恋人と旅行に行ったりで、ふたりで住んでいるハーリー・モーテルには滅多に帰ってきません。
グラッドの下で働き始めてから1ヶ月ほどで、ぼくは人気ナンバーワンの男娼です。
【承】サラ、神に背いた少年 のあらすじ②
1週間おきに木曜日の午後7時に決まってやって来るトラック運転手の客から、ぼくはジャガロープに関する噂話を聞きました。
アメリカ南部の民間伝承にも登場する聖なる角を生やした巨大なウサギで、 「リザード」と呼ばれている年若い娼婦や男娼たちにとっての守護聖人でもあります。
ジャガロープを見に行くためには、グラッドから渡ることを禁じられているチート川の向こうに行かなければなりません。
ぼくがグラッドにもサラにも内緒にして向かった先は、 「ホーリー・ジャック」というバーです。
リザードたちは黙って列を作りながら前に進んでいき、ジャガロープが安置された小部屋の中へ順番に出入りしていました。
ある者は泣きわめき、ある者は恍惚とした表情を浮かべて。
いよいよぼくの番になって対面を果たすと、 その美しいの毛皮の眩しさには目を覆わずにはいられません。
ぼくはグラッドから貰った小さなアライグマの骨を握りしめて、サラよりも優秀なリザードになることを願います。
【転】サラ、神に背いた少年 のあらすじ③
ホーリー・ジャックでひとりの女の子と仲良くなったぼくでしたが、彼女が働く「スリー・クラッチズ」という娼館に連れ込まれてしまいました。
ここの元締めはルループという強欲な男で、彼はぼくを利用してたっぷりと稼ごうとします。
ルループはネックレス代わりに首にかけていたアライグマの骨を見て、 ぼくの背後にいるグラッドの存在に気がついたようです。
ふたりはこれまでにも縄張り争いが原因で度々いざこざを起こしているために、グラッドからの襲撃に怯えるルループによってぼくは半ば監禁状態となってしまいました。
ぼくからの助けを求める電話を受けたグラッドは、トラックに武器を積んでスリー・クラッチズまで乗り込んできます。
一触即発の険悪なムードが立ち込める中でも、グラッドは慌てふためくことはありません。
地元の有力者とも繋がりがあるグラッドとの揉め事はルループも避けたいために、ぼくは解放されてダヴズ・レストランに帰ることになります。
【結】サラ、神に背いた少年 のあらすじ④
スリー・クラッチズでお酒や違法な薬物に手を出して衰弱していたぼくは、しばらくグラッドが所有するトレーラーハウスで療養していました。
ダヴズ・レストランの腕利きシェフ・ボリーが、滋養満点の特性スープを作ってベッドまで持ってきてくれます。
ボリーはかつて荒んだ暮らしを送っていましたが、料理人になるための費用を負担してくれたグラッドに今でも恩義を感じているようです。
サラの現在の消息についてボリーやグラッドに尋ねてみましたが、ふたりとも答えてくれません。 体力が十分に回復したぼくは、ある日の夜に窓から抜け出してハーリー・モーテルまで走り出します。
部屋の中でぼくが見た光景は、 見ず知らずの男性とベッドで寝ているサラの姿です。
ショックからその場で乱闘騒ぎを起こしたぼくは、気が付くと留置場のマットレスの上に横たわっています。
身元引き受けに来てくれたグラッドはぼくに、 サラがカリフォルニアへ行ってしまったことを告げるのでした。
サラ、神に背いた少年 を読んだ読書感想
著者自身の幼少期の体験をもとにしたという、衝撃的な青春小説です。
カキの実入りのパンケーキやフォアグラのペーストを塗ったパイを始めとする、「ダヴズ・レストラン」のテーブルに並ぶメニューが美味しそうです。
その一方ではレストランを隠れ蓑にして繰り広げられる、年端の行かない少年たちを犠牲した違法行為には胸が痛みました。
母親・サラへの愛憎半ばする気持ちを抱いていた主人公が、咄嗟に彼女の名前を源氏名として口に出してしまうシーンが印象深かったです。
根無し草のように放浪するサラが、息子を置き去りにして消えていくラストも心に残りました。
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