【ネタバレ有り】パレード のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:吉田修一 2002年1月に幻冬舎から出版
パレードの主要登場人物
杉本良介(すぎもとりょうすけ)
私立大学の3年生。 経済学専攻。
大垣内琴美(おおこうちことみ)
医薬品メーカーを退職して現在無職。
小窪サトル(こくぼさとる)
多摩市内の公団団地で父親に育てられる。男娼。
相馬未来(そうまみらい)
琴美の友人。 雑貨屋の支店長をしながらイラストレーターを目指す。
伊原直輝(いはらなおき)
良介の大学の先輩。映画配給会社勤務。
パレード の簡単なあらすじ
旧甲州街道に面した2LDKのそのマンションは、本来であれば新婚のカップルしか入局出来ません。管理会社には内緒で4人の男女が、一見すると和気あいあいと共同生活を送っています。近所で多発する通り魔事件や突如として部屋に転がり込んできた5人目によって、それぞれがひた隠しにしていた秘密が浮かび上がってくるのでした。
パレード の起承転結
【起】パレード のあらすじ①
杉本良介は高校を卒業するまでの18年間を、九州の田舎町で過ごしました。
実家で寿司屋を営んでいる両親を説得して、市ヶ谷にキャンパスを置く私立大学に進学するために上京します。
手ごろな価格の物件を探していた良介にルームシェアを提案してきたのは、大学の先輩・伊原直輝です。
眼下に旧甲州街道を見下ろす千歳烏山の2LDKのマンションの4階で、8畳の和室を直輝と一緒に使っています。
下北沢のメキシコ料理屋でアルバイトをしたり、サークル仲間と旅行に行ったり、友達の彼女と浮気をしてしまったり。
マイペースで大学生活を送っている良介でしたが、今現在ふたつの気掛かりがありました。
ひとつはお隣の402号室に女子高校生から代議士までたくさんの人が出入りしていること、もうひとつはこの近所で帰宅途中の女性が見ず知らずの男から襲撃さえる事件が立て続けに発生していること。
襲撃事件に関しては明確な証拠はないものの、良介は犯人に心当たりがあります。
【承】パレード のあらすじ②
大垣内琴美が東京へ出てきたのは、短大生の頃にお付き合いをしていた丸山友彦に会いに行くためです。
トラックをヒッチハイクして築地まで辿り着いた琴美は、東京にいる唯一の友人・相馬未来に電話をかけました。
以来琴美は彼女のルームシェア先の10畳の洋室を、未来とふたりで相部屋にしています。
芸能事務所にスカウトされた丸山は東京で売り出し中の若手俳優としてテレビドラマに出演し始めますが、多忙なために琴美と会う時間がなかなかありません。
いつものように部屋で丸山からの連絡を待っていると、見知らぬ男の子がバスルームから出てきました。
小窪サトルと名乗る少年と意気投合した琴美は、一緒にパチンコ店に行ったりアイスクリームを食べたりした後に駅前で別れます。
久しぶりの友彦との逢瀬を楽しんで帰宅した琴美は、サトルについて良介や直輝に聞いてみましたが彼らも心当たりはありません。
ここにサトルを連れ込んだのは、昨日新宿二丁目で泥酔していた未来です。
【転】パレード のあらすじ③
相馬未来が酔っぱらった末にサトルをマンションに連れてきてから、そろそろ2週間になります。
すっかり打ち解けて皆と寝食を共にしていますが、名前と「夜の仕事」をしていること以外は多くを語りません。
お節介焼きの直輝はサトルに映画配給会社でのアルバイトを紹介してあげたり、良介などは問題集を買ってきて大検合格のための個人教授を申し出る始末です。
いつものように未来が勤め先の雑貨店から帰って来ると、良介と琴美が隣室の402号室について話していました。
部屋の中で大掛かりな買春行為が行われていると睨んだ良介は、自らがお客となって潜入捜査を試みます。
ふたりの予想はまるっきりの見当違いで、お隣は売春宿ではなくよく当たると評判の占いの館でした。
占いのために個人データの記入を求められた良介は、咄嗟に直輝の名前と生年月日を書き込んでしまいます。
20000円の料金と引き換えに占い師が出した答えは、「あなたは強く変化を求め、世界と闘っている」だそうです。
【結】パレード のあらすじ④
伊原直輝が初めて見知らぬ女性を殴った夜、マンションでは良介と琴美が呑気に伊豆高原への旅行計画を立てていました。
2度目の夜は、サトルが転がり込んできて5人での新しい生活がスタートした日です。
3度目の夜、泥酔していた未来をリビングで介抱しました。
4度目の夜から、直輝は一睡も出来ません。
5度目の夜はジョギング用のジャージ姿で家を出るところを良介と琴美に目撃されて、ふたりは迷惑そうな顔をしていました。
赤い傘をさして女を見た場所は、高速道路の高架下にある中央分離帯です。
足元のコンクリート片を握りしめた直輝は、ターゲットの口を塞いで顔面を殴打します。
突如として背後からサトルに手首を掴まれて、駐車場に留めてあった良介の車に押し込まれました。
サトルの話では未来も良介も琴美も薄々通り魔の正体に感づいているようですが、誰ひとり通報するつもりはありません。
マンションに帰った直輝は、テレビの前に座って仲良く談笑する4人を眺めながら立ち尽くすのでした。
パレード を読んだ読書感想
都会のマンションでルームシェアをする5人の男女のバックグラウンドが、少しずつ浮かび上がってきて面白かったです。
同じ部屋の中で和気あいあいと日常生活を送りながらも、それぞれがお互いのプライベートに必要以上に踏み込んでいかないところも印象的でした。
理想的な自分の姿を匿名性の高い空間で演じることが出来る、SNSやオンラインゲームなどを思い浮かべてしまいます。
罪を犯しながらも最後まで他人事のように無関心な伊原直輝と、同居人の奇行に薄々気が付きながらも見て見ぬふりしてしまう他の4人の胸の内を理解することは難しいです。
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