【ネタバレ有り】あの子はもういない のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:イドゥオン 2019年2月に文藝春秋から出版
あの子はもういないの主要登場人物
ユン・ソンイ
チャンイの姉。主人公。謎を残し失踪した妹を探す。
ユン・チャンイ
かつての子役スター。高校生
ソ・ヘスン
自殺したチャンイの同級生男子ユンジェの父。ソンイと共にチャンイを探す。
あの子はもういない の簡単なあらすじ
幼い頃に別れた妹が、不審死事件に関わっているが行方不明と聞いた姉は、かつて共に暮らした家へ向かいます。家には風呂や部屋など家中にビデオカメラがあり、妹が着るには小さすぎる服が並んでいました。いるはずの父もおらず、妹に一体何があったのでしょうか。
あの子はもういない の起承転結
【起】あの子はもういない のあらすじ①
チャンイとソンイは姉妹でした。
芸能界で旬の過ぎたスターだった両親の元で育ちます。
両親は過去の栄光が忘れられず、常に劇中にいるかのような反応を求められる家庭でした。
父親は再起をかけて姉のソンイとリアリティー番組に出演します。
ソンイが失敗し、父はソンイを突き放します。
代わりに妹のチャンイが出演したところ、美貌のチャンイは大人気になります。
街頭でもファンが声をかけてきて、日常がままならない程でした。
しかし、番組内のアクシデントで穴に落ちた出演者の子供たちを見捨て、カメラの前で何事もなかったように振る舞っていていたところが全て放映されてしまい、親子とも降板させられます。
両親はますます姉妹から心が離れていきました。
母の事故死によりソンイは祖父母に引き取られ、いつも周囲に愛される振る舞いができるチャンイを憎らしく思っていたため、チャンイとは長年連絡を取りませんでした。
刑事にチャンイが同級生ユンジェの不審死事件に関わっているが行方不明と聞き、父と妹が暮らす家へ向かいます。
【承】あの子はもういない のあらすじ②
かつての住まいを訪れると、いるはずの父は行方不明になっており、お風呂や部屋など家の中の至る所にビデオカメラがありました。
クローゼットには高校生が着るには小さすぎる服ばかりで、通帳からは定期的な謎の振り込み記録を発見しました。
お父さんが帰ってこないという日記や聞き込み等から、父はほとんど家に帰らず幼いチャンイが一人で暮らしていたことが分かりました。
ソンイは妹を気にかけてこなかった自分を責めます。
不審死をしたユンジェはいじめられており、自殺と見せかけられた殺人だと判明しました。
ソンイはユンジェの父ヘスンと協力し、ユンジェと最後にいたチャンイの行方を探します。
チャンイとユンジェを無理やり性交させたビデオが、ユンジェをいじめていた同級生により撮影されていたことが分かりました。
いじめ加害者に会おうとした直後、加害者は死体で発見されました。
チャンイの元担任の男に話を聞き、チャンイが母の名前を名乗る女性といたことをつかみます。
【転】あの子はもういない のあらすじ③
チャンイの母親のふりをしていた女性を発見しました。
女性は偶然からチャンイとメールをする仲になり、元々チャンイのファンであり幼い子供が一人でいることを心配して母として連絡を取り合っていました。
次第にチャンイのことが重荷になり、チャンイの母をファンサイトで募集したことを明かします。
募集の結果、数人を「チャンイのママ」として選んだことが分かりました。
ソンイは、元担任や女性からチャンイはカメラの視線がすべて、常にカメラがあるかのように振舞う子供であったと聞き、幼いチャンイはそのようにしか生きていけなかったことに気付き落ち込みます。
そして異常な部屋の様子が「チャンイのママ」とどのような関係にあるのか真相を突き止めようとします。
父の元愛人で、幼い姉妹も大好きだった女性が、いじめ加害者の死亡時にアリバイがないこと、「チャンイのママ」であることが判明しました。
元愛人への疑惑が深まるとともに、周囲から話を聞く内に元担任の言動がおかしいことに気が付きます。
【結】あの子はもういない のあらすじ④
「チャンイのママ」は3人でした。
父の元愛人、元担任の男、女の3人でした。
3人は家中にビデオカメラを設置しチャンイの様子を見守りながら、生活のために送金もしていました。
元担任の男が、チャンイに大きくならないよう過度の指導をし、性的暴行を加えている映像も発見されました。
他のママたちは知らず、チャンイの父は知っていました。
妹には小さすぎる服やビデオカメラの謎が解けました。
チャンイがユンジェを殺し、自首をしようとしたため、ママたちはチャンイを監禁します。
いっそチャンイを殺してしまおうとしたところにソンイとヘスンが駆け付けました。
ユンジェはチャンイの映像をハッキングしママたちを脅迫していたこと、いじめ加害者はママたちが殺害したことが判明しました。
ママたちが仲間割れをし、殺しあいをしているところで警察が来て逮捕されます。
チャンイは姉の元に戻ることを拒みましたが、これからソンイはチャンイを癒していこうと決意します。
あの子はもういない を読んだ読書感想
様々な謎が絡まりあい、続きが気になる一気読みのミステリーでした。
妹を取り巻く不気味な話が分かってくるなか、懸命に妹を探す姉ソンイの描写に心を打たれました。
合間に、姉妹の過去や幼いチャンイの辛い日々が描かれ、姉妹の苦しい人生が伝わります。
ユンジェ親子のわだかまりや、チャンイのママたちが苦しみながらチャンイと接していたり、登場人物それぞれに思いや嫌らしさがあり、一見希望も救いもないようなミステリーですが、最後にチャンイがソンイの差し出した手を握り、二人が過去を置いて新たなスタートを踏み出していくシーンで、姉妹のこれからの人生を応援したくなる物語でした。
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