「あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|小笠原慧

あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌

著者:小笠原慧 2016年1月に新潮社から出版

あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌の主要登場人物

森野美夢(もりの みゆ)
大学院修士課程の臨床心理士の卵

奥田(おくだ)
有名な精神科医

あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌 の簡単なあらすじ

臨床心理専攻の大学院生の美夢は、心理士として就職先を探しますが、臨床心理士を育成する大学院が増えたため、なかなか心理士としての就職先が決まりません。

しかし、偶然知ったメンタルクリニックの求人の面接を受けて、なんとかそこの心理士として採用されます。

あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌 の起承転結

【起】あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌 のあらすじ①

クリニックの開設と仕事

そこでは奥田医師が中心となり、他にも心理士やソーシャルワーカー、看護師など、様々な職種の人が採用され、クリニックが開設されました。

そこでの美夢の仕事はもともと心理検査やカウンセリングなどでしたが、奥田医師がしっかり患者さんを見ながら診察したいとのことで、記録係として診察室で同室して記録を取ることも仕事になります。

最初に来た男性の患者さんは、ある日気が付いたら、自殺の名所の東尋坊に居たとのことで、強いストレスにより解離により記憶が飛んだ解離性遁走ではないかとの見立てで、奥田医師の面接が行われます。

解離というと、昔なら、二重人格の「ジキルとハイド」、最近なら「24人のビリー・ミリガン」などが有名ですが、人格がいくつかに解れて、それぞれの行っていることを知らないことなどがあります。

そのために奥田医師は、その男性が借金の問題で悩んでいたことを知り、どう対応すればいいのかを、一緒に考えていきます。

その男性は自分で作った借金の事を家族には知らせず、自分で何とかしようとしているうちに、解離症状が出たようなので、一人で抱え込まない方向に話し合いますが、責任感の強い人なので、なかなか家族に打ち明けられませんでした。

【承】あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌 のあらすじ②

母子カプセル

次に美夢が関わったのは、一人息子が中学校にちゃんと行かなったり、夜遊びしたりして困っているというシングルマザーでしたが、小学生の頃に発達の偏りがあるとされたことで、今回も先天的な発達に関する問題だろうとのことで、何らかの投薬を求めて来院したのでした。

しかしながら、その息子は父親の事が好きで、両親が離婚して父親と離れて暮らす影響が大きいのではないかとのことで、奥田医師は詳しく聞いていきます。

そうすると両親が結婚していたころから、母方の義母が家事の手伝いということで、家に週に何日もいて、それが息苦しくなり、夫は出ていくことになったことが解ります。

母親は自分の母親とおとなになっても距離が取れず、そのことが夫のみならず息子にも大きく影響しているのでした。

そのため治療として母親が自分の母親と距離を取ることや、息子が自分で決めて父親の方で暮らす日を増やすことなどが提案されます。

そうしているうちに息子は少しずつちゃんと学校に行きはじめるのでした。

【転】あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌 のあらすじ③

潔癖症?

次に美夢が担当したのは、潔癖症が昂じて、日に何回も手を洗ったり、ガスの元栓を占めたかどうかを確認するために何回も外出してから家に戻ったりして、日常生活が困難になっているという清楚な感じの19才の女子大学生でした。

よくある思春期の問題として関わっていた美夢と奥田医師ですが、本人が、子供の頃に離婚して出ていった父親と再会し、そこで性関係を強要されたと話し始めます。

美夢と奥田医師は憤慨しますが、なんと父親が診察に訪れます。

父親によると、再会したことはあっても性関係などは無いとのことで、心理士として美夢が最初に行った心理検査の結果も踏まえ、その女子大学生は虚言や演技性などを伴う境界性人格障害に近い症例なのではという事になってきます。

彼女は父親と子供の時に離れたことから、父親代わりを求めて、高校生の頃から自分で出会い系サイトで見知らぬ男性と会っているのでした。

そのため、奥田医師は心理士の美夢や父親も関わり、彼女に長期間対応する必要があると伝えます。

【結】あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌 のあらすじ④

依存症

次に美夢が関わったのは、依存症になり、社会生活のみならず様々な面で家族との生活にも支障をきたしているという男性でした。

その男性は子供の頃に自分の親とは疎遠で、寂しい思いをして育ったので、自分の子供にはそのような思いをさせたくないとのことでした。

しかり、依存症で家族とうまく行かなくなっていて、今のままでは自分の子供にも、自分と同じような思いをさせそうな状況になっていることが解ります。

そのため、奥田医師は本人が依存症を何とかすることが、子供に同じ思いをさせないことにも繋がることを伝え、本人一人が治るかどうかの問題ではないことを理解させます。

依存症に関しては様々な自助グループがありますが、どこのグループでも親も依存症で、本人が子供の頃に寂しい思いをしていて、その影響で本人が大人になってから何らかの依存症になっている人が多いとのことから、成育歴というものが、いかに世代を超えて伝わるのかが解ります。

そのため本人もクリニックの職員も長期の関りを覚悟するのでした。

あなたの人生、逆転させます: 新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌 を読んだ読書感想

著者の小笠原慧さんは精神科医としては岡田尊司として多数の著書があります。

医師としては医療少年院で働くなど、独特の臨床体験があり、そこから患者さん本人の事のみならず、いかに成育歴、成育環境などの影響が大きいかを書いておられます。

普通の街のメンタルクリニックや病院では患者さんの背景までは関わらず、短時間の診察をして、薬を出して様子を見るというところが多いのかもしれません。

最近では臨床心理士やPSWなど、様々な専門職が増えたことから、患者さんに対しても様々な対応を取れるところが増えればいいなと思う内容でした。

これまでは多くの場合は医師のみが対応していたので、時間的にも場所的にも患者さんに関われる場面が少なく、対応も不十分なことが多かったのでしょう。

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