【ネタバレ有り】恋文 のあらすじを起承転結でネタバレ解説!
著者:連城三紀彦 1984年5月に新潮社から出版
恋文の主要登場人物
竹原郷子(たけはら きょうこ)
結婚十年目、小学四年生の男の子を育てながら出版社に勤める。姉さん女房でしっかり者。
竹原将一(たけはら しょういち)
郷子の夫で美術教師。三十四歳になるが、いつまで経っても頼りなく、父親の威厳はない。突然郷子と優を残して家を出る。
竹原優(たけはら すぐる)
小学四年生になる一人息子。しっかり者で、将一が突然家を出て行っても表面上は冷静に装い、郷子を励ます。
田島江津子(たじま えつこ)
将一が郷子と結婚する前に付き合っていた女性。独身で身寄りがなく仕事に生きてきたが、骨髄白血病と診断され余命宣告を受ける。
恋文 の簡単なあらすじ
竹原郷子は、結婚十年目を迎える一つ年下の夫・将一と、小学四年生になる一人息子の優との三人家族です。結婚して子供を持ちながらも、出版社で働き続けるワーキングマザーです。夫の将一は美術教師をしているものの、年下ということもあって頼りなく、姉さん女房の自分がしっかりしなくてはと常々思っています。ある日、仕事場に将一から電話がかかってきます。『先に謝っておく』と何やら後ろめたいことがある様子。子供二人の面倒をみている気になっている郷子は、真剣に取り合いませんが、将一は突然郷子と優の家を出て行ってしまいます。テーブルには、田島江津子という女性からの将一宛てのラブレターが置いてありました。
恋文 の起承転結
【起】恋文 のあらすじ①
竹原郷子は、結婚十年目を迎える一つ年下の夫・将一と、小学四年生になる一人息子の優との三人家族です。
結婚して子供を持ちながらも、出版社で働き続けるワーキングマザーです。
夫の将一は美術教師をしているものの、年下ということもあって頼りなく、姉さん女房の自分がしっかりしなくてはと常々思っています。
ある日、仕事場に将一から電話がかかってきます。
『先に謝っておく』と何やら後ろめたいことがあるようです。
子供二人の面倒をみている気になっている郷子は、真剣に取り合いません。
帰宅すると、いつもと変わらない様子でビールを飲んでいる将一がいます。
夕方の電話は何だったのかと聞く郷子に、将一はニヤニヤしながら、アパートの磨りガラス窓を指さします。
そこにはピンクの桜模様が描かれていました。
優が横から、『お母さんが爪に塗るやつ、瓶二本分空にしてた』と密告します。
咎める郷子に『だから、謝ったよ』とはぐらかすような笑顔で答えます。
その夜、先に布団に入り、郷子が作っている婦人雑誌をパラパラめくりながら『俺と別れることになったら、君、なんて言ってほしい?』と将一が唐突に聞いてきます。
特集記事について話しているのかと思った郷子は『頑張れよかな』と答えます。
女手一人で優を育てていくのは大変だからと。
『月並みだな』と呑気にあくびしながら目を閉じた将一。
翌朝郷子は、朝早くから動き回る将一の音で目を覚まします。
こんな朝早くにどうしたのかと聞くと、『煙草がきれたから買ってくる』と言って家を出ていきます。
郷子はもう一度眠りにつき、再び目を覚ましたときには、将一の姿はなく、優が『お父さん、家出したみたい。
テーブルに女の人の手紙が置いてある』と声を掛けます。
【承】恋文 のあらすじ②
将一は、郷子との結婚前に付き合っていた田島江津子という女性のもとへ行っていることがわかりました。
田島江津子は身寄りがなく、独身で仕事一筋で生きてきた女性で、貧血を起こし病院を受診したところ、骨髄白血病で余命半年との宣告を受け、将一が勤める学校へ赴き事情を話したそうです。
江津子の話を聞き、将一は思わず自分は独身で、最期まで面倒をみると申し出たらしく、それについてもし可能であれば甘えさせて欲しいと、江津子からの手紙には書いてありました。
教師を辞め、中野で魚屋を手伝っているらしいと聞いた郷子は、将一の様子を探りにいきます。
そして事情を聞いた郷子は、将一の意に沿って、江津子の世話をすることを承諾します。
半年間と期限を決めて、江津子の側にいることを認めた郷子は、優にも『困っている人がいたら、助けてあげなければいけない。
その人が死んだら、お父さんは戻ってくるからそれまで、お母さんと二人で元気にやろうね』と説得します。
死んでいく人の世話をするお父さんは立派だし、それに協力する自分たちも立派なのだと優に言い聞かせます。
後日、将一の従姉だと偽って、田島江津子と対面した郷子は、自分でも意外なことに、江津子に好印象を抱きます。
江津子も同じだったようで、対面から三日後、将一から電話を受けた郷子は、『これからもちょくちょく江津子と会って、話を聞いてあげて欲しい』と頼まれます。
それから週に一回ほどのペースで江津子を見舞っていた郷子。
そんな中、将一がアパートを出て一か月半が過ぎた頃、郷子が勤める編集部に子供から人生相談が届きます。
それは紛れもなく、優からのものでした。
【転】恋文 のあらすじ③
クールで物分かりの良い風を装っていながら、子供なりに両親を心配し、悩んでいることを知った郷子は、将一に頼み、家族三人で団らんの場を設けます。
久しぶりの父親との対面にはしゃぐ優。
別れ際、郷子は将一に現金の入った封筒を渡します。
封筒には将一名義で貯金していた三百万円ほどが入っていました。
『最高の女と結婚してたんだなあ』とつぶやく将一に、真剣に江津子に惚れているのか確認する郷子。
ぼそっと将一は『惚れている』と答えます。
江津子は個室にうつり、容体は悪化の一途をたどっていきます。
郷子は、病室で将一とバッティングするのを避けるようになっていました。
夫婦じゃないふりをするのが辛くなってきたこともありますが、純粋に田島江津子という一人の女性の生命を考えたかったからです。
将一と江津子が仲睦まじくしていると心中穏やかではなく、己の心に少しでも江津子の死を願うようなことがあったら、正直に打ち明けようと決心します。
ある日、郷子は将一から呼び出され離婚を切り出されます。
聞くと、江津子のために結婚式を挙げてあげたいというのです。
十日後に大きな手術を控え、今度こそ命が危ないと宣告を受けた江津子のために、元気が残っているうちにウエディングドレスを着させてあげたいと言うのです。
式だけ挙げて、籍を抜く必要はないじゃないと反論する郷子ですが、『惚れてるっていうのは、相手一番好きなことさせてあげたいっていうことじゃないか』と郷子を説得しようとする将一。
話はそのまま平行線のまま決裂します。
それからも将一は郷子に離婚してくれと電話をかけてきます。
『絶対にいやです』と断り続ける郷子。
折れた将一は、せめて江津子の見舞いは続けて欲しいと言って電話を切ります。
後日、病室に訪れた郷子は、将一と鉢合わせします。
将一は花嫁衣裳を身に着けた江津子の肖像画を描いていました。
江津子ははにかみながら、将一が結婚してくれなんて無茶を言うのだと郷子に話します。
不意に郷子は胸に突きあがるほどの怒りがこみあげ、将一の腕をつかみ、自分たちのアパートまで連れて帰ります。
【結】恋文 のあらすじ④
怒りに震えながら、郷子は自分も肖像画を描いて欲しいとスケッチブックを将一に叩きつけます。
怒っている顔だと描きにくいとご機嫌とりのような声を出す将一に、十年も一緒に暮らしていたんだから、笑った顔くらい憶えているでしょと怒鳴ります。
そして大粒の涙を流しながら、この十年しっかりした女が好きだと言う将一の為に、歯を食いしばって耐えてきたと涙ながらに思いの丈をぶつけます。
そして心が弾け、将一に江津子と結婚することを許したのでした。
翌日、江津子のもとを訪れた郷子は、江津子に将一との結婚をすすめますが、断れます。
江津子は、郷子と将一が夫婦だということを知っていたのです。
そこへ将一がやって来ます。
江津子は承諾したと嘘を言って下さいと郷子に頼みます。
そして、手術を三日後に控え、二人は病院で簡素な結婚式を挙げます。
郷子も参列し、微笑み合う江津子と将一に拍手を送ります。
片隅に将一を呼び、白い封筒を渡します。
中に入っていたのは離婚届けでした。
中身を確認した将一は、こんな熱烈なラブレターもらったの初めてだと言って涙ぐみます。
江津子は手術後、二週間後に息を引き取ります。
最期に立ち会ったのは郷子でした。
将一は三十分前に親族に連絡をとるため病室を出て行ったきりです。
優から電話があり、将一が酒を飲んで暴れ、現在留置所にいることを知らされた郷子は、慌てて警察に向かいます。
江津子の最期を報告します。
将一は、前日に江津子からすべて知っていたことを聞かされたと言います。
そして、江津子から郷子へ結婚指輪を返しておいて欲しいと頼まれたと言って指輪を渡します。
江津子とのやり取りを白状した郷子。
将一に当初の約束通り、戻ってきてくれるかと質問します。
首を横に振る将一。
そんな将一に郷子は『あんな凄いラブレターもらって心動かさなかったら、最低の男だわ』と言って、それまで忘れていた涙を流します。
恋文 を読んだ読書感想
表題作はじめ、大人の恋愛を描いた短編4編が収録されている『恋文・私の叔父さん』から『恋文 』をご紹介しました。
切ない大人なラブストーリーです。
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