「ナチスに挑戦した少年たち」のネタバレ&あらすじと結末を徹底解説|フィリップ・フーズ

「ナチスに挑戦した少年たち」

著者:フィリップ・フーズ 2018年6月に小学館から出版

ナチスに挑戦した少年たちの主要登場人物

クヌーズ・ピーダスン
本作の主人公。ドイツに諂うデンマークに対して怒り、抵抗組織チャーチルクラブを作る。

イェンス・ピーダスン
クヌーズの兄。弟と同じ気持ちを持ち、ドイツに抵抗するグループを作る。

アイギル・アストロープ
ユダヤ人の母を持つクヌーズの級友。

バアウ・オレンドーフ
チャーチルクラブ最年少の少年。

モーウンス・フィエレロプ
物理が得意で「教授」と呼ばれる。爆弾を作ってチャーチルクラブに貢献した。

ナチスに挑戦した少年たち の簡単なあらすじ

この本は、第二次世界大戦中のデンマークで本当に起こった出来事をもとに描かれた、ノンフィクション小説です。

主人公であるクヌーズは普通の中学生でしたが、ドイツの侵攻に対して抵抗しない母国に強い怒りを覚えます。

そして兄のイェンスと抵抗組織を作成し、破壊工作に乗り出します。

最終的にはドイツに犯罪者として逮捕・投獄されてしまいますが、彼らの活動が国民に影響を与え、抵抗活動が発展するきっかけとなりました。

ナチスに挑戦した少年たち の起承転結

【起】ナチスに挑戦した少年たち のあらすじ①

チャーチルクラブ勃発

第二次世界大戦中の1940年4月9日、デンマークがドイツの急襲を受けてわずか1日で占領されたことから物語は始まります。

デンマークに住む牧師の息子であるクヌーズは、14歳にして自国のドイツ迎合姿勢を嘆き、兄のイェンスに対して「ノルウェーのように自国もドイツに徹底抗戦すべき」という考えを話しました。

イェンスも同じ考えを持っていたため、2人は何かできることはないかと試行し、自転車を乗り回してドイツ軍に対するちょっとしたいたずらを繰り返します。

具体的には標識を折ったり、電話線を切ったりペンキで自分たちのマークを描く行為などをしていました。

そしてこれらの活動グループを「RAFクラブ」と名付け、ドイツ軍を翻弄していったのです。

その翌年の1941年に兄弟は父の仕事の都合で、オルボーという港町に引っ越しました。

彼らはここでもRAFクラブと同様の破壊工作を仕掛けようともくろみます。

そこで級友のアイギルやモーウンスを誘って「チャーチルクラブ」という、イギリスの首相チャーチルにあやかったクラブを作成しました。

【承】ナチスに挑戦した少年たち のあらすじ②

エスカレートしていく抵抗運動

チャーチルクラブのメンバーは、RAFクラブと同様に自転車を活用して破壊工作を繰り広げました。

しかしそこら中に彼らのクラブマークが書かれるようになると、この破壊活動は徐々に過激なものになっていきます。

そして彼らは次第に武器を盗んで爆破や殺人まで企てるようになります。

まず、ドイツに手を貸している企業の中で特に有名だった建設会社に侵入をし、放火をして設計図などの書類を燃やします。

その後はドイツの車輛に目を付け、見張り役が気を引いている間にガソリンをまいて炎上させます。

クラブの中で最年少のバアムは、車のガソリンタンクを開けてそこに直接火をつけるなど、行動が大胆なものになっていきます。

その過程で、ピストルなどのドイツ軍が使用している武器を盗むようになり、ピーダスン兄弟の暮らす修道院に隠していきます。

彼らは武器の使い方もよくわからないまま、とにかくドイツ軍から武器を集め、ライフルや爆薬でドイツ軍人を殺害する計画を練っていきました。

しかし、殺人を実行に移す気概がやはりなく、計画はそのまま頓挫してしまいます。

【転】ナチスに挑戦した少年たち のあらすじ③

活動の発覚・そして逮捕

1942年5月になると、メンバーの一人であるアイギルが活動を辞めようと懇願するようになりました。

彼の母親がユダヤ人であり、ドイツがユダヤ人を虐殺するという話が街に流れていたからです。

ところがクヌーズとバアウはここで妥協する必要などないと、反対の立場を示して話し合いの場から立ち去りました。

その後、ドイツ人御用達のカフェで2人はクロークに置かれていたドイツ人の武器を盗み、そこをウェイトレスに目撃されてしまいます。

その数日後、学校から帰っているところを2人の人間にじっと見られていることにクヌーズは気が付きます。

その2人こそ、カフェのウェイトレスと公安警察だったのです。

そのまま彼は2人につかまり、警察署で取り調べを受けました。

その結果、活動のほぼすべてが露呈してしまい、チャーチルクラブのメンバーが次々に逮捕されてしまいました。

すぐにハンス王通り拘置所に送られ、裁判が開かれて各々に刑期が言い渡されました。

ピーダスン兄弟は3年の刑期となりました。

【結】ナチスに挑戦した少年たち のあらすじ④

出所後の世界

刑期が3年と言っても、デンマークの法律では三分の二の刑期が終わると、仮釈放されるというものがあります。

そのため、2人は1944年5月に無事に出所することができました。

数年ぶりにデンマークの街に出た彼らを待ち受けていたのは、反ドイツ活動に身を投じる多くの人々でした。

チャーチルクラブが活動していた時はドイツが優勢だったため、彼らに対して懐疑的なデンマーク人も多くいたのですが、戦況が変わって今のドイツは風前の灯火となっていたのです。

また、子供の彼らと違う、規律を持ったプロのレジスタンスの出現も2人を驚かせました。

そして家に帰ると、そういった運動をしている人たちを匿う教会に実家が変わっていたのです。

父も母も、武器を手に取り教会の説教でははっきりと「ドイツは悪」と述べていたのです。

そしてその翌年1945年5月5日についにドイツの支配が終わり、デンマークが解放されました。

ここに至るまでさまざまな人がレジスタンス運動をしましたが、そのきっかけとなったのはチャーチルクラブと言っても過言ではないのです。

ナチスに挑戦した少年たち を読んだ読書感想

「アメコミ風の表紙だし、本文に数多く写真が載せられているのに対ナチスと銘打つなんて、不思議な本だな」と思ったのがこの本を手に取ったきっかけでした。

ところがページを開くと、自分が今まで全く知らなかったデンマークでの抵抗運動について非常に詳しく書かれており一気に知見が広まっていきました。

こんな大胆な活動を自分より何個も下の子供が行っていたなんてすぐには信じられませんでしたが、現在ウクライナで起こっていることを鑑みて、悲しくも納得してしまいました。

ヤングアダルト向けに書かれた小説ですが、平和に慣れきってしまった現代の日本人の大人こそ読むべき作品だと思います。

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