ロッキン・ホース・バレリーナ(大槻ケンヂ)の1分でわかるあらすじ&結末までのネタバレと感想

ロッキン・ホース・バレリーナ

【ネタバレ有り】ロッキン・ホース・バレリーナ のあらすじを起承転結でネタバレ解説!

著者:大槻ケンヂ 2007年9月に角川文庫から出版

ロッキン・ホース・バレリーナの主要登場人物

耕助
18歳のフリーターで、インディーズバンド「野原」のボーカリスト兼ギタリスト。現在青春真っ只中で、女の子とやりたい盛りである。

七曲町子
ゴスロリファッションに身を包んだ不思議な女の子。性に関する知識と積極さは、野原のメンバーの誰も敵わない。

バン
バンド「野原」のベーシスト。いい奴だが、いささか酒に飲まれやすいのが珠にキズ。

ザジ
バンド「野原」のドラマー。いい奴だが、格闘技好きなせいか頭に血が昇るといささか暴力的になるのが珠にキズ。

得山
バンド「野原」のマネージャー。自分が音楽業界で成り上がるために、メンバーに時にはキツい言葉を浴びせながら、野原をメジャーにしようと奮闘している。

ロッキン・ホース・バレリーナ の簡単なあらすじ

ロックミュージシャンで、エッセイや小説などの著書も多い大槻ケンヂが、自らが若き日に体験した出来事を元に描いた青春群像小説。インディーズバンドのツアーを巡って巻き起こる様々な出来事を綴りながら、ロックとか何か?を問いかける。

ロッキン・ホース・バレリーナ の起承転結

【起】ロッキン・ホース・バレリーナ のあらすじ①

あの頃俺たちは、18歳で夏でバカだった

18歳でフリーターの青年・耕助は、高校時代の仲間とバンド「野原」を組み、インディーズバンドとしてはそこそこの人気を得ていました。

昔バンドをやっていたという男・得山という専属マネージャーも付き、野原は初の全国ツアーに出ることになります。

東京を出発し、名古屋から博多までを巡る西日本ツアーでしたが、得山は「このツアーで成功するかどうか、お前らの将来はここでジャッジされるんだ」とメンバーにゲキを入れます。

そんな中、一行はゴスロリファッションに身を包んだ不思議な少女・町子と出会います。

町子は数々のミュージシャンのおっかけを経験しており、しかも風俗で働いていた経験も豊富だと言います。

今回は、憧れのビジュアル系ミュージシャンのライブを見るため博多まで行き、そこで「憧れの彼」に抱かれるのが目的で旅をしているということでした。

野原の目的地も博多と知り、一緒に連れてけ!と、町子は半ば強引にメンバーと行動を共にすることになります。

耕助はなぜか、手首に無数のためらい傷を持つ町子に、高校の頃の恋人だった、町子とは全く違うタイプのはずの、海美(うみ)の面影を思い出していました。

海美は高校の時、耕助とデートをした数日後に、手首を切って自殺していたのでした。

【承】ロッキン・ホース・バレリーナ のあらすじ②

ツアー前半戦、疾走する野原

町子を連れた野原のツアーは、最初の地である名古屋こそ盛り上がりに欠けたものの、ライブをこなす度にめきめきと力をつけてきていました。

町子は「女はバンドにとって邪魔になるだけだ!」という得山の反対を押し切り、野原のライブで物販をこなすなど、実は役に立つ女子であることを見せ始めていました。

ライブが成功するに連れ、耕助と町子の距離が縮まっていく。

2人は人前では憎まれ口をたたきつつも、いつしかお互いに惹かれあうようになります。

そんな時、メジャーレーベルで仕事をしている、得山とは昔からの知り合いだという、上野脳という男が一行の前に現れます。

インディーズで芽の出ない仕事を続けている得山を見下す上野脳に、野原のメンバーは反感を覚えます。

しかし上野脳は密かに得山に、野原をメジャーデビューさせないかと誘う電話をかけていました。

それは、若手のバンドをデビューさせておいて、売り上げなどはレーベルで独占し、旬が過ぎたらバンドは即解雇するという、業界に伝わる「バンドころがし」という禁断の搾取の誘いでした。

大阪から広島へ向かうに連れ、野原のライブも勢いを増す中、耕助と町子の仲も更に近づき、2人はお互いの過去を打ち明けあいます。

七曲町子という名は本名ではなく、憧れのミュージシャンの歌のタイトル「MN」から取ったもので、その歌のヒロのイン・MNは、憧れの男に会い抱かれることで、華麗に変身を遂げるのでした。

実家で借金を抱えて自暴自棄になった父親に毎夜のように犯され続けていた町子は、この歌のMNのように憧れの男に抱かれることで、自分が浄化されると信じていたのでした。

【転】ロッキン・ホース・バレリーナ のあらすじ③

ツアー後半戦、失速する野原

耕助の恋人だった海美は、実は妻子ある男と不倫関係にありました。

大人の男とのセックスに溺れていた海美は、耕助とのプラトニックな関係に、高校生らしい自分を見出していたのです。

しかし海美はやはりそんな自分に耐え切れず、この世を去りました。

それ以来耕助は、女性とプラトニックな関係を持つことが怖くなり、「ライブで会った女子とヤルだけ」の関係を求めていたのでした。

お互いの過去を知った2人の関係は、急速に近づきます。

町子はすでに憧れの人でなく、耕助がいればいいとすら考え始めていました。

その頃得山は、一度は上野脳の誘いを断ったものの、数百万の借金と病気の母を抱え、やむなくバンドころがしを承諾してしまいます。

それ以来落ち込む得山に、野原のメンバーは何があったのか真相を聞きだそうとしますが、得山は「俺はお前たちを裏切った!」と言ったきり姿を消してしまいます。

ツアー最終地博多を前にマネージャーが失踪し不安になる野原に対し、町子は得山の分までとかいがいしく世話をすますが、重要なライブを控えイラついていた耕助は町子に八つ当たりし、「家に帰って親父に犯されてこい!」と暴言を吐いてしまいます。

野原のジャッジが下されるツアー最終地、博多でのDays初日。

得山は姿を消したまま、そして傷心の町子もライブ直前に会場を去りました。

頼れる2人を欠いた野原のライブは明らかに集中力を欠き、客席から汚い野次が飛びます。

頭に血が昇ったザジが客席に突入、乱闘騒ぎに。

野原にとって重要なライブの初日は、考えうる最悪の結果に終りました。

【結】ロッキン・ホース・バレリーナ のあらすじ④

ツアー最終日、そして大団円!

得山は、昔バンドのおっかけをしていた珠代という女性と結婚した、元バンドのメンバー・有原のところへ来ていました。

有原は末期がんに冒され入院しており、病院で再会した得山と珠代の前に、博多を去る前に得山に礼を言いに来たと、町子が現れます。

3人が有原の病室に行くと、なんと有原はクイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの格好でベッドに横たわっていました。

ちょうど院内のお誕生会が開かれる日で、有原を中心とした入院患者たちのバンドは、そこで演奏を始めます。

フレディ=有原は、得山をステージに引っ張り挙げます。

数十年ぶりに弾いたギターに、得山は忘れていた想いを取り戻し、町子と共に野原が待つライブ会場へひた走ります。

博多の2日目を向かえた野原のメンバーは、追い込まれたことで逆に開き直り、これまで培った経験を発揮してライブ会場を沸かせていました。

そこへ上野脳が現れ、メジャー契約をしようと耕助に握手を求めます。

耕助がそれに応えようとした瞬間、得山が登場。

バンドころがしの真相を暴露します。

「負け組のお前に何がわかる!」と居直る上野脳に、「ロックに勝ち負けなんかない!偉大な先輩から受け継いだものを、次に伝えるために転がり続ける。

それがロックなんだ!」と言い放ち、客席から喝采を浴びます。

その後、野原のライブは更に一体感を持って盛り上がます。

すると、ステージ袖に町子の姿が。

耕助の目の合図に促され、町子は客席へ、見事なダイブを決めるのでした。

そして町子はそのまま博多に残り、珠代の世話になることを決めます。

父親との問題が解決するまで、距離を置いた方がいいという珠代の判断でした。

野原が博多を出発しようという日、得山がマネージャーを辞めると言い出します。

なんと、上野脳と一緒に再びバンドを組むと言い出します。

見事にジャッジを受けた野原、町子、そして得山と上野脳。

それぞれの新しい人生への第一歩が、今始まりました。

ロッキン・ホース・バレリーナ を読んだ読書感想

よくある若手バンドのサクセスストーリーか、もしくは栄光と挫折の日々か?と思って読み始めると、もうたまらないくらい心が打ち震えて仕方なくなくなり、涙が止まらなくなります。

登場するいとおしい奴らの、なんとリアルな青春群像であることか。

作者の大槻さんが実際に経験したことを元にしているということが大きいと思いますが、その繊細で緻密な描写力は尊敬に値します。

野原が楽屋からステージに上がるまでの、そのほんの数メートルの間に生じる心境の変化、そして情景の変化。

耕助と町子が初めて共に過ごした部屋で、「冷蔵庫の蜂が死ぬ」シーンの描写の見事さ。

そういった緻密な描写が積み重なり、登場人物たちのリアルさを際立たせます。

突拍子もない言動を重ねる町子の、過去が明かされる時。

それは町子が生きるために選んだ、生きるために必要な選択だったのだと思い知らされます。

クライマックスでの「ロックの神様大集合」には思わず笑ってしまいますが、そりゃあ得山もロックの真髄を見出すでしょう、思い出すでしょう。

大槻さんがあとがきに書いている通り、ロックに興味がある人、そのツアーの裏側を知りたい人、そしてかつてそれをやっていた人、今もやっている人、そんな全ての方に、超絶お勧めです。

しかし、実は「かつてやっていた人」は、要注意です。

長い間思い出せずにいたこと、思い出そうとせず仕舞い込んでいたものを、思い出してしまうかもしれません。

ずっと仕舞い込んでいた楽器を、もう一度手に取ってしまうかも。

妻や子供に、冷やかされつつ。

久しぶりに、昔のメンバーに連絡を取ってしまうかも?そんな「危険性」を、十二分に孕んだ小説です。

町子の言葉を借りるならば、「ロックの神様って、本当にやっかいなものを与えてくれるよね。」

それを踏まえた上で、「やっかいなものの魅力」を、存分に味わってくださいませ!